わが家の中学生の娘は思春期真っ盛り。触れれば切れるようなガラスの10代女子にどう接したらいいか、悩みは尽きません。そんなとき、同居する義母がファインプレーを見せることがあります。
「睨み、ため息、心を閉ざす」思春期の娘
思春期の女子というのは、こうも扱いにくいものなのでしょうか。
上の息子が反抗期らしい反抗期がなかったせいもあり、私は今、中学生の娘への接し方に悩み抜いています。
子どもっぽくあどけない一面を見せたかと思えば、驚くほど気難しく機嫌が悪いときもしばしば。
ちょっと対応を間違えればギロリと睨まれ、ため息をつかれ…そうなると私も、仕事で疲れているときなどはつい、きつく問い詰めるような口調になってしまいます。
そんなとき、娘は、ピシャリと音が聞こえるように心を閉ざし、無口な貝になり、いっさいのコミュニケーションを拒否しはじめます。
こうなると、再び心を開いてくれるまで時間がかかります。些細なことでイライラを抑えられないのは思春期のホルモンバランスのせいなのだ、わかってはいつつも、親もまた人間。いつも聖人君子ではいられません。
そんなとき、義父母が横から口を出すことでさらに娘の機嫌が悪くなる…というのもよくあることなのですが、しかし、義母によるファインプレーが飛び出すこともあります。
「いや〜なんか恥ずかしい」と感じた義母の助言
それは、娘と私が険悪な雰囲気になっているときに義母がよく言う「最近ハグした?ハグしてみたら?」という助言。
いや〜なんか恥ずかしくないですか?もう娘も大きいし…と、口には出さずとも遠慮してしまう私ですが、娘は意外と乗り気だったりします(顔は機嫌の悪いときのまま、両手だけはしっかりこちらに差し出したりしている)。
照れながらも言われるがままにハグすると、ああ大きくなったなぁ、とか、素直にハグされに来るところはまだまだ子どもだなぁとか、しみじみと心が温かくなります。
もともと私は妙に照れ屋なところがあり、子どもが10代を過ぎて大きくなってからは、なかなか自分からスキンシップをすることが、特に人前では気恥ずかしいという気持ちがありました。
しかし、こうして義母に言われてハグをしてみると、子どもが何歳になったとしても、スキンシップは時には必要なんだなと実感します。
「ハグ」は子育て以外にも有効
義母に、やはり自分の息子たち(夫と義兄)にも、大きくなってからもハグしてたんですか?と聞くと、「恥ずかしくてなかなかできなかったわよ!だから今、あなたたちに勧めてるのよ」とのこと。
なるほど、当の義母も、もっと子どもと触れ合っておけばよかったと思っているうちの一人なのでした。
それなら今度は私から義父母と夫に、喧嘩したときはハグしてみたら?と勧めてみましょうか。
ハグで仲直りするようになってからというもの、娘の情緒も少し安定してきたような気もします。
思えば、以前私が介護施設で働いていたときも、手を触れ、目を合わせて話をすると、気難しい高齢の方でも次は笑顔で迎えてくれたりしたものです。
触れ合うことは心身の緊張を解きほぐすのに有効なんだな、とあらためて気づきました。
今後は義父母が歳を重ね、介助が必要になることも考えられます。
そんなとき、私や夫が義父母に触れる手が、義母に教えてもらったようになるべく温かく優しくありたい、と思う日々です。
この三世代同居コラムですが、今回の100話をもって最終話となります。元気な義父母との同居生活、良い面も悪い面もてんこ盛りでお届けしてきましたが、家族全員が元気なままでキリよく連載の幕を引くことができ、とても嬉しく思っています。
今までお読みいただき、本当にありがとうございました。
皆様とご家族が楽しい日々を過ごされますようお祈りしております。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ