平昌五輪スピードスケート女子団体追い抜きとマススタート、2つの金メダルに輝き、日本女子史上初の五輪同一大会での二冠を成し遂げた高木菜那さん。引退後のインスタグラムが「美しい!」と話題になっています。(全5回中の4回)

オシャレな洋服もメイクもテンションが上がる

── 引退後のインスタグラムではたびたび、モード系の装いにヘアメイクを施した“イメチェン写真”を投稿されていますね。モデルさんのようで見入ってしまいます。

 

高木さん:え!?いやいやそんな。

 

── 元々、ファッションやメイクは好きだったのでしょうか?

 

高木さん:現役時代はトレーニング中やレース中は汗をかくのでずっとすっぴんでしたが、プライベートではメイクやおしゃれをすることは好きでした。私にとってはちょっとしたリフレッシュ方法になっていたんじゃないかと思います。でも、同世代の服が好きな子たちに比べたらブランドもよく知らないし、すごくこだわっているということではなかったと思います。

 

今はスタイリストさんにお願いしたりして、自分が知らなかったブランドの服を着せてもらえてすごく毎回楽しんでいる感じです。テンションが上がるので、オシャレな洋服を着るのも、メイクするのも好きですね。

 

個性的なアクセサリーも楽しんで

── スポーツ界ではこれまで女性アスリートがメイクやオシャレを楽しむことが批判される風潮がありました。“アスリートとメイク”に対して、菜那さんご自身はどのような考えを持っていますか?

 

高木さん:メイクをしようがしまいが、競技の成績ってあまり変わらないと思うんですよね。気持ちが上がって集中できるならメイクをするのも良いと思うし、私のように汗をかいてタオルやウェアにつくのが気になるタイプならメイクしないのも自由で、人それぞれだと思うんです。

 

オランダにはアイラインを描くのがチャームポイントの選手がいますが、それを描くからこそ、気持ちが上がった状態でレースに臨めているのかなと思います。実際とても強いですし、メイクをしているから弱いなんてことはないと思います。

 

競技中はノーメイクだったという高木さん

外からの意見で本来の目的を見失わないように

── 競技中はメイクをしていなかった菜那さん自身もなにか言われることはありましたか?

 

高木さん:いろいろ言われましたよ。メイクをしていなかったらしていなかったで、「もっと眉毛描いたほうがいいんじゃない?」とか。「老けて見えるからもっとメイクしたら?」と言われている選手もいました。

 

── しないならしないで、そうしたことも言われるのですね…。

 

高木さん:言いたい人には言わせておけばいいんじゃない?と思っていました。そこまで気にしていたらすごく疲れてしまいますし。そういう意見はあまり気にせずに、私は何のためにスポーツをしているのか、というところに目を向けるようにしていました。

 

私の場合は「レースで勝つ」のが大事で、汗で不快になるのでメイクはしていなかった。今はSNSなどでいろいろな声が聞こえてくることもありますが、何事も本来の目的を見失わないことが大事かなと思います。

 

PROFILE 高木菜那さん

1992年生まれ、北海道幕別町出身。7歳から兄の影響でスピードスケートを始めた。高校卒業後は実業団チームに所属、14年ソチ五輪で日本代表に初選出された。18年平昌五輪では、女子団体パシュートで妹・美帆らとオリンピックレコードを記録、新採用のマススタートと合わせて、日本女子史上初の五輪同一大会での2冠に輝いた。22年北京五輪では女子団体パシュートで銀メダルを獲得。同年4月に現役引退。現在はテレビやラジオに出演するほか、各地の講演会に登壇するなど多方面で活躍している。

 

取材・文/荘司結有 画像提供/高木菜那