10クール連続でドラマに出演する人気俳優の小林涼子さん。持続型農園の経営者としての顔も持つ彼女に、俳優と経営者との両立の秘訣やメリットについて聞きました。(全4回中の3回)
撮影や打ち合わせ…とにかく多忙な日々
── 10クール連続でドラマに出演されるなど、俳優としても多忙な日々を送っているかと思います。俳優と経営者、どのように両立されているのでしょうか。
小林さん:そこはマネージャーさんにスケジュール管理をお願いしていて、本当に助かっています。みなさんに協力してもらってうまくスケジュールを調整してくださっているおかげで両立できています。
時間的にはハードなんですけど、新幹線や車の移動中に作業することもあります。『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日)のときは地方ロケだったので、移動車の中でずっと打ち合わせをしていました。俳優業の所属事務所にも会社のスタッフにも応援していただいていることもあって、今は両立ができてますね。
── 私は育児しつつ仕事をしているのですが、どちらも中途半端になってしまうフラストレーションを抱えています。小林さんはそういう思いはありませんか?
小林さん:めっちゃあります!
── そういったフラストレーションをどう解消をしているのでしょうか?
小林さん:「そもそも、これは今日1日で終わらないな」ということをちゃんと認識するようにしています。俳優は香盤表(スケジュール)通りに撮影して、今日の分が終わったら終わり。もちろん、撮影が押すこともありますが、それでも毎日必ず終わりが来るんです。でも、会社の仕事には、終わりは来ないんですよ。
だいたいは「あー、今日はこれが終わらなかったな」と次の日に持ち越すことになる。翌日また仕事をしているうちに、今度は違う連絡が来たりして、対応したりしていたら、また次の日にやることが持ち越しになっていって…。そうやって、やるべきことは延々終わらないんですけれど、ある意味終わってはいけないんですよね。
それはたぶん、お母さんたちも一緒だと思うんです。育児も家事も終わらないけれど、終わっちゃいけないんですよね。終わらないくらい、いっぱい仕事があってよかったなって、思うようにしています。「今日もまた仕事がある、いいことだな」って。
── 切り替えられるのが素晴らしいですね。
小林さん:みなさんが子育てに日々悩むのと同じように、私もいろんなことに日々向き合って悩んでいます。それぞれ課題はありますが、継続して働いていただき、関わりあって、一緒に悩んでいける。そういうのもいいことだなと思っています。
── なかなかそうは思えないので、素敵だと思います。
小林さん:いや、理想論ですけどね(笑)。いつも、1日の終わりは「ふぇ~」ってベッドに倒れこんでいます。
── 寝る時間を削ってしまったりしませんか?
小林さん:撮影の前日はしっかり寝ますね。「ここまで」と時間を区切って作業をやめます。ただ、撮影が終わって「明日は撮影がない」という日は、ついついエンドレスで仕事をしてしまいます(笑)。
撮影も会社も「チーム戦」だと再認識できた
── 俳優とビジネスを両立させることによって、見える世界は変わりましたか?パラレルキャリアだからこそのメリットはどのような点にあると思いますか。
小林さん:そうですね。俳優って、作品ごとに仕事仲間が変わるので、よくも悪くも職人肌というか個人で活動する感覚が強いんです。でも、実際は作品ごとに俳優部以外にもたくさんのスタッフさんがいて、部署をまたいでディスカッションをしながらひとつの作品をつくっていく。そういうところは、会社とある意味同じです。
会社をやるようになってからは、「これはあの人に聞いてみよう」とか、以前よりスタッフさんに頼ったり相談したりできるようになりました。それは、すごくよかったなって思います。
経営者の面でいえば、今回の取材のように、会社に興味を持っていただく機会が増えることですかね。起業して間もないにもかかわらず、こうやって取材していただけるというのは本当に俳優業をやっていたからかなと感謝しています。
── 芸能の世界に身を置くことで、事業に還元できる点はどこにあると感じますか?
小林さん:AGRIKOを通じて、AIGLEさんというアパレルブランドさんとご一緒して、ファッションシューティングも実現しました。
自分自身が広告塔になりたいというわけでもないんですが、AGRIKOに興味を持っていただくきっかけがつくれるのかなという気もしています。本当にまだ始まったばかりの会社を知ってもらえる機会を得られるということは、ある意味強みなんじゃないかなと思っています。
PROFILE 小林涼子さん
俳優、株式会社AGRIKO代表取締役。1989年生まれ、東京都出身。10クール連続でドラマに出演し話題を集める。直近の主な出演作品は、映画「わたしの幸せな結婚」、テレビドラマ「王様に捧ぐ薬指」や「ハヤブサ消防団」など。俳優業のかたわら、 2014年より農業に携わる。家族の体調不良をきっかけに株式会社AGRIKOを起業。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/AGRIKO、小林涼子