以前取材を受けたメディアで、芸人さんの「ブスいじり」や行きすぎたルッキズムについて苦言を呈したことが話題になったまちゃまちゃさん。女芸人として、どんな思いを抱いているのでしょうか。(全4回中の3回)

ブスを武器にするのも自由

── 女芸人のルッキズム問題はたびたび語られるテーマかと思います。まちゃまちゃさんも積極的に発信されていますよね。

 

まちゃまちゃさん:もちろん本人が嫌がっているのに、容姿をいじって傷つけるのはダメですよ。それは当然だけれど、自分が納得し、芸として武器にしているのに、それまで取り上げられるのは、ちょっとキツイなあと感じていて。なんでもかんでもハラスメントだといっしょくたにして指摘するのも、逆にハラスメントじゃないの?と。

 

自分の外見をどう取り扱うかは自分で決めたいし、多様性って言うのであれば、それこそ自分をブスだと認めて武器にする権利も認めてほしいなって思うんですよ。

 

下積み時代のまちゃまちゃさん
下積み時代のまちゃまちゃさん

── なるほど。たしかにそうですね。

 

まちゃまちゃさん:こういうことを言うと、古いだのなんだのと言われるし、実際そうかもしれないけれど、自分はやっぱり、なんでもあり、ここではなんでも言えちゃうといった雰囲気のお笑いライブで育ち、それに憧れを抱いてこの世界に入ってきた人間なので、今の状況はなんだか窮屈だし、寂しいなあと感じてしまいます。そんな時代、とっくのとうに終わっちまってんだなあと…。

 

「おもしろい」というのが、ただですら難しかったのに、さらにわかんなくなってきている感じがしていて。「なにをそんなカリカリしてんだ?みんな、そんな器が小さかったっけ?笑いに関しては、もう少しおおらかでいいんじゃない?」という思いは、正直ありますね。

 

── 芸として成り立つ容姿いじりは、アリだと。

 

まちゃまちゃさん:お笑いの場での容姿いじりの場合、相手もプロだから、つまらないいじられ方をされることは、そうそうないし、チームとしてその場の笑いをつくり上げていくわけだから、こちらも信頼して身を委ねます。むしろ「どうぞどうぞ、いじってください!」という感じ。そこは、芸として楽しんでもらいたいなあと思うわけです。

小学時代に受けた容姿いじりで「コイツ、センスあるな」

── まちゃまちゃさん自身が、容姿いじりで嫌な経験をしたことはありますか?

 

まちゃまちゃさん:子どもの頃からいろんなものに例えられてきましたし、それでムカついたことももちろんありますよ。でも、私の場合「おもしろく例えてもらえればOK!」というところがあるんですよね。

 

小学生の頃、公園の池で遊んでいたときに、少し年上の名前も知らないやつが来て、「お前、顔でけえなあ。よし、お前のあだ名は、『幅広』ね!」っていきなり言われたんです。なんかムカつくなあと思いつつ、それ以上に「すげえワードセンスだなあ」とちょっと尊敬しちゃったんですよね。

 

「幅広」って「ハラビロカマキリ」の見た目に引っかけたんだと思うんですけど、私の顔を見て瞬時に「幅広」と名づける小学生って、ちょっとセンスあるじゃないですか。お笑い好きのサガかもしれないけれど、私個人は、おもしろく例えてもらえれば、傷つかないんですよね。

 

小学生の頃のまちゃまちゃさん
小学生の頃のまちゃまちゃさん。当時からお笑いのセンスがあったよう

── でも、幅広=ハラビロカマキリと、すぐに変換できる小学生のまちゃまちゃさんの発想力と言葉のセンスもすごい気が…。しかも昆虫に詳しい(笑)。

 

まちゃまちゃさん:自分の顔は、幅広なんだなと自覚したのもそこからでしたね。もちろんどんな言葉や態度に傷つくか、それがどの程度なのかは、人それぞれ違うから一概には言えないけれど、誰かの発言に対して、勝手に自分のことを批判された気になって、過剰に反応しているケースも多い気がして。それだけ傷ついて、つらい経験をした人がたくさんいるのはわかるけれど、「いやいや、この人、その言葉に傷ついていないかもしれないよ?勝手に決めるのはどうだろう?」と思うことも。

 

理不尽なことに声をあげやすい世の中になったのは、いいことだとは思いますが、何もかも「今、それ言ったね!」と揚げ足をとって、みんなで批判するという流れも、それってどうなんだい?と。もう少しおおらかにとらえて、その器をもっとデカくするのはどうだろう?と思うんですよね。そのほうが、自分たちも楽しく過ごせる気がしますけどね。

 

私も自分の容姿に自信がなかったからこそ、違う部分で頑張ろうと、自分の好きなバンドメンバーや追っかけ仲間にネタを見せるというトリッキーなことを始めたわけです。自己防衛の意味でも、「自分なりのちょっとしたジョークやユーモアで切り返す」という手段を持っておくのもひとつの手だと思いますよ。

スナックで笑えない冗談を言う客には痛烈ジョークやユーモアで

── 例えば、どのような?

 

まちゃまちゃさん:今、芸人をしながらスナックのママをやっているんですけど、この前、うちの店に来たお客さんが、「この店ババアしかいねえじゃねえか!」って言ったんです。酒の席での冗談だとわかっているけれど、それがかなりしつこくて、「この空気、なんかつまんねえな」と思ったんです。女の子も嫌な気持ちになるし、周りのお客さんもシラけていて。

 

だから、「アタシ、知ってんだ。こういう人って必ずバチ当たるから。なんでかって?ババアだから分かんの!長く生きてっからね!」と言ったら、みんなが納得して「ワハハ」って雰囲気になりました。

 

まちゃまちゃさん
スナックのママとしての顔も

別に、お客さんだからといって、ムカつくことをすべて我慢する必要はないし、女の子が傷ついて不快になるのも嫌じゃないですか。だから、そこはジョークやユーモアで切り返す。もちろん性格やキャラもあるから、無理な人もいるかもしれないけれど、嫌なことにやりかえしつつ、ほんのちょっと笑いに変える方法を身につけていけば、生きるのがラクになります。

 

私も自分の身なりを「なにあれ?変なメイク!」とバカにされたときには、「こっちは毎日ハロウィンだから。え、なに?ハロウィン1日しかやらないの!?もったいないな〜」って、返します。

 

── 毎日ハロウィンは楽しそう(笑)。そういう切り返しができるとラクですよね。

 

まちゃまちゃさん:もしも「やってみたいけれど、難しいな」とモジモジしてる人がいれば、ぜひ一緒に飲んでみたいですね。伝授します(笑)。

 

PROFILE まちゃまちゃさん

芸人。1976年生まれ、千葉県出身。吉本興業所属。1996年にピン芸人としてデビュー。2005年に「エンタの神様」(日本テレビ系)に初出演し、女子プロレスラーのキャラクターで「摩邪」としてブレイク。現在は、芸人とスナックママとの二足のわらじ生活。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/まちゃまちゃ