鉄の鎧を被っていた気分だった
── 『CanCam』卒業後も『Oggi』のモデルとして順調にキャリアを重ねる一方で、プライベートも注目されるようになりました。
長谷川さん:よくも悪くも目立つようになってしまって…。当時、モデルとして表に出る仕事はしていたのですが、タレントさんのように人前に出る免疫はまったくなかったんです。それが、急に「あっ、あの人」と街中で指を指されたり、ひそひそ声で何か言われたり、目の前で突然写真を撮られたり。
── 当時、週刊誌やテレビで見る長谷川さんは“気が強い女性”という印象でした。
長谷川さん:そうかも知れないですね…。当時の私は常に四面楚歌に立たされているような気持ちでした。周囲はみんな私の気持ちなんてわからないと、鉄の鎧をかぶって誰も寄せつけない、そんなイメージでしょうか。何かを話せば一部が切り取られて、あることないこと勝手に広まってしまったり。「私は何も口を開かない方がいいな」と思い、何も話さなくなってしまった時期もありました。でも、私の至らなさが大きかったと今は思います。
── 周りは敵だらけという状況に「モデルの仕事を辞めたい」と思ったことはなかったのでしょうか?
長谷川さん:それは一度もなかったんです。その間もありがたいことに途切れることなくお仕事をいただき、粛々とこなしていました。そう考えると根は図太いんでしょうね(笑)。でも、一番の理由は唯一、自然体でいられた場所が撮影現場だったから。
この業界ってとても狭くて、撮影でお会いするのも何年も一緒の方ばかりで家族のよう。近くの人は自分のことを分かってくれている。その安心感が得られたのがモデルのお仕事でした。すごくありがたいことです。
PROFILE 長谷川理恵さん
1973年生まれ。神奈川県出身。大学在学中に雑誌『CanCam』の専属モデルとしてデビュー。女性ランナーブームを牽引しながら、食や健康に関する知識も豊富で、さまざまな資格を保有している。
取材・文/平岡真汐 写真提供/長谷川理恵