幼少期から自分に自信がなかったと話す釈由美子さん(45)。だからこそ、親として、我が子にどんなに疲れていても、伝えることがあるといいます。(全5回中の4回)
「ほめられた記憶がない」私は愛情を言葉にする
── 現在小学1年生の息子さんを育てる釈さんですが、子育てをするうえで気をつけていることはありますか?
釈さん:息子への思いはきちんと言葉にして伝えています。赤ちゃんのころから絶対に欠かさないのは、寝る前に「大好きだよ、生まれてきてくれてありがとう」と言うことです。これは、息子が話し始める前からずっと続けていますね。
私が疲れて、その言葉を伝えずにウトウトしていると、「あれ?ママ、いつものは?」と催促してくるんです。もしかしたら、私が思っている以上にその言葉は、息子にとって、かけがえのないものなのかもしれません。だからいつも「あなたはママの宝物だよ」と、言うようにしています。
もちろん甘やかすだけではなく、叱るときはものすごく叱っています。自分の感情にまかせて怒らないように心がけ、どうして叱ったかをちゃんと説明しています。
たとえば子どもが赤信号で道路を渡ろうとしたら、「信号を見ないで道路を渡ったら危険だよね。急に飛び出したらすごく危ないから、ママは怒ったんだよ」など、理由を伝えると、息子は納得してくれます。
── 言葉で伝えるのは本当に大切ですね。叱られても理由をきちんと説明されたら息子さんも納得できると思います。
釈さん:親だったら誰でも、子どものことはすごく大切で、生まれてきてくれたことに感謝していると思います。「言わなくても伝わるだろう」と考えがちですが、やっぱり言葉にはすごいパワーが秘められているはずです。愛情をきちんと伝えることで、子どもも満たされるのではないかと思います。
こういうふうに考えるのは、私自身の幼少期が影響しています。私は4姉妹の次女ですが、父がすごく口下手な人で、ほめられた記憶がほとんどないんです。
テストで100点を取っても、学級委員長になっても、ダメ出しばかりされていて。「お前は本当に頭が悪いな」とか、「橋の下で拾ってきた子なんだ」と、さんざんでした。
── お父様からしたら冗談のつもりだったのかもしれませんが、それは傷つきますね…。
釈さん:大人になってから振り返ると、姉妹のなかで私が一番ムキになりやすいタイプでした。父からすると、何か言うたびに私が言い返してくるのがおもしろかったんだと思います。
「いじるのが愛情表現」みたいな部分があったのかもしれません。でも、子どものときはそれがわからなくて…。ほめられるのはお姉ちゃんばかり、妹たちは可愛がられているのに、私だけどうしてこんなにいじめられるんだろう、と悲しい思いをしていました。
こうした経験が私の自己肯定感の低さや自信のなさ、承認欲求の強さを生み出してしまったように思います。息子には私みたいな思いをさせたくない。だから息子が自分自身を愛せるよう、どれだけママがあなたを大好きか伝え続けようと思っています。
息子との遊びは全力で「体力ゼロになる充実感」
── 息子さんを出産し、釈さん自身が変わったところはありますか?
釈さん:出産したことで、ようやく人生のスタートラインに立った感覚があります。先ほどもお伝えしましたが、私はずっと自己肯定感が低くて、承認欲求が強かったんです。
だから、いつも「誰かに認められたい」「私を見てほしい」「もっともっと愛してほしい」と求めてばかりでした。でも息子が生まれてみると「自分のことを全部捨ててでも、この子を守らなくてはいけない」という気持ちが芽生えました。
赤ちゃんのころは、生活のすべてをお世話してあげないといけません。無垢で無防備な姿を見て、私が無条件に愛情を注がないとこの子は生きていけないと思ったんです。そのときに、私が求めていたのは「与えられる愛」ではなく、「与える愛」だったんだと気づきました。
── 素晴らしいですね。愛情を注ぐことで、釈さん自身が満たされているんですね。
釈さん:いまは子育てが生きがいですね。いつもどうしたら息子を楽しませてあげられるかを考えています。息子と遊ぶのが本当に楽しくて、いつも全力です。ものすごく体力がある子だから、いつも私のほうがヘトヘトになるんですけど(笑)。
先日も、一緒に多摩動物公園に行ってきました。ただ動物を見るだけでなく、動物園のパンフレットに、いろんなミッションやなぞなぞを書きこんで、謎解き風にしてみたんです。
坂道では「ここはダッシュする」と指令を書いてみたり「次に見に行くのはどんな動物か」をクイズにしてみたりとか、いろいろ工夫しました。閉園ギリギリまでいて、私はもう体力の限界。でも、息子はまだ遊びたりない感じで、動物園の近くにある「京王れーるランド」や、屋内遊具施設「京王あそびの森HUGHUG」でも遊びました。
── 動物園でも謎解き風にするアイデアは楽しいですね。
釈さん:ちょっとしたことでも、より楽しくできないか、いつも考えています。私は自然の多いところで育ったので、息子にも季節の移り変わりを感じさせてあげたり、動植物に触れ合わせたりしてあげたいです。
春はつくし取り、たけのこ掘りや田植え、夏は天然のホタル鑑賞や魚釣り。秋は栗拾いや稲刈り、冬はスキーなど季節ごとのイベントに取り組んでいます。お互いに楽しみながら、たくさんの経験をしていきたいですね。
PROFILE 釈 由美子さん
しゃくゆみこ。女優・タレント。グラビアアイドルとしてデビュー後、映画『修羅雪姫』、『ゴジラ×メガゴジラ』、ドラマ『スカイハイ』、『7人の女弁護士』などの作品で主演を務めるなど出演作品は累計100作を超える。舞台、イベント、ナレーション、広告出演等、多方面で幅広く活躍。
取材・文/齋田多恵 写真提供/釈 由美子