産休・育休を経て3年ぶりにお笑いの舞台に復帰したぼる塾・酒寄希望さん。ライフステージが変わっても失われない、メンバーの仲のよさについて聞きました。(全4回中の4回)
私たちは絶対にお互いを嫌いにならないから
── 4人の絆の強さは羨ましく思えるほど素敵ですが、そういった繋がりを維持していくために普段から気をつけていることはありますか。
酒寄さん:私たちの場合は、「4人とも楽しい」という状態をすごく大切にしている気がします。「3人は楽しいけど1人は楽しくない」ではなくて、4人とも楽しい状態でいられるにはどうすればいいか。誰か1人だけつらい思いをしていないか、ということはみんな意識しつつ、お互いを支え合っているような気がします。
あとは、「相手の全部を理解しようとはしない」ことも4人の共通点かもしれません。理解にはどうしてもズレがあるので、「あなたはこうだよね」と理解したつもりになられても、実際はそうじゃないことのほうが多い。だから、理解はできなくてもいいから尊重する。理解よりも尊重のほうを大切にしています。
── そうしたチームワークは、いつ頃からできてきたのでしょう?
酒寄さん:多分、私が育休に入ったころからだと思います。私がひとりだけ違う立場になってしまって、3人に何か言いたいことがあってもうまく言えなかったり、お互いにどこまで踏み込んでいいかわからなくてすれ違った時期があったんですね。というか、おもに私が引け目から不安を溜め込んでしまったからなのですが。
でもそのあたりのすれ違いが解消されたときに、「思ったことは何でも言い合おう。私たちは絶対にお互いを嫌いにならないから」「些細なことが大事なんだから、何でも言い合おう」という話になって。そこからですね、些細なことも何でも共有できるようになったのは。
ぼる塾メンバーそれぞれへの愛
── 日頃のコミュニケーションがチームワークを向上させるのは、お笑いでも職場でも同じかもしれませんね。最後に、酒寄さんから見たぼる塾3人のそれぞれの魅力を教えてください。
酒寄さん:じゃあ、あんりちゃんから。彼女はぼる塾の「柱」なんです。とにかくそこにいるだけで安心感を与えてくれるし、自分のことにはクールなのに、誰よりも仲間思いだったりする。
あんりちゃんは自分が悪口を言われても気にしないんですが、他のメンバーの誰かがイヤな思いをするとめちゃくちゃ怒るんですよ。
先日の私の「裏方に徹しろ」発言にも、すごく冷静に怒りを表明していましたし、その前にも似たようなことがあったとき、「『酒寄さんをそんなふうに言うなんて許せない!』ってあんりが焼肉屋で大泣きしてたよ」という話を田辺さんから後で聞かされました(笑)。冷静なのに、すごく優しくて仲間思い。それがあんりちゃんの魅力だと思います。
── では、きりやはるかさんはいかがですか?
酒寄さん:はるちゃんは私と一番近い悩みを抱えている人なのかな、と思っています。もともとははるちゃんとあんりちゃんがコンビを組んでいたのですが、私が田辺さんの面白さを伝えたいと思っていたように、はるちゃんも「あんりは絶対に売れる人だから、こんな面白い人をやめさせられない」と思っていたタイプなんですね。「相方は面白いけど、自分はいらないかもしれない」と思っていたのが、私とはるちゃんの共通点。
そういう部分が似ていたからこそ、最初のうちはどう距離感をとっていいかわからなかったんです。でも「ぼる塾」を結成して、はるちゃんからサッと近寄ってきて、私が心の扉を開くまでずっとドンドンとしつこく叩き続けてくれた(笑)。そのおかげで仲良くなれたし、同じ悩みを持つ者同士だからこそ、共感できるところが多い唯一の仲間でもあります。
── 最後に、一番長いおつき合いの田辺さんは?
酒寄さん:田辺さんは私にとって、「大きくなってから出会ったドラえもん」かもしれません。どんなに忙しいときでも毎日連絡をくれるし、ただいてくれるだけで心強い。
「なんでこんなに私に優しくしてくれるの?」と以前に聞いてみたんですよ。そしたら「私はもともと性格がいいから」とさらっと返されて(笑)。相手に気をつかわせないでそばにいてくれる達人だなと思っています。
女友達って結婚や出産を経て、疎遠になったりすることもありますよね。でも田辺さんは、ずっと変わらずにそばにいてくれる。田辺さんといると、私は「私」になれるんです。お母さんとか妻とか、そういう肩書をはずして、ひとりの人間、個としての自分でいられる。私にとって田辺さんはそんな存在です。
PROFILE ぼる塾・酒寄希望さん
1988年、東京都出身。2019年に田辺智加、きりやはるか、あんりとの4人で結成したお笑いカルテット「ぼる塾」のリーダー。結成直後に産休・育休に入る。育休中にnoteで公開した「育休中に相方がめちゃくちゃ売れた」が大反響を呼び、現在は舞台の他、コラムの執筆等も行なう。著書に『酒寄さんのぼる塾日記』『酒寄さんのぼる塾生活』がある。
取材・文/阿部花恵 画像提供/酒寄希望