男子マラソン大迫傑選手の妻・あゆみさんは、「踊る!さんま御殿!!」や「ホンマでっか!?TV」など、テレビでも活躍されています。飾らないトークに注目が集まる一方で、でしゃばりとやゆされることもあると言います。それでも出演を続ける理由には、いくつかの思いがありました。(全4回中の4回)

仕返しと恩返しのために始めたインスタグラム

── テレビ出演のきっかけを教えてください。

 

大迫さん:私のインスタグラムを見てくださった関係者の方が、面白そうだからと声をかけてくださったのがきっかけです。でも元々は、渡米するときに行かないほうがいいと止めた人たちに対して「ほら、私たちうまくやってるでしょう」と伝えたくて、意地でやっていた部分があったんですよ。アメリカで家族全員が楽しくやっている姿を発信し続けることが止めた人たちへの仕返しみたいなものにもなりますし(笑)、学生結婚で迷惑をかけた人たちへの恩返しにもなるかなと思っていたので。そうやって続けてきたことが、今につながっているんだと思います。

 

── ご家族はどんな反応をしていますか?

 

大迫さん:夫は面白がっています。日本では、夫より3歩下がってる姿が正しいアスリート妻の在り方っていう意識が多いと思うので、私のメディア出演にものすごく反発を受けるんですよね。テレビで話したことがネットニュースになると、コメント欄をスクリーンショットして送ってくる方もいて。DMでも「でしゃばり」とか「旦那を踏み台にして自分が目立ちたいだけだろ」とか「妻が出るべきじゃない」と、メッセージが来ることもあるんですよ。

 

でも夫は「どんどん出て発信すればいい」と言ってくれています。子どもたちもめちゃくちゃ喜んでくれていて、明石家さんまさんの番組に出るのは特にうれしいみたいです。「踊る!さんま御殿」に出演してヒット賞をいただいたときは、本当に届くんだとびっくりしちゃって、今は自宅に飾ってます(笑)。それこそオレゴンにいたときには、こんなものをいただけるなんて想像もできなかったですね。

 

「踊る!さんま御殿!!」では夫婦のエピソードを披露

── 出演時に心がけていることはありますか?

 

大迫さん:大迫傑を好きになってほしいとまでは言いませんけど、マラソンに興味を持ってくれる人がもっと増えるといいなあとは思いますね。「あーこの人、奥さんがテレビに出てこんなエピソード話をされていた人だ」をきっかけに、マラソンを見る人が増えてもらえればうれしいです。

 

バラエティー番組では夫のドジ話をすることも多いんですけど、人間くさい部分も見えたほうが応援してくれる人が増えるんじゃないかと思っていて。東京マラソンのときも、夫がスパッツと帽子を家に忘れていったことをインスタグラムに載せたら、テレビを見た方々から「あ、ちゃんと履いてる!」とか「これがあのスパッツと帽子ですね」とか「間に合ってよかった」とか、ものすごく反応があったんですよね。

 

ほかにも、夫と喧嘩した話や失敗談を話すこともありますけど、取っ組み合いになっても何日か経つと結局は家族全員でネタにして笑ってるんですよね。全部を笑いに変えないとやってこられなかったんで(笑)。だから、番組内でもとりつくろったりがんばったりはまったくなくて、家でしゃべってる感覚でテレビに出ている感じなんです。

 

── ご主人のためになればという思いが根底にあるのですね。

 

大迫さん:やっぱり私がテレビに出られているのは夫が活躍してくれているからこそなので、まずはそこが第一ですね。でも「女性が前に出るな」や「アスリートの奥さんは下がってろ」という意見に対する反発もあったりはします。以前、夫が日本人1位だった大会で、ゴール直後に娘を呼んで写真撮影をすることになったんです。そのときの私はそこに行くとたたかれるかもって思っちゃって怖くて行かなかったんですけど、本当はうれしい瞬間に奥さんもいたいし、見ている側に立ってみても、私は家族みんなが喜んでる姿におめでとうと言いたいタイプで。

 

奥さんはたたかれるけど、親だと感動物語になることに悔しさを感じたりもするので、そのあたりが変わっていってくれたらなとも思っています。

 

東京マラソン時の大迫選手とお子さんたち

お母さんって毎日髪を振り乱して必死

── インスタグラムでは、育児中のお母さんから共感を集める投稿も多くありますね。

 

大迫さん:そうそう、以前「せっかくのコーヒーが冷めてしまった」という投稿をしたことがあるんですよね。家事をやって子どもを保育園に送って何時間ぶりに座ったら、朝に入れた熱々だったコーヒーが、冷たくなって牛乳と分離しちゃってたっていう内容だったんですけど、それには「わかります」とたくさんコメントをいただきました。

 

お母さんってみんな毎日髪を振り乱して必死じゃないですか。レストランでも食べたいものを食べられないし、食べられるのは子どもの冷えたうどんとかじゃないですか(笑)。でも私はそれを悲しむよりも外に発信したいタイプなので、これからも「お母さんはこんなに大変なんだぞ。それでも楽しく育児してるんだぞ」とプラスに伝えていきたいです。

 

── 月経前症候群(PMS)に関する発信もありました。反響はいかがでしたか?

 

大迫さん:やっぱり素直に出してみたら反響がありましたね。私は普段から近所の人たちとの井戸端会議でもSNSでも「こんなことで悩んでます」というのをどんどん発信しています。ひとりで悩んでるよりも、人と関わったほうがいろんなアイデアが出てくると思うし。とにかく黙ってはいられない性格なので、どうしたらいいかをみんなで考えたいタイプなんです。

 

3歩下がってばかりだとそういうことはできないので、どんどん自分で発信していいと思ってます。PMSって皆さん積極的に言わないだけで悩みに共感してくれる人は多くて。コメント欄同士でつながった人もいらっしゃるみたいで、よかったなと思っています。

主婦には時間があるんだろうなと思ってた

── 会社員、専業主婦、タレントの各ステージで、どんなことを感じましたか?

 

大迫さん:アシックスに就職していたのは1年間だけですけど、専業主婦にもアスリートを支える立場にもなって思うのは、ラクに稼げる仕事は本当にないなということですね。外からだとラクしてるように見えるものが、それぞれの立場に立ってみると、なかにいる人はすごくもがいているんだなと思いました。

 

働いてるときは、専業主婦には時間があるんだろうなと思う部分もあったんですけど、いざ自分がなってみるとすごく大変でした。今で言うと、夫のおかげでテレビに出たことによって、人とのつながりやコミュニティが広がったのがすごくよかったと思っています。

 

元プロ野球選手・林昌範さんの奥さまや、元大相撲力士・豊ノ島さんの奥さまともお話することができて、違う競技の方と話すと「やっぱり夫がいない期間があるほうがいいよね(笑)」とか「適度な距離感があったほうがお互い尊敬できるよね」という話を共有したり、食事や生活スタイルの違いを知れたりと学ぶこともたくさんありましたね。

 

── 今後の目標を教えてください。

 

大迫さん:夫がどこに目標を置いているかはわからないですけど、それがかなえられたら一緒にがんばっている家族としてはすごくうれしいです。子どもたちには、そういう目標に向かってがんばっている父親の姿をずっと見てもらいたいなと思っています。

 

私は私で、3歩下がってではない妻でい続けたいです(笑)。結婚してから今日まで、家の中で陸上に関する話題はほとんどないんですよ。だからこれからも「大迫傑 最新」とか「大迫傑 次回レース」とかスケジュールをネットで調べながら、応援していきたいなと思います。

 

PROFILE 大迫あゆみさん

1989年生まれ。2012年、男子マラソン前日本記録保持者・大迫傑選手と結婚した。現在はTBSテレビ「ひるおび」で隔週レギュラー出演をしながら、11歳の長女と5歳の次女を育てている。アスリートフードマイスターの資格を取得しており、2020年からは「ランニング食学検定」アンバサダーも務めるなど、幅広く活動している。

 

取材・文/長田莉沙 画像提供/大迫あゆみ