14歳で芸能界入りした西村さんはいじめやあいさつを無視されてショックをうけましたが、発想の転換で乗りきります。示唆に富んだ言葉に考えさせられました(全4回中の3回)。

 

西村知美
デビュー当時の西村知美さんのあどけない姿「新鮮で面影もある!」

ブログへ誹謗中傷「ほこ先が私でよかった」

── 55の資格や修了書をもち、いまでも勉強を続け仕事も続ける西村さん。人生100年では短すぎるくらいの好奇心やパワーにあふれ、いつも笑顔のイメージです。

 

西村さん:もともとは超ネガティブなんです。資格をとりはじめたのも、自分に自信がなくて、いつ「芸能界を干されるかわからない」という不安にかられて始めたこと。でも、相田みつをさんの「しあわせはいつも自分のこころが決める」という言葉に出合って、考え方ひとつで人生は変わるんだと、と気づかされました。

 

あと、何度も観にいったミュージカル『アニー』の中で、アニーがホームレスと話す場面が忘れられません。ポケットには穴があき、お金も出ていき、寝る家もないから、段ボールと新聞紙で寝ている。でも「寝ながら新聞を読める!」って言うんです。すごくポジティブでしょう?

 

「なんで自分はこんな状態なんだろう」と思っても、息を吸って吐いていられるなら最低ではない。こんなふうに、私が考える最低ラインは命なんです。命さえあればいくらでも上がっていけます。

 

── もともとネガティブだとは、思いもよりませんでした。「考え方ひとつで変わる」は、素敵な考え方ですね。

 

西村さん:いつもそう思えるわけではないのですが、「考え方ひとつで変わる」と自分に言い聞かせています。以前、ブログを書いていたとき、誹謗中傷コメントがすごかったんです。でも考え方を変えれば、どういう形かわからないけど「誹謗中傷してくる人たちの役に立っている」のかもしれない。

 

人はイライラすると誰かにあたりたくなるんですよね。承認欲求や共感を求めて誹謗中傷を書くわけです。その対象として役立つ、他の人に矛先が向かわず、私に来てよかったって考えようって。こういう考え方はおかしいでしょうか?

 

西村知美
デビューシングル「夢色のメッセージ」発表の様子

── そこまでの境地にはなかなか至りづらいと思いますが、発想の転換ですね。その後、ブログはどうしたのですか?

 

西村さん:子どもを抱えながらでもあったので、結局、その大手ブログはやめて、本当に私に興味のある人だけが見てくれるブログに移って気が楽になりました。私の名前で検索して探さないとみられない仕組みのブログです。つらい経験のおかげで、人の気持ちがわかり、人間的にランクアップした、ひとつ大人になったと考えています。

あいさつを「無視されてもしかたない」芸能界

── 14歳から芸能界入りした西村さんですが、やはり芸能界は厳しい世界ですか?

 

西村さん:いじめられたりすると、すごくショックを受けましたね。人によっては、無視をされることもあります。相手が単に人見知りなのか、習慣として若い子はあいさつを返してもらえないのか…。

 

考えてもしかたないので、「無視されるのが当たり前、全員に無視されても当たり前」だと考えるようにしました。これを「無視されるからあいさつしなければいい」と考えるのは違いますよね。私はあいさつしたいから続けました。返事を期待しなければ、無視されてもショックじゃないですから。

 

── 考え方を変えてみて、いかがでしたか?

 

西村さん:なんと、あいさつしてくれる人がめちゃくちゃいい人に見えちゃう(笑)。9割くらいは相手があいさつを返してくれますから、自分の気持ちにプラスになります。

 

目を見て話してくださる方はもっとよく見えるし、渡哲也さんなんか大御所なのに、わざわざ車いすから立ち上がって「おはようございます」と言ってくださって、もう感動の嵐です。

落ち込んだときに聞くのは『はっぱ隊』の歌

── 自分の考え方ひとつで幸せな気持ちになれる、を実践しているんですね。

 

西村さん:本当に落ち込んだときは、南原清隆さんやビビるさん、ネプチューンさんの『はっぱ隊』(テレビ番組「笑う犬の冒険」)を何度も聞いて励まされています。

 

「9時間睡眠がとれたら、寝起きは元気いっぱい」「息を吸ったり息を吐けるだけでも、健康だ」という意味の歌詞です。上をみたらキリがないけど、命さえあればって。

 

── 命さえあればなんとかなるし、なんでもできる?

 

西村さん:できないことも多いかもしれませんが、できない原因を探したり、あきらめずにやれる方法を探しては?いろんな事情があり、たとえば年だから、子どもがいるから、夫に反対されるからとあきらめることもあるかもしれませんが、もったいないです。

 

いわゆる発想の転換ですね。私も、危ないからひとりでタイに行くのはダメだとまわりから大反対されましたが、安全に過ごすための工夫をしてまわりを説得しました。

 

── 西村さんと話をしていると前向きになれます。

 

西村さん:もともとネガティブだったり、つらい思いや失敗、いじめられた経験などもあって人生に幅が出てきたからかも。いろんなことをやっていますけど、90歳になったら「人生アドバイザー」のような職業が天職だと決めてるんです。

 

それまでの間にいろんな経験を積んで、説得力が増すようにしたい(笑)。失敗してもだまされても、その経験をもとに「こういうときは、こうしたほうがいいよ」ってアドバイスできるじゃないですか。

 

PROFILE 西村知美さん

1970年、山口県生まれ。1985年、第1回ミス・モモコグランプリ獲得をきっかけに芸能界へ。映画『ドン松五郎の生活』で主演でデビュー、日本レコード大賞新人賞獲得。映画やドラマ、バラエティ番組などに多数出演。2002年、「24時間テレビ」のチャリティランナーとして100キロ完走。55の資格や修了証・許可証を取得。家族は夫と長女。映画『SOMEDAYS』(2023年10月公開予定)に出演。

 

取材・文/岡本聡子 画像・写真提供/西村知美、株式会社芸映