幼少期から芸能活動を始めた福田麻由子さんは「違う仕事をしてみたい」とみずから応募し、野菜を育てて働く経験をしたそうです。その後の自身の変化について伺いました。(全3回中の3回)

物心ついた頃には「この環境にいた」

── 子役として芸能活動をスタートしましたが、仕事を始めるきっかけはなんでしたか。

 

福田さん:私は覚えていないのですが、母から聞いた話では、「おかあさんといっしょに出たい」と言ったようなんです。出演のチャンスがあるかもしれないと、4歳の頃に児童劇団に入ったのが仕事を始めるきっかけになりました。歌やダンスのレッスンも毎週受けられるので、習い事のような感覚で軽い気持ちで始めたと聞きました。

 

福田麻由子さん
ワーホリ中の現在、ニュージーランドにて友人との1枚(写真左から2番目が福田さん)

私は、すごく運動神経が悪くて、ダンスも苦手で、歌もちょっと下手(笑)。でも、オーディションの情報が入るので受け始めるようになり、ケンタッキーフライドチキンのCMに出演したのが初めてのお仕事でした。そこからどんどん楽しくなって、気がついたらいろいろなものに出させてもらいました。

 

人見知りでもなく、緊張もしない性格で、物心ついた頃にはいつの間にかこの環境にいたという感じです。当時は気づいていなかったのですが、最近になって「私、こんな小さい時から働いていたの?大変だったね」と思うことがあります(笑)。

 

── お仕事も忙しかったかと思いますが、学校には通えていましたか。

 

福田さん:学校も好きだったので、事務所の方にお願いして、ちゃんと通っていました。運動会も全部出て、テストも受けて。高校の修学旅行も絶対に行きたいと言っていたので、当時のマネージャーさんが「その日は修学旅行があるので!」とスケジュールを交渉してくれていたこともよく覚えています。すごく無理を言って学生生活を優先してもらっていました。ただ、部活には入っていなかったので、芸能活動が部活の代わりのような感じでした。

「何をしたらいいかわからない」ふさぎこんでいた20代前半

── 大学生活がスタートしてから一気に変化があったそうですね。

 

福田さん:大学に入学するタイミングで実家を出てひとり暮らしを始めたんですけど、環境が変わったのもあって、仕事どころじゃないくらい肌が荒れてしまったんです。それで「このままだと仕事ができなくなっちゃう」と思ったら、どんどん痩せていってしまいました。

 

大学も高校までとは違って毎日通うわけではないので、お仕事がないときはぽっかり時間が空いてしまって。まるで時間が止まってしまったような感覚でした。それまでは常にお仕事をいただいて、あれを頑張る、これを頑張る、というふうに目の前の目標があったのですが、仕事がない時間は「何をしたらいいのかわからない」となってしまって。二十歳くらいの頃だったと思います。

 

福田麻由子さん
可愛すぎる!子役として超多忙な生活をしていた頃の福田さん

そこから20代前半は、ふさぎ込んでいました。空いている時間は家でアニメを観たり、ゲームをしたり。今考えると、「いったい何をしていたんだろう?」と思うんですが、当時は何もしたくないと思っていました。でも、おそらくですが、10代で走り続けてきた時間を取り戻すための充電期間だったように思います。

 

── 芸能の仕事以外にもチャレンジされたことがあったそうですね。

 

福田さん: 1年前の5月に、農家の仕事をしたんです。自分で仕事を見つけるという経験をしてみたかったのもあって、自分で応募フォームを書いて申し込んで、ずっと興味があった農業のお仕事をさせてもらいました。

 

いろいろな季節の野菜を育てて、地元に出荷している農家さんのところで働きました。なす、ピーマン、インゲン、キャベツ、オクラ…といろんな種類の野菜を育てたのですが、農作業は芸能の仕事とは真逆だなと思いました。野菜は生もので、収穫してから数日しか持たないものもありますし、自然を相手にしていることも違いますよね。

 

最初はぜんぜん違う仕事にチャレンジしてみたいと思って始めたんですが、思ったよりしっくりきて。これ一本で食べていくとなったらきっと大変なことはわかるんですけど、農業を経験してみて、自分がこの仕事で生きていく未来も想像できたんです。それが自分の中ではすごく意外なことでした。

 

そこから自分の可能性と言いますか、「私は、本当はどういう人間なんだろう」ということを考えるようになりました。実は自分のことを全然知らなかったのかもしれないと思うようになったんです。

 

── さまざまな仕事がある中で農業を選んだ理由は何でしたか。

 

福田さん:たぶん私、都会的なものがあまり得意ではなくて。小さい頃からお仕事をさせてもらっていたので、テレビ局があるような都心に行くことが多い一方で、作品のロケでは見渡す限り田園風景というような場所に行かせてもらう機会もありました。

 

都会と田舎の両方を早いうちから見させてもらっていたのはすごくいい経験で、とてもありがたかったなと思うのですが、田舎にいるとシンプルに体調が良かったり集中できたりするので、自然が多い場所が好きだし自分に合っているんだろうなと昔から思っていました。

 

福田麻由子さん
長野県白馬村で撮影したカジュアルな雰囲気の福田さん

── 農業のお仕事をきっかけに変わったことがあったそうですね。

 

福田さん:今、「生活」全般に興味があるんです。いつか自分で、自分の食べる野菜やお米を育てるということを本気でしてみたいと思っています。それだけではなく、これまで家や家具、洋服にもあまり興味がなくシンプルなものだけで生活してきたのですが、最近は「実は私、可愛いものが好きなんだ」ということに気がついて。食器や家具、洋服も自分が好きなものを集めてみたいと思うようになりました。

 

 

演技をしていた頃は、自分の好きなものや自分の正義みたいなものは置いておいて、本当の自分というものを出さないようにしていました。そのほうが仕事をする上では楽だと思っていました。

 

でも今は、演技の仕事で自分をいったん脇に置いて役と向き合うためにも、普段の生活では自分の好きなものに囲まれてバランスを取ったほうがいいんだろうなと思っています。30年弱生きていますけど、これまで実は自分のことあまり知らなかったなって。これからは、自分の好きなことをもっと知れていけたらいいなと思いますね。

 

PROFILE 福田麻由子さん

1994年東京都生まれ。子役として芸能界デビューし、ドラマ「女王の教室」「白夜行」「スカーレット」等に多数出演。映画「FLARA〜フレア〜」「グッドバイ」などで主演をつとめるほか、舞台「The Pride」にも出演。昨年末より芸能活動を一時休止中。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/福田麻由子