小学生の母である荒牧陽子さん。全国をライブで回りながら、母としてシンガーソングライターとして、どのように向き合っているのでしょうか。(全3回のうち3回)

仕事で家を開けるときに

── 2016年に第一子を出産されました。母になって変化したことはありますか?

 

荒牧さん:周りから穏やかになったって言われますね。それまで尖っていたつもりはないんですけど(笑)、私にも守るものができて、いい意味で肩の力が抜けたというか。

 

── 子育てはいかがですか?

 

荒牧さん:家でレコーディングをすることもありますが、子どもが小さい頃は後追いもされたり子どもが泣いて自宅レコーディングができないときもありました。

 

今もわがままを言うこともありますが、だからと言って歯止めが効かないほどでもないです。なんでも自分で選んで決めさせることを意識している程度で、私から子どもにアレやれコレやれなど言わず、なるべく自由にさせています。小一の壁もなかったですし。元気すぎて体力がついていかない!と悲鳴を上げることがあるくらいですね(笑)

 

── 穏やかに過ごされていると。

 

荒牧さん:親子なんですが、友達みたいな感覚もありますね。あと、私が日々歌っているからか、子どもも歌うことが好きです。私が歌うと一緒に歌い出して、楽しそうにしています。

 

── お子さんに言われて嬉しかった言葉はありますか?

 

荒牧さん:ライブで全国を回っているので、日帰りのときもあれば、泊まりになることもあってスケジュールがバラバラなんです。子どもがもっと小さいときは子どもも連れて行きましたが、今は家でお留守番をしています。

 

ただ、ライブで帰ってこないことがわかると、「寂しけど、頑張ってね!私も頑張る!」というようなことを言ってくれます。申し訳ないなと思いつつも、その言葉があるおかげで頑張れるし、「じゃあ今度の日曜日は絶対遊ぼうね」と約束をして、私の方が楽しみにしていますね。

自分が思っているイメージとの相違に

── ところで、デビューしてしばらく人に対して意識することがあったそうですね。

 

荒牧さん:若いときは、周りの方から怖いとか話しかけづらいってよく言われてたんです。自分ではそんなつもりもなくて、むしろ話しかけてほしいくらいだったんですけどそう見えてしまっていたようで。周りのスタッフさんから、これだと誤解を招くので、人よりもたくさんお辞儀をしなさい。自分が思っている以上に謙虚に振る舞いながら、内心は闘志を燃やしていなさいよ、という意味で『謙虚なオラオラでいこう!』と言われた時期がありました。

 

── “凛”としてる感じでしょうか?

 

荒牧さん:すごくいい言い方でおっしゃってくださって(笑)。

 

── ありがとうございます(笑)。お子さんを出産された後はいかがですか?

 

荒牧さん:今はだいぶ気持ちも雰囲気も変わったような気がします。若いときはとにかく頑張らなきゃと言い聞かせていたし、強い女性をイメージして楽曲を作っていた時期があったので、そのイメージのまま突っ走っていました。

 

── 荒牧さん自身、休業や出産を挟んで周りに対する意識も変わりましたか?

 

荒牧さん:それはあります。以前は前しか見ていなかったとしたら、今はだいぶ周りが見えるようになった。その分、自分にも周りの方に対してもちょうどいい距離感で過ごせているような気がします。

 

PROFILE 荒牧陽子さん

岡山県出身。1981年生まれ。シンガーソングライター。20歳の時に上京し、カラオケのガイドボーカル、ものまねシンガーとして活躍の幅を広げながら、シンガーソングライターとして活躍を続ける。

 

取材・文/松永怜