芸能界を生き抜く先輩アイドルのアドバイスで気づかされたことがある、と話す西村知美さん。一般の人には知りえない芸能界トークは同世代にも共感を呼ぶでしょう(全4回中の4回)。

 

西村知美
露天温泉につかる美しい西村さん。目の前は利根川の絶景!

早見優さんから言われた「忘れられない言葉」

── 14歳で芸能界入りし、現在52歳の西村さん。ブログを拝見すると、いろんな方と交流し、毎日忙しく過ごす様子が。アイドルとしてデビューした同世代の人とも仲がいいんですね。

 

西村さん:当時はだいたい600人くらいのアイドルが同時期にデビューしたそうで、一緒にお仕事していて結婚などを理由に仕事を辞めたけど、最近になって仕事に復帰する方がすごく多いんですよ。それで、同窓会みたいになって、いろんな人と会って話を聞いてますね。

 

昔から仲よしの人や、最近になって連絡をとりあう方もいます。私は86年デビューですが、「花の82年組」の早見優さん、松本伊代さん、テレビ番組『ハモネプ』で立花理佐ちゃん、島崎和歌子ちゃんたちとも交流があります。

 

── 元アイドルとどんな話をするのですか?人生の先輩たちから何かアドバイスなどはありましたか?

 

西村さん:『ハモネプ』の打ち上げで伊代さんや優さんが、当時40代の私に「50代は最高だよ!」っておっしゃいました。50代は子育てがひと段落して、身体も元気で、やりたいことができるから楽しいよって。

 

それから60代の先輩に言われるのは「60代はまわりがよく見えるようになるから、自分に必要な人がわかり、人間関係が整理できる」という話。50代は自分と向きあって好きなことや、やり残したことをやる時期。60代になると、本当に自分とって大切な方、大事に思ってくれている方だけが、必然と残ってくるそうです。仕事上やママ友のつきあいもひと段落する時期ですよね。

 

だから、50代って人間関係についてすごく考えるタイミングで、今後の人生にとって必要な人を探す時期でもあるんです。

 

── 西村さんにとって必要な人とは?

 

西村さん:いますごく大事にしているのは、自分のことを叱ってくれる人。この年齢やキャリアになると、みんな気をつかってきます。だから、注意してくれる人は年上・年下にかかわらずありがたい存在。

 

「こういうところがよくない」「それは誤解されるよ」と、私のことを思って意見してくれる方とは、ずっとつながっていきたいですね。

 

── あえて苦言をていしてくれる人。仕事でも貴重ですね。

 

西村さん:出演した番組や舞台に関して、「よかったよ」と言われることが多いです。でも、本当によかったなら、「この部分のこれがよかった」「テレビでのこの対応がよかった」と具体的に意見が出てくるはずです。「よかったよ」は何も印象に残らなかったわけで、そう言われると自分でしっかり反省します。

 

逆にきちんと指摘してくださる方は、私のほうでチケットを買って舞台を観にきてもらっています。本当は稽古のときから観てほしいくらい(笑)。

散歩で5時間!ミュールをはき倒して歩く

── 西村さんは人との関係を本当に大切にされていますね。ご家族との関係で大切にしていることは?

 

西村さん:言葉を大切にしています。家族だからこそ、ちゃんと話すこと。もちろんケンカもしますが…。ケンカしても、夫と娘は似ていてあっけらかんとしていますが、私だけけっこう引きずるタイプ(笑)。

 

わが家は、夜、散歩しながら話すことも多いです。上野から六本木、お台場から浜松町とか、数時間歩いちゃいます。しゃべったりアウトプットする仕事が多いので、街を歩いて新しい情報をインプットする時間も必要です。ひとりや家族と一緒だと5時間くらい、87年デビュー組の伊藤智恵理さんとも2時間くらい歩いちゃいます。

 

── 5時間!芸能人だとバレませんか?

 

西村さん:まったく気づかれませんよ。毎シーズン、数百円のミュールを買って履きつぶす感じで気軽に歩いてます。でも私、地図が読めない女なのですぐ迷子になっちゃって。しかたないから山手線の線路ぎわをひたすらと歩いたり(笑)。

 

── 娘さんは先日20歳になりましたが、どんな関係ですか?

 

西村さん:小さいころからスキンシップは大切にしようね、と。いまでも出かけるときはハグしてますよ。交通事故など、未来に何かが起きてその瞬間が最後になるかもしれませんから。

 

私自身は母とあまりスキンシップはしてこなかったんですよ。でも、年をとってちょっと助けるときに、手をさしのべて触るのがお互いすごく恥ずかしいなって感じて。これではゆくゆく介護できないと思いました。だから、私のほうが歩みよって「お母さん、ちょっとここ危ないから」と言って支えてあげたり、徐々に慣れていかないと違和感がありますね。

 

このような経緯があり、娘には最初から祖父母ともスキンシップをしっかりとるようにさせています。娘が祖父母宅から帰るときは必ずハグ。

 

西村知美と長女ササ
長女のササさんと原宿に行ってクレープを食べたときのスナップ

── 成長しても、スキンシップを重視されているのですか?

 

西村さん:何歳までハグしてくれるのかなぁと思って、手を広げて待ってみたら中学生のときまでやってくれて、高校生のときも面倒くさそうな顔をしてやってくれてました。ルーティンだからやってくれているのが、ありありとわかるんですけど(笑)。

 

私が「嫌じゃない?」って聞いたら、娘は「習慣だから別に気にならないよ」って。でも「嫌だったらいつでもやめていいんだよ。親が強制したら虐待になるから」と伝えました。

 

── 娘さんの意思を尊重して、一方的ではないところがいいですね。

 

西村さん:それぞれの家庭の考え方次第なのですが、人が見てどう思うか。まわりに気をつかわせたり、ちょっと申し訳ない部分もあるかもしれないので。たとえば、小学校高学年のころに外でハグしたら、ご近所の方に「もう大きくなったのに、仲いいね」って言われたので外ではやらないことにしました。

「夜遊びも飲酒も楽しみ」娘に気をつけてほしいこと

── 14歳から芸能界入りした西村さん。ご自身の経験を踏まえ、娘さんに伝えたいことはありますか?

 

西村さん:人間同士のつながりやマナーに関して、経験から「こういうときはこういうふうに言ってあげたほうがいいよ」「こんなやり方は失礼になるよ」など、なるべく話しています。

 

でも、娘には娘の考えがあるだろうし、「私にはできない」と言われたら自分の人生だから彼女のかたちでやればいいと思います。あとは、私が「命さえあればなんとかなる」と思っているから、「元気なだけで親孝行してくれている」「あなたの人生はあなただけのもの。でもあなたの命は皆のもの」かな。

 

── どこまで親が見守るべきか、親としての覚悟を問われます。子どもってだんだん離れていくもので、ちょっと寂しい気持ちもわきますが、大人同士の関係も楽しみですね。

 

西村さん:この間、娘と“夜遊び”をしたんですよ。散歩の途中にたまたまみつけた新しいショッピングモールのフードコートで、DJがかける音楽にあわせて、知らない人同士なのに場が一体となって盛り上がったんです。

 

コロナもあったので、娘にとってははじめての経験。娘は「ママ、音楽の力ってすごいね!一生忘れない」と喜び、親子の思い出のひとつになりました。“夜遊び”といっても、夜11時くらいまでで切りあげたかわいいものです(笑)。

 

西村知美とMY First Bae‘sのメンバー
事務所の後輩MY First Bae‘sのメンバーとともに

── もう20歳、人間関係や世界が広がります。

 

西村さん:私が若いときからたくさんの人とつながって、いろいろ教えてもらったので、娘にもそういう人間関係や場を持ってもらいたいです。飲み会での失敗もふくめていろんな経験を積んでほしい。

 

10代は親が見守る時期ですが、20歳からは自分で自分を守ることになります。20歳の誕生日には、生まれ年2003年のワインを父親と飲む約束をしていたので、家族の共通の思い出がふえました。

 

PROFILE 西村知美さん

1970年、山口県生まれ。1985年、第1回ミス・モモコグランプリ獲得をきっかけに芸能界へ。映画『ドン松五郎の生活』で主演でデビュー、日本レコード大賞新人賞獲得。映画やドラマ、バラエティ番組などに多数出演。2002年、「24時間テレビ」のチャリティランナーとして100キロ完走。55の資格や修了証・許可証を取得。家族は夫と長女。映画『SOMEDAYS』(2023年10月公開予定)に出演。

 

取材・文/岡本聡子 画像・写真提供/西村知美、株式会社芸映