13歳でモデルとしてデビューし、現在は舞台を中心に女優として活躍する豊田エリーさん。「通知表に『協調性がない』と書かれるような子でした」と自身の少女時代を振り返ります。そこからモデルを経て、舞台女優へと転身したきっかけとは?(全2回中の2回)

女子同士で群れるのは苦手だった

── 豊田さんはちょうど今の娘さんの年のころに、芸能界のお仕事を始めたんですね。

 

豊田さん:そうですね、中学1年の冬休みからでした。もともと舞台を観るのが好きで、舞台で演じることに憧れていましたが、スカウトがきっかけでモデルのお仕事から始めました。

 

娘くらいの年のころは学校があまり好きじゃなくて。性格や個性が合う子も合わない子もみんなひとつのクラスに集まって、同じことをするっていうのが苦手だったんです。芸能のお仕事を始めてもうひとつ居場所ができたので、それが助けになりました。

 

豊田エリーさん
夢が叶い、現在は舞台で活躍中。写真は昨年、舞台「ザ・ウェルキン」に出演した際の一枚

── ハッピーな笑顔が印象的で、誰とでも仲良くなれそうなイメージがあったので意外です。

 

豊田さん:女の子同士集まって、キャッキャするようなタイプではなかったです。クラスでひとりの女の子と仲良くなると、いつもその子と一緒にいるので「協調性がない」みたいなことを通知表に書かれていました。でも、何か問題を起こしたわけでもないのに、どうしてひとりの子と仲良くしちゃいけないの?って思ってましたね。

 

学校は絶対休ませてもらえない家でしたが、たまに体調が悪いふりをしていました(笑)。「右へならえ」じゃなくて、自分のペースで打ち込める中学があったらなぁ、なんて思ったり。でもその学校があっての自分なので、今は納得しています。

 

── 周りに流されず、自分をしっかりと持っていらっしゃるんですね。

 

豊田さん:どうでしょう。わりと厳しい環境でも、大丈夫なタイプではあるかもしれません。小さいことでも楽しいし、どこに行っても楽しめますね。

大好きな旅行は愛娘と。海外にもふたりで

── よくいろんなところへ旅行に行っていますよね。

 

豊田さん:このあいだは娘とドイツに行ってきました。現地にいる私の幼馴染のところに泊めてもらったので、ドイツで暮らしているような感覚を味わえて最高でした。旅行を計画したら、そのためにがんばれるくらい好きなんです。計画してる時点で楽しみが始まっているので、半年後とか1年後でもいいから、常に旅行に行く予定があるのが理想です(笑)。

 

豊田エリーさん
娘さんとのドイツふたり旅での一枚

── 事前にしっかり予定を立ててから行くんですか?

 

豊田さん:ホテルや舞台など予約が必要なものだけ予約して、あとはフリーにしておくのが好きです。その日のお天気とか気分で行動します。ホテルは特に大事なので、口コミまで読んで吟味しますね。簡単な調理ができるキッチンがあるところだと嬉しいです。先々のスーパーに行くのが好きなんですけど、パンとチーズを買ってちょっとしたものを作れたら、外食に疲れたときラクなので(笑)。そういうことを考えているだけでワクワクします。

 

21歳で出産した娘さんはもう13歳。今や旅行のよき相棒に。写真にはピースサインの手だけ伸ばすお茶目な娘さんの一面が

──「楽しいことを待っている時間が幸せ」という感覚は、豊田さんが幼いころのクリスマスと一緒ですよね。

 

豊田さん:そうですね。私、高い洋服とかバッグに興味がなくて。いいな、欲しいなと思うことはあるけれど、値段を見たら「これで旅行に行ける!」って思っちゃうんです。お金は経験、体験に使いたい。いつでも思い出して楽しめるし。いつでもおいしい、みたいな(笑)。

 

豊田エリーさんの手料理
クリスマスだけは張り切ってごちそうを作るのだそう

── 形に残るものより、形のない記憶のほうが強く残ったりしますよね。

 

豊田さん:そう思います。あと、一瞬で過ぎてしまうものを残しておくのも好きです。10代の頃から写真を撮るのが趣味なんですが、人が何かに夢中になっていたりしてカメラを意識していないときを狙ってしまいます。カメラに気づいたときの顔も好き。綺麗な風景を撮るのも楽しいけれど、あとから見返していいなぁって思うのは、やっぱり人が写っているものですね。

 

旅行先での風景を写真におさめるのも趣味のひとつ

初舞台を踏んで「集団が嫌いじゃないことに気づいた」

── 集団は苦手だとしても、人がとっても好きなんでしょうね。

 

豊田さん:それが集団も嫌いじゃないっていうことに、大人になってから気づいたんです。27歳で初舞台を踏んだんですが、みんなでやる稽古も作品を作るプロセスも本当に楽しくて。ずっと集団が合わないと思っていたんですけど、同じ方向を向いている集団での作業はすごく好きなんだって。やっと仲間を見つけられた!って感動しました。

 

豊田エリーさん
舞台稽古中の一枚

子どもの頃から憧れていた舞台のお仕事ができてとても嬉しいですし、さらに大好きになりました。これまで関わった共演者もスタッフさんも素晴らしい方ばかりで。またその方々とお仕事したいので、この人に任せておげば大丈夫と信頼されるような役者になれるようにがんばります。

 

PROFILE 豊田エリーさん

1989生まれ、東京都出身。13歳からモデルとして活動。2010年に俳優の柳楽優弥さんと結婚、女の子を出産。2016年に『ロミオとジュリエット』で初舞台を踏み、以降精力的に舞台女優としてのキャリアを重ねている。

 

取材・文/原田早知 写真提供/豊田エリー