主人公の恋路を阻む元カノ役などを数多く演じ、ドラマや映画にひっぱりだこの俳優・小林涼子さん。経営者としての顔も持つ多彩な彼女が目指す、これからの姿とは。(全4回中の4回)
「過去つき合ったなかで一番良かった女」になれれば
── 俳優としての今後についてお聞きしてもいいでしょうか。ミステリアスな元カノを演じさせたら右に出るものはいない小林さんですが、俳優としてこれからどんな道を目指しますか?
小林さん:「右に出るものはいない」は言いすぎです(笑)。もちろん求めてもらえるんだったら、真ん中の役をやってみたい、という気持ちもなくはないです。でも今のライバルというか、恋敵みたいなポジションも嫌いではないんです。
最初は「みんなの元カノ」って言っていただいたくことに、照れくさいような、素直に喜んでいいのかわからない気持ちもあったんですけど。「昔はすごく好きだったけど、今つき合いたいかというとそうでもない」みたいな役が多いんです。
私のほうから「やり直さない?」と言って、フられることがよくあって、セリフでも言ってて悲しいんですけど…(笑)。
── それはたしかに複雑な気持ちですね。
小林さん:でもそれはそれで、「きっといい思い出にしてもらってたんだろうな」と想像すると、なんだかちょっと甘酸っぱい気持ちになったりもします。なので、その役の方にとって「過去つき合ったなかで一番良かった女」になれればいいな、と(笑)。
今のポジションにきちんと向き合って、自分が求められている役を大切にしながらやっていきたいですね。
── 「みんなの元カノ」というワードが強いですね(笑)。
小林さん:強いですよね(笑)。私から取材でお話ししているわけではないんですけれど「こんな記事があるよ」ってマネージャーさんや母から記事が送られてきたときは、ちょっと笑ってしまって…。記事にまでしていただけるなんて光栄ですが、照れくさい感じがしています(笑)。
SDGsに関心がある企業や消費者のつなぎ役に
── 経営者としては、今度どのようなことを目指していこうと考えていますか?
小林さん:障がい者雇用は社会全体の課題でもあると思うので、私たちの取り組みが、少しでも障がい者雇用推進の手段のひとつになれればと考えています。障がい者を雇用する企業にとって私たちのファームが選択肢のひとつになって、導入ハードルを下げていけるように注力していきたいです。
また、SDGsに関しても、企業の方々とお話しすると「なにをやったらいいかわからない」といった声をよく聞きます。まず「身近なところから始めてみませんか?」と、企業のノベルティの作成などから少しずつすすめています。今後は商品展開を充実させてEC事業を展開していこうと考えているんです。
SDGsに興味はあるけれど、何をしたらいいかわからないという企業の方々や、一般消費者の方々のつなぎ役になっていけたらいいなと思っています。
── EC事業は具体的にどのような構想なのですか?
小林さん:まずは自社商品の販売を考えているのですが、ゆくゆくはお歳暮やお中元を送るときに使っていただける、地球にも人にもやさしいSDGs商品に出会えるギフトEC事業を作れたらいいな、と思っています。
── 意地悪な質問かもしれませんが、芸能人の起業というと、うがった目で見られたり、「芸能人が片手間で会社やっているんでしょ」みたいに言われたりしませんか?
小林さん:それはめちゃめちゃ言われます(笑)。私のことはなんと言ってもらってもかまわないけれど、会社のことを言われるのはすごく傷つきます。
それでも、片手間でやっているわけでも、人に評価されたいがためにやっているわけでもない。睡眠時間を削ってでも、会社を通して見たい未来のためにやっているので、引き続き頑張ります。
PROFILE 小林涼子さん
俳優、株式会社AGRIKO代表取締役。1989年生まれ、東京都出身。10クール連続でドラマに出演し話題を集める。直近の主な出演作品は、映画「わたしの幸せな結婚」、テレビドラマ「王様に捧ぐ薬指」や「ハヤブサ消防団」など。俳優業のかたわら、 2014年より農業に携わる。家族の体調不良をきっかけに株式会社AGRIKOを起業。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/AGRIKO、小林涼子