「おかあさんといっしょ」時代「卒業するまでは恋をしない」と決意した上原りささん。卒業後に出演したTV番組で「31年間彼氏がいない」と発言したことも話題となりました。32歳になった現在の恋愛観を伺いました。(全4回中の3回)

おねえさん時代好きになりかけた人がいたけど

── 先日、TV番組で「31年間彼氏がいない」「今はときめかないから恋をしていない」と話されていましたが、上原さんはどんな人ならときめきますか?

 

上原さん:理想は、私に寄り添って理解してくれる人ですね。実は、「おかあさんといっしょ」のおねえさんだったとき、好きになりかけた人がいたんです。一番弱っていたときに助けてくれた人だったのですが、「おねえさんを卒業するまでは恋はしない」と決めて、好きになる気持ちに歯止めをかけました。

 

──「おかあさんといっしょ」の出演者には、恋愛禁止のルールがあると耳にしたことがあります。ルールを守るために気持ちを封じたのですか?

 

上原さん:番組として、「恋愛禁止」のルールがあるわけではないんです。世間では恋愛禁止と思われているが故に、出演者の恋愛が話題として取り上げられ、ネットにはその人自身を否定するような意見もあります。

 

それを見てしまったときに「今までたくさんの人たちに笑顔と元気を届けていた人が、恋愛をしたからってどうしてこんなことを言われなければいけないんだろう」と憤りと悲しみを感じました。

 

同時に「私も恋愛が公になったら、ツラい思いをするかもしれない」「仕事と恋のどちらが大切なんだろう」と考えたんです。その結果「おねえさんを卒業するまで恋愛しない」と自分に誓いました。

 

サラサラヘアが可愛い上原さん

今は20代で経験できなかった青春を満喫中

── 今は卒業されて4年経ちますが、「恋したい」とは思わないですか?

 

上原さん:「パント!」のおねえさんとして、20代のほとんどの時間を「おかあさんといっしょ」に捧げました。とくに就任後の2年間は仕事と大学の両立に追われて、友達と遊びに出かける時間もなかったほどです。

 

おねえさんを卒業して少し時間ができたとき、大学の同期が連絡をくれてやっと一緒にお出かけができるようになりました。卒業して4年経ちますが、今は20代で経験できなかった青春を取り戻している感覚です。友達との時間や、趣味の時間がすごく楽しいので、今のところ恋愛のほうに気持ちは向きません。

 

「おねえさん」を卒業し、自分の時間を楽しむ余裕が生まれた

── 今もお仕事でたくさんの出会いがあると思いますが、「この人素敵だな」と思うことはないですか?

 

上原さん:私、仕事のスイッチが入ると、仕事関係で出会う人には恋愛感情がいっさい湧かないんです。かつて「卒業まで恋しない!」と決めて仕事に取り組んでいたので、今でも「仕事=恋しない」という感覚が染みついているんだと思います。職場恋愛はまったく否定しないですが、私はしないですね。

 

「職場でときめかないなら、積極的に出会いを探すべき」とアドバイスをくれる友人もいますが、時間を割いて努力して、おつき合いできたとしても最終的に「こんな人だと思わなかった!」と後悔する可能性がある。だったら、今は焦りたくないなと思います。

みんながそれぞれの人生を楽しめればいい

── もしかしたら、うまくいっているカップルや夫婦にも「こんな人だと思わなかった」と思う部分は多少あるかもしれないですよ。

 

上原さん:私の家族はすごく仲が良いんですが、両親がお互いのことを「こんな人だと思ってなかったなぁ」と、冗談めかして話すこともあります。確かに、他人同士が一緒にいるんだから、「思ってたのと違う」と感じる部分が出てくるのは当然だと思うんです。

 

夫婦じゃなくても、「なんでそんな人好きなの?」と、周りから理解されない人もいますよね。でも、好き嫌いの感覚は人によって違うし、赤の他人がとやかく言えることでもありません。自分が「思っていたのと違う」と感じても、周りから「なんで好きなの?」と理解されなくても、当事者の2人が幸せなら「別にいいんじゃない」と思うんです。

 

そして、好き嫌いの感覚と同じように、大切にしたいことも人ぞれぞれ違って当たり前です。私は自分の感覚や価値観を人に押しつけることはしませんし、だから私にも「恋したほうがいい」という価値観を押しつけないでほしいなと思います。私としては、今は出会いのために時間を割くより、友人との時間や趣味の時間を大切にしたい。ただそれだけです。

 

仲のいい家族に囲まれすくすく育ったという幼少期の上原さん

── 上原さんにとって、今一番大切にしたいことが恋愛とは違うというだけですね。

 

上原さん:もちろん、「恋したい」とか「努力して出会いを探そう!」と考えている方のことも否定しません。そういう考え方や価値観があっていいと思うし、人生にはタイミングもありますよね。

 

私自身は、このまま結婚しない未来もあり得るし、この先「一緒に生きていきたい」と思える人に出会えたら、それも素敵なことだと思います。そして、誰かと生きていくことを選んだとしても、結婚や家族の形に囚われる必要もないと考えています。

 

いろいろな生き方や、家族の形があるなか、それぞれが自分の価値観を押しつけ合わずに、お互いに「そうなんだね」と受け入れられたら素敵ですね。みんなそれぞれの人生を、自分らしく楽しめたらいいなと思います。

 

PROFILE 上原りささん

1991年生まれ。洗足学園音楽大学卒業。大学3年生のころ、NHK「おかあさんといっしょ」の「パント!」のおねえさん(5代目身体表現のおねえさん)に就任、7年間務める。現在は、ミュージカルや子ども向けイベントへの出演のほか、2020年には「はみがきジョーズ」でCDデビューも。11月18日『あつりさとチョッピーの森』を市原市民会館大ホールで開催予定。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/上原りさ