関東吉本女芸人の最年長として、芸人たちの人望が厚いまちゃまちゃさん(47)。伝説のおっぱい挟みジンクスやスナックのママと芸人を両立することになった経緯をお聞きしました。(全4回中の4回)
芸歴28年「昔はところ構わず着替えてた」女だからって遅れをとりたくない
── 今年で芸歴28年になるまちゃまちゃさん。東京吉本の女芸人のなかでは一番キャリアが長いのですね。
まちゃまちゃさん:おそらくそうなるかと。いつのまにか最年長クラスになりましたね。東京NSCでは、「花の4期」と呼ばれる森三中や椿鬼奴が出てくるまで、女芸人はすごく少なかったし、辞めてしまう人も多くて、疎外感を感じる場面もありましたけど、舞台の上では男も女もないと思って、ずっとやってきました。
昔は本当にところ構わず着替えていて、逆に後輩芸人たちから、「ちょっと、まちゃ姉!」と注意されることも。そんなときは「こっちはスーパーモデルと同じ気持ちでやってんだ!ここはランウェイと一緒なんだよ!」と言い返していましたね。まあ、スーパーモデルからしたら、迷惑な話でしょうけど(笑)。でも、それを聞いたブラックマヨネーズの吉田さんが「めっちゃかっこいいな、お前!」って褒めてくれたことがあって、それがすごく嬉しかったです。
当時は女芸人がほとんどいなかったので、同じ舞台に上がるのに、私だけどっかに行って時間をかけるようなことはしたくないという意地のような気持ちもありましたね。
おっぱい挟みは「闘魂注入ビンタのつもりでやってる」
── 姉御肌で、男性芸人の後輩からも「まちゃ姉」と呼ばれて慕われているまちゃまちゃさんですが、劇場では、後輩に授ける「ジンクス」をお持ちだとか。
まちゃまちゃさん:今の時代、セクハラだのなんだのと言われちゃいそうですが、以前、銀座7丁目劇場で、「私の胸に顔を挟んでから舞台に上がったらスベらない」っていうジンクスがあって。みんなが「まちゃ姉、お願いしますっ!」と並んで、私が「よし、頑張って行ってこい!」と声をかけながら、胸で顔を挟むという。いわば、「戦いの前の儀式」のようなものです(笑)。
── アントニオ猪木さんの「闘魂注入ビンタ」みたいな感じですかね。
まちゃまちゃさん:おこがましいかもしれませんが、テンション的には、アントニオ猪木さんのビンタと一緒のつもりです(笑)。挟まれた後輩芸人たちは、「よっしゃ!」と舞台に上がっていくという。
── カッコいい…。まさしくアネキって感じです(笑)。しかも、芸人として活動しながら、スナックのママとしての顔もお持ちですよね。最近、新しくお店をオープンされたとか。
まちゃまちゃさん:2017年から高円寺で「ピエロ」というスナックをやっていたのですが、コロナ禍のあおりを受けて、店を閉めたんです。またやりたいと思っていたところに、お声をかけてもらって、物件も見つけて来てくれて、2023年10月に新しくオープンしました。
ただ、本当は小さなカウンターと席が少しだけの「THE・昭和」という感じが理想だったのですが、今の店は元キャバクラなので、だだっ広いんですよ。とにかく見栄えだけでも昭和のスナック感を出したくて、ボトルで作る人形やパッチワークの座布団を置いて、アタシの思うベタなスナック感を出せたらいいなぁと試行錯誤の真っただ中です。元祖スナックの達人である玉袋筋太郎さんが気に入ってくれるような店が目標ですね。
47歳の今、結婚に対する本音は
── 現在独身のまちゃまちゃさんですが、30歳の頃に婚活をされた経験があるとか。今は、結婚願望はありますか?
まちゃまちゃさん:料理が好きなので、私の作るご飯を「美味しい」と言って食べてくれる人がいればいいなと思っていたのですが、そこまで本気で結婚したかったかと言われたら、そうでもなくて。しかも、婚活っていっても、ただ「髪の毛を伸ばしただけ」というお手軽な婚活でしたし。
でも、それを上回るツワモノがいました。「見てください、これ。実は、婚活してるんです」と、こそっと見せられたのが「頭にリボンのヘアクリップをつける」という椿鬼奴の婚活スタイル。腹抱えて笑いましたね。
── わかりにくい(笑)!
まちゃまちゃさん:でも、その後で本当に結婚したから、効果があったのかもしれないですね。
今、結婚願望があるかといわれたら、あんまりないですね。周りの話を聞いていて、大変そうだなと思うことのほうが多くて。それに、たとえ惚れた男でも、まったくの他人と一生過ごしきれるかなとか、相手の人生を背負いきれるのかって考えると、答えが出ないんですよね。
── 真面目すぎるんですかね。
まちゃまちゃさん:そういうところはあるかもしれないです。負けん気根性だけは強いから、一度始めたことを途中でひくのが嫌なんですよね。
そう考えると、吉本に28年所属しているのも、負けん気根性の意地があるのかもしれないです。吉本とは離婚してないですから。ただ、最近では、吉本での芸歴を「懲役」と呼び始めたりと、よからぬ方向に向かってますけど。
それこそ離婚寸前だ!ぐらいの気持ちで、いろいろ自由に発言させてもらってるから、ガス抜きができているのかもしれません。昔だったら、ここまで開き直った発言はできなかったと思いますが、年齢を重ねて怖いものがなくなって、どんどんラクになってきた感じです。おばさん上等!かかってこい!と思ってます。
── 年齢を重ねることで気づくものってありますよね。
まちゃまちゃさん:年々思うのは、人との出会いって本当に宝物だなということですね。
私はNSC出身ではないので、同期がいなくて、仲のいい芸人があまりいなかったんです。唯一、1年目からずっと仲良くさせてもらっているのが、女芸人で直属の先輩であるモリマンのお二人。昨年、札幌でモーリーさんがやっているスナックで、飲みすぎて救急車で搬送されてしまいまして…。そのとき、モーリーさんが心臓マッサージをして助けてくれたので、命の恩人でもあります。
芸人の友達がいない代わりに、バンドマンや地元の仲間とは、昔からずっとつながっていて、今でも私の支えになっています。
氣志團のメンバーの綾小路翔と白鳥雪之丞とは、地元が一緒で中学校の同級生。気志團のPVやCDで共演させてもらったり、プライベートでもよく飲みましたね。今もずっと仲が良くて,私がスナックを開店したときにはお祝いにきてくれたし、2021年の「まちゃまちゃ25周年記念トークライブ」では、ゲスト出演してくれました。何も変わらない関係性がすごく心地いいですね。
ピン芸人で同期もいないし、寂しい芸人生活ですけど、モリマンの2人がいてくれたり、ペナルティさんが面倒を見てくれたり、地元が一緒の気志團のみんながいてくれたおかげで、なんとかやってこられました。
結局、大切なものは、自分のなかにしっかりと残っている。私って本当にラッキーだよなといつも思っていますね。もしも昔の自分に声をかけるとしたら、「今は大変かもしれないけれど、腐らずに踏ん張っていれば、後にすげえいいことあるから、諦めんな。頑張れよ」と言ってあげたいです。
PROFILE まちゃまちゃさん
芸人。1976年生まれ、千葉県出身。吉本興業所属。1996年にピン芸人としてデビュー。2005年に「エンタの神様」(日本テレビ系)に初出演し、女子プロレスラーのキャラクターで「摩邪」としてブレイク。現在は、芸人とスナックママとの二足のわらじ生活。
取材・文/西尾英子 写真提供/まちゃまちゃ