まだ駆け出しの芸人だったお笑いコンビおぎやはぎ・小木博明さんにひとめぼれし、6年の交際を経て結婚した奈歩さん。「夫婦ゲンカはほとんどない」という奈歩さんですが、最近初めて不安になった出来事があるそうです。(全4回中の2回)
みんなに「ブスブス」言われすぎて
── 結婚前の小木さんは、テレビ番組でしばしば「彼女はブス」と発言していました。ご本人としてどう受け止めていたのでしょう?
小木さん:傷つくとか不満という感じはまったくなく、彼の出ている番組を笑って見ていましたね。テレビに出初めたばかりの頃だったので、一生懸命に笑いを取る彼を微笑ましい気持ちで見つめていました。
ただ、その後、テレビでみんなにブスブス言われすぎて、だんだん自分が本当にブスに思えてきて、「ちょっと言霊がヤバイから、どうせならブサイクに言葉を変えてくれない?」とお願いしたことも(笑)。でも、彼にとって、その言葉自体にたいした意味がないのも分かっていますし、表現のさじ加減というのは職業によって違うと思うので、「芸人の妻」としては、まあそんなこともあるだろうなという感じで受け止めていますね。
── バラエティ番組などで、家での話を盛られたり、プライベートの話をしゃべられたりする場面も多いと思うのですが、それがもとで揉めたりしませんか?
小木さん:親が歌手だったので、子どもの頃から家にいる母と舞台に立っている母は「別の人」という感覚がありました。ですから、自然と切り離して考える癖ができているのかもしれません。テレビで自分の話をすごく盛られても、「ああ、面白いな」と家族で笑っています。
子どもの進路で初めて意見が分かれた
── すごく仲のいいおふたりですが、夫婦ゲンカをされることはありますか?
小木さん:大きなもめ事や別れの危機みたいなものは、付き合っているときからまったくないんですよね。ただ、一度だけ、あまりの考え方の違いにビックリして、「この人とやっていけるのかな」と不安になったことがありました。
── どんなことだったのでしょう?
小木さん:子どもの進路について「こうなってほしい」という夢と期待がすごく大きいみたいで、「いい学校を出て、いい会社に就職してほしい」と言うんです。まさか彼がそういう価値観を持っているとは思わなかったので、「いきなりそんなことを言いだすなんてどうしちゃったの?」と。
逆に私は、そういう願望はまったくなく、自由に楽しく過ごしてくれればいいという気持ちが強いタイプ。長く一緒にいたのに、こんなに違う考えがあったとは気づかず、驚きましたね。
── 自分のことはさておき、お子さんには堅実な人生を望むというのは、「親あるある」かもしれませんね。
小木さん:私からすれば、「それなら出だしの段階から違うんじゃない?そもそもうちってそんな感じだっけ?」と(笑)。ただ、それ以外は、彼に対して不満を抱いたことは一度もないですね。向こうはどう思っているのか分かりませんけれど。
彼はすごく温厚な性格なので、怒ったり、感情的になったりということがないんです。では優しいのかと言われると、ちょっと違う気もしますが、「はいはい。なるほどね」と、ものすごい吸収力ですべて受けとめる。だから、彼に対してイライラしたり、怒りを感じることがないんですよ。
── 小木さんの吸収力、恐るべしですね(笑)。長年仲良く過ごせる秘訣は、なんだと思われますか?
小木さん:期待をし合わないことですかね。「これくらいできるだろう」とか「やってもらえると思ったのに」といった期待をお互いに持っていないので、がっかり感がないのかもしれません。
2人とも話好きなので、一緒にいるときは、ずっとしゃべっています。ひとつの話題をきっかけに、「そういえば、以前こんなことがあってさ…」とお互いの昔ばなしをするなど、どんどん会話が広がっていくので話が尽きないんです。出会ってから20年以上経ちますが、いまだに彼とのおしゃべりは、私にとって楽しい時間ですね。
腎細胞がんを見つけた妻の胸騒ぎ
── 2020年には、小木さんが初期の腎細胞がんで手術をされました。病気の兆候はあったのでしょうか?
小木さん:じつは、まったく別のことで病院を訪れたことが発見のきっかけでした。もともと彼は、偏頭痛もちで、薬をたくさん飲みながら症状をおさえていたのですが、その治療のために入院をしていました。そのときに、ふと思うところがあって、「一度、腎臓と肝臓の検査をしてみてほしい」と伝えたんです。
── それはなぜでしょう?
小木さん:彼は、ああいう性格なので、人に対して怒ったりすることがほとんどないのですが、じつは、受け流しきれずにストレスを溜めている部分もあるんじゃないかなと。そう考えたときに、体のなかで濾過機能を担う腎臓や肝臓などに不調が生じているんじゃないかと思ったんです。そこで検査をしてもらったところ、腎臓にがんが見つかったというわけです。
── 予感が的中したのですね。さぞかし心配されたのでは?
小木さん:心配する気持ちよりも、数値にも出ていない段階でがんがみつかってラッキーだったねと安心する気持ちのほうが大きかったです。しかも、コロナ禍で仕事が緩やかになっていたタイミング。長年悩んできた偏頭痛の治療もできたし、万事うまくいってる!と思っていました。
後から彼には、「あまりにも心配している様子がないのが、かえってよかった」と言われました。
── 家族が心配する姿を見るのは、本人としてもつらいですもんね。ポジティブに受け止め、どーんと構えていてもらえるほうが、安心して治療にも専念できそうです。
小木さん:そうだといいなと。本人は、「病気を経験して俺は優しくなった、前とは違う」と言うのですが、正直、違いがよく分かりません(笑)。
PROFILE 小木奈歩さん
1971年生まれ、東京都出身。会社員を経て1999年から2005年まで、ウクレレコーラスデュオ「Petty Booka(ペティブーカ)」で活躍。2006年にお笑いコンビおぎやはぎの小木博明と結婚し、現在一児の母。母親は歌手の森山良子。
取材・文/西尾英子 画像提供/小木奈歩