2005年に『エンタの神様』(日本テレビ)に「怒りの熱血プロレスラー“マジャコング”こと摩邪(まじゃ)」として初出演。女子プロレスラーの格好で毒を吐くマイクパーマンスで一躍注目を集めたまちゃまちゃさん。長かった下積み時代はどのような思いで過ごしていたのでしょうか。(全4回中の2回)

ネタが出ない…新橋駅のホームで紙とペンを持ち頭を抱えて

──「エンタの神様」でブレイクするまでの下積み時代は長かったのでしょうか。


まちゃまちゃさん:エンタに初めて出演させていただいたのは、29歳の頃でした。それまでの下積み生活は大変だったけれど、エンタが決まるまでの1年くらいが一番苦しかったですね。

 

週に1回、テレビ局に行ってネタを見てもらい、作家さんたちと打ち合わせをするのですが、なかなかOKが出ない。一度収録したけれど、お蔵入りになったネタもありました。そのうち、いくら考えても、何にも出てこなくなっちゃって…。とはいえ、そのまま打ち合わせに行くわけにはいかないから、新橋駅のホームのベンチで、紙とペンを持ったまま頭を抱えて途方に暮れたこともありました。

 

下積み時代のまちゃまちゃさん
下積み時代のまちゃまちゃさん

── スランプに陥ってしまったのですね。

 

まちゃまちゃさん:キツかったですね。自分が前に進んでいるのか、後退しているのかも分からない。こんな状態で、本当に番組に出演できるんだろうかと、ずっと不安でした。

 

そんななか、ようやくネタの方向性が決まり、番組に出る前に、よしもとの舞台でネタを披露することになったんです。当時、よしもとの舞台は、芸人が対戦方式でネタを見せ、負けると下のランクに脱落して、次の舞台に上がれないというスタイルでした。ここで負けると振り出しに戻ってしまうから、それだけはどうしても避けたかった。

 

でも、これまでやってこなかった、『エンタの神様』でやっていたことに近いネタをはじめて披露したので、お客さんも少々戸惑っていて、私自身も今ひとつ調子が出ず、結局、対戦相手に負けて脱落してしまったんです。この出来事が、ものすごくショックで。

「休みたい…」先輩芸人ペナルティのひと言でハッとした

── 積み上げてきたものが崩れてしまった、という感じだったのでしょうか。

 

まちゃまちゃさん:そうですね。かなり落ちこんで、仲が良かった作家の山田ナビスコに相談しました。当時、ペナルティさんのイベントに出ていたのですが、「あたしみてえなやつが、ペナさんのイベントに出るのは申し訳ないんで、また勝ち上がるまで休ませてもらえないですかね…」って。そしたら、私の気持ちをナビスコが伝えてくれたらしく、ペナさんからすぐに電話がかかってきて、お二人ともすごく心配してくれたんです。

 

ワッキーさんは、「今、希望の光が見えつつあるから、そこに行けたら、お前のこと絶対に引っ張るから。もう少し頑張ってくれ!」と励ましてくれて。その言葉にすごく救われて、「もう一度頑張ろう」と思えたんです。

 

下積み時代のまちゃまちゃさん
憧れの先輩芸人の叱咤激励で奮起した

── ヘコんでいるときに味方になってくれる先輩がいると、救われますよね。

 

まちゃまちゃさん:本当にそう思いましたね。私がゴングショー形式のイベントに出ていたときも、ワッキーさんは楽屋でモニター越しに見ていて「なんでまちゃがゴングショーなんだよ!」ってブチ切れてくれていたらしくて。お二人ともすごく情に厚くて、後輩思い。その後も、いろいろと面倒をみてもらいました。あのとき励ましてもらえていなかったら、あのまま潰れていたかもしれません。私にとって、お二人は、お笑いを続けるきっかけをくれた恩人でもあります。

 

── でも、まちゃまちゃさんの潔さも素晴らしいですよね。先輩に甘えるんじゃなくて、「自分がそのレベルに達してないから、あなたの舞台には出ません」なんて、なかなかなか言えるものじゃないと思います。

 

まちゃまちゃさん:単に負けず嫌いなだけです。それに、まだプロと呼べるレベルではなかったとき、ましてやオーディションに出ていた高校生のときから可愛がって目をかけてくださるのは、ただ「後輩だから」という理由だけでなく、認めてもらえているんだと、自分としては信じていたんです。というか、信じたかったんでしょうね。だから、その思いに応えたい、期待を裏切りたくないという気持ちがありました。

 

後日、トーナメントで再び勝って、上のステージに戻れることができたんです。ホッとして楽屋に帰ったら、ワッキーさんが、両手を広げて待っていてくれて。「まちゃが勝ち上るのは、当たりめえだよ!」と言ってくれました。

10年後、尊敬するワッキー先輩から衝撃発言

── 信じてくれる人がいるというのは、なによりの力になりますね。

 

まちゃまちゃさん:あれは、本当に嬉しかったなあ。それなのに、あの人は…。

 

『エンタの神様』でのまちゃまちゃさんとはなわさん
『エンタの神様』で一斉を風靡した

── 急に険しい表情に…。どうかしました?

 

まちゃまちゃさん:10年ほど前に、ワッキーさんと高校生の漫才大会のMCをやらせていただいたことがあって。高校時代、ペナルティさんが大好きでお笑いの魅力にハマっていった自分が、こうしてワッキーさんと一緒に、今度はお笑いを目指す高校生を迎え入れる日がくるなんてと、ひとりで感激していたんです。「いろいろあったけれど、意地になって芸人を続けていると、こんないいこともあるもんだなあ」なんて感傷に浸ったりして。

 

それなのにワッキーさんときたら、出演していた高校生の綺麗なお母さんを見るなり、急に鼻の下を伸ばして「スゲェ綺麗だよなぁ…いくつかなぁ…あ!年下になるよなぁ…」って、とにかくお母さんに夢中なんです(笑)。思わずひざから崩れ落ちそうになりましたよ。私の青春を返せ!

 

── さっきの素敵な話、どこにいっちゃったんでしょうか(笑)。

 

まちゃまちゃさん:吉本に入ってからもずっと面倒をみてくれて、いつも前向きな言葉で励まし続けてくれた素敵な先輩だったのに…。年月というのは、いろんなものを変えちまうんだなと思った瞬間でしたね(笑)。

 

PROFILE まちゃまちゃさん

芸人。1976年生まれ、千葉県出身。吉本興業所属。1996年にピン芸人としてデビュー。2005年に「エンタの神様」(日本テレビ系)に初出演し、女子プロレスラーのキャラクターで「摩邪」としてブレイク。現在は、芸人とスナックママとの二足のわらじ生活。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/まちゃまちゃ