トレードマークだった太い眉毛を細くして、ますますテレビ番組で活躍中の井上咲楽さん。定期的に出演するタレント・ぺえさんのYouTubeでは、テレビの姿とは異なるギャップを見せることも。2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』への出演も決まり、活躍の場を広げている仕事の話も聞きました。(全4回中の4回)

 

井上咲楽さん

私生活は平穏でありたい

── 井上さんのイメージが大きく変わったのは、ぺえさんのYouTube番組でした。自然体で、すっぴんの姿が見られて…。

 

井上さん:地方や地元でも「ぺえさんのYouTubeで見ました!」と声をかけていただくことが多く、印象が変わりましたとよく言われます。

 

ぺえさんといると、仕事でいろいろ迷ったときでも本来の自分の感覚に戻るんですよね。こんなに反響があると思わなくて、しかも大勢の方にプラスに受け取ってもらえていることが嬉しいです。

 

定期的に出演しているぺえさんのYouTubeチャンネルより

井上さん:最近、インスタグラムのリール(ショート動画)の編集にハマっていて、リールを始めるようになったのもこの出演がきっかけです。

 

ぺえさんの家でよくごはんを作らせてもらうのですが、レシピは公開していないんですね。私がロケ先で知った「なすボケ」という料理があって、それを作ったら年間100件ぐらい「レシピ教えてください」とDMが来てしまい(笑)。

 

数年前の動画なのにいまだに問い合わせがくるので、せっかくなら何かのかたちでレシピを出したいなと思い、リールで紹介しはじめました。パソコンは苦手で、教えてもらいながら編集をしていますが、覚えられなくて大変です。

 

井上咲楽さん自作のスパイスカレー
スパイスカレー作りも得意。最近は料理中にインスタライブ配信することも

── YouTubeに出演されるようになったきっかけは?

 

井上さん:ぺえさんとは10代のころに何度か共演経験があり、その数年後に仕事で再会したらロケバスで話が弾んで。YouTube出演のお誘いをいただきました。YouTubeってどうやって撮るんだろう…とドキドキしながら行ったら、普通に家でごはん食べながら会話しただけっていう(笑)。とても新鮮でしたね。

 

私はふだんの生活は別にキラキラしていなくていいし、ごく普通に穏やかに暮らしていたいんです。YouTubeでは私のそういう一面を見ていただけたのかもしれませんね。

 

でもテレビはテレビで、規模が大きくて楽しいです。最近はテレビを見なくなったとか言われることもありますが、やっぱりすごいなと思うことが多い世界。素朴な私生活とのギャップが、自分的にはいいバランスなんです。

 

井上咲楽さん

10年日記に書き綴ること

── 無人島生活やマラソンなど過酷なロケも多いのでは?テレビで拝見していると大変そうで心配になることも…。

 

井上さん:いえ、体を張る系の大胆な仕事は大好きなんですよ。自分の性格的には安全第一なところがあるので、無人島も100キロマラソンも、自分だけではなかなかできない。その経験を積めるのが嬉しくて。

 

テレビの仕事は毎日同じではないので、日々変わっていきます。その代わり、ふだんの日常は変わらない生活を送るのがいい。ルーティーン的なことが好きなので10年日記も書いています。

 

── 10年日記!どんなことを書いているんですか?

 

井上さん:人生は一期一会だと思っていて、その場で感じたことは自分しかわからない。時間が過ぎてしまうとそのとき何を考えていたかを忘れてしまうので、書き留めておきたくて。しんどいときもけっこう書いていますね。

 

書くことがないときは、朝何時に起きて、何の仕事をして…という記録を。1か月まるまる書かないときもあります。そういうときは、書かなくても自分でやっていけたんだなっていう感覚になる。書きたいときは、感情をどこかに発散したいのかもしれません。

 

井上咲楽さん
島に旅行することも好きな時間

── 続ける力がすごいです。料理や手芸、マラソンなど多趣味ですよね。子どものころからですか?

 

井上さん:多趣味とよく言われるんですけど、自分では飽き症だと思います。手芸でも編み物ばかり編んで、ちょっとしたら飽きちゃって次は刺繍をして…という感じに。

 

マラソンや料理も好きだけど、日常の中に組み込まれすぎて、特に趣味とは言えないんじゃないかと思ったり…。だからゲームとか漫画とか、ごはんを食べるのを忘れてしまうくらい趣味に没頭できるオタク気質な人がうらやましいです。

 

芸能人として憧れる趣味もあるのですが、なかなか踏み出せないことも。たぶん、誰に見られなくてもやり続けるだろうなと思えるのは、マラソンと手芸と料理ですね。これを趣味と言ってよいのでしょうか(笑)。

 

井上咲楽さんの手芸作品
手芸は子どものころから大好き

── 政治に関する番組にも出演されていますね。興味を持ったきっかけは?

 

井上さん:政治というか、選挙が好きです。選挙期間中、日本中が動いて燃え上がっていく人間ドラマを見ているのが楽しいんですよね。しかも約2週間という短い時間が、飽き性の私にはぴったりで。

 

いろんな党の人の演説を50か所ぐらい聴きに行くので、集中して終わったら疲れてもういいやってなっちゃうんです(笑)。でも、また次の選挙が始まると心が燃え上がる。その周期がちょうど私に合っているんです。

 

── 十分、多趣味でオタク気質な気がしますが(笑)。

 

井上さん:そうですか(笑)? 飽き性な性格はずっと悩みでした。でも、共演中の藤井隆さんに相談したら、「飽き性ってすごいことだよ。時代の流れがあるなかで、タレントという仕事はすごくぴったりなんじゃないかな」と言っていただいて。すごく救われた気がしました。

 

うちの家族はみんな何かに夢中になると、何時間も缶詰になるぐらい没頭している。私だけがそうじゃなくて、本当に悩んでいたんです。そういう人になりたくて。

 

飽き性だと自分には深みがない気がして、そんな自分がすごくイヤでした。自分の中身が薄く、軽くなっちゃうのが怖くて。だから、藤井さんにそういうふうに言ってもらったおかげで、最近は、飽き性な私にもいろんな切り口があるってことなのかなと思えるようになりました。

 

PROFILE 井上咲楽さん

1999年、栃木県生まれ。2015年、第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン特別賞でデビュー。現在は多数のバラエティ番組に出演し、テレビ朝日系の長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」では8代目アシスタントを務める。

 

取材・文/大野麻里 写真提供/井上咲楽