プロデュースした「PPAP」が大ヒットした翌年に結婚した古坂大魔王さん。仕事で多忙な時期と子育てが同時進行する中で、妻に言われたひと言に衝撃を受けたとか。(全3回中の1回)

PPAPが世界的に大ヒットした陰で

── 2017年に古坂大魔王さんがプロデュースした『PPAP』が大ヒットを記録し、世界から注目を集めました。ヒットの要因のひとつに「ぽよよーん」「ぷよーん」など破裂音があったそうですね。

 

古坂大魔王さん:PPAPは10年くらい構想を練っていましたが、たまたま思いついたのが破裂音だったんです。「ぽよよーん」「ぷよーん」といった破裂音は、小さな子どもにもウケるんじゃないかと思ったんですよ。

 

── PPAPを聞かせると赤ちゃんが泣き止むと話題になりました。

 

古坂大魔王さん:僕もびっくりしたんですが、日本音響研究所さんが調べたところ、幼児が泣き止む効果音として有効な特徴があるそうです。さらに破裂音が「PPAP」ヒットの要因のひとつにもなっていた可能性が高いと言われて、驚きました。

 

── PPAPが大ヒットした翌年、2017年に結婚。2018年に第一子となるお子さんが誕生しました。

 

古坂大魔王さん: 妻とはインターネット番組の共演で知り合い、3年の交際期間を経て結婚しました。結婚話はPPAPが大ヒットする1年前から浮上していましたが、妻の仕事の都合で1年間延期して入籍することに。その翌年に子どもが生まれました。

 

── PPAPの大ヒットもあって、プロデューサーの古坂大魔王さんは相当忙しい時期だったのではないでしょうか?

 

古坂大魔王さん:毎週のように仕事で海外に行っていた時期は、ほとんど家に帰れなかったですね。それでも家にいられるときは、お風呂に入れたり、おむつ替えたり、寝かしつけしたりとある程度のことはできるようになっていたため僕の中では育児をしているつもりでした。

妻に言われた強烈な言葉

── お子さんが生後7か月のときに、イクメンオブザイヤーを受賞されました。

 

古坂大魔王さん:しかし、受賞する少し前、妻に「俺、どのくらい育児に関われてるかな」と聞いたら、妻からは2%と言われてしまったんです。

 

自分では、妻をサポートして育児をしているつもりでした。たとえば、妻がおむつを替えるときに、おむつと一緒にウェットティッシュやおむつかぶれしないように塗るワセリンをセットしておく。妻がミルクを作る際には水を用意する。でも、よくよく考えたら、それは妻が育児をすることが前提になっていて、実際に自分がしたことって1日数回、子どものおむつを替えるとかお風呂に入れる、たまに寝かしつけをする程度だったんです。

 

── なぜ奥様の育児のサポートに回っていたのでしょうか?

 

古坂大魔王さん:僕よりも妻のほうが子どものお世話に慣れてると勝手に思い込んでいたんです。僕が海外出張で自宅にいない間、ずっと妻ひとりで子どもの世話をしていたわけですから、自分が変に手を出すより任せたほうがいい。僕が何かやったところで妻から「やり方が違う!」と思われそうだから、余計な手出しはしないほうがいいかなと。

 

育児においては、妻が監督で僕は監督をサポートする役割に徹したほうがうまく回るだろうと思ったんです。本来は夫婦ふたりで子どもの世話をするべきなのに、勝手に僕がサポート役に回ってしまったものだから、妻がひとりで頑張らないといけなくなってしまいました。

 

妻は愚痴も言わないし弱音もはかない。結果、妻は頼るところがなくてひとりで頑張ってしまっていたんだと思います。妻も慣れない育児で必死になっていたのに、頼るところがなくて大変だったと思います。

 

── 古坂大魔王さんはひとりでお子さんを見ていたことはありますか?

 

古坂大魔王さん:子どもが生後3か月目のとき、妻に用事があって外出するから子どもの面倒を3時間見てほしいと言われたことがあったんです。子どもの世話はひと通りできるとはいえ、不安だったので念のため助っ人として後輩を呼びました。でも、心配した通り、途中で子どもが泣き出して何をやっても泣き止まない。大きな男がふたりもいながら、小さな赤ちゃんを前におろおろ。

 

どうしようもないからいったん外に出て新鮮な空気でも吸おうかと、自宅のすぐ目の前にあった公園に連れていったら子どもがピタッと泣き止んだんです。「なんだ、外の空気が吸いたかったのか」って。当時は、そんなことすらわからなかったんです。

 

今、考えると育児の肝は0か月から半年の間なのかもしれませんが、その時期に日本にいなくて、たしかに2%だと言われても仕方がない状態だったなと思います。それもあり、ふたり目ができたら、今度こそ本気でやるからと妻に伝えました。幸いにも、ふたり目の子どもがわりとすぐにできたので、そこからは真のイクメンになるべく奮闘を始めました。

 

PROFILE 古坂大魔王

1973年生まれ。青森県出身。2児の父。プロデュースしたピコ太郎の「PPAP」が世界的に大ヒット。文部科学省・CCC大使、総務省・異能vation推進大使。青森産の高級リンゴを生産するプロジェクト「Princess Piko Apple Project」を始動。

 

取材・文/間野由利子 画像提供/エイベックス・マネジメント・エージェンシー提供