16歳でデビューした井上晴美さん。水泳の大会で優勝した子ども時代から、アイドル、俳優としても活躍していきます。(全4回中の1回)

苦手な水泳で九州ジュニア大会優勝

── 子どもの頃は、どんな子どもでしたか?

 

井上さん:活発な子どもでした。男の子とも外で仲良く遊んでいたし、足も速かったので運動会のリレーで活躍するタイプ。勉強は好きではなかったけれど、わからないところは友達に教えてもらい、夏休みの宿題は先に全部終わらせていたと思います。

 

実家は農家でした。自由に伸び伸びと過ごしました。

 

習い事は、水泳や公文、書道やピアノなど。当時から自分で時間を管理して通いました。ただ、腕時計を持っていなかったので、遊びで夢中になって習い事に遅れたこともありましたが、失敗しながら学んでいったと思います。

 

井上晴美
シャツとデニム姿が素敵な井上さん

── 小学生のときに水泳でご活躍されたと聞いています。水泳を始めたきっかけはなんでしたか?

 

井上さん:子どものころから体が弱かったんです。母が健康を考えて水泳を勧めてくれて、始めることに。姉妹が全員水泳をしていたということもあります。当時の私は水が怖く、水に対して拒否反応がありましたが、拒否権なしで入会させられました(笑)。

 

── 小学校5年生、6年生のときに九州ジュニア大会で優勝されたそうですが、相当努力されたのでしょうか?

 

井上さん:はじめは週に1回通っていましたが、センスがあったのでしょうか(笑)。クラスがどんどん進級していき、4年生のころには選手コースに進むことに。そこから生活のリズムが大きく変わりました。選手コースは練習開始時間が遅く、終わる時間も遅い。さらに筋トレや走りこみも合わせるとすべての練習が終わる時間が夜の9時くらいです。水泳教室に行く前に宿題などやるべきことをすべて終わらせたし、他の習いごとも辞めて、水泳1本で頑張りました。

 

水泳は本格的に頑張っていたのは中学2年生まで、中学3年生になってから高校受験も考慮して徐々に辞めていきました。

 

── お母さまが勧めてくれた水泳が結果的に向いていたのでしょうか。

 

井上さん:今、母になって思うことは、自分の興味があることは伸びなかった。でも、人から勧められたものが伸びたということです。ピアノは自分がやりたい!って言ってはじめたものの途中で挫折。一方、水泳は母に勧められて始めてみたら、思った以上に私に合っていたようです。自分の才能は自分だけではわからない。無理強いしない範囲で、親から子どもが向いていそうなものを提案すると、結果的に開花することもある。子どもたちの可能性をうまく後押ししていけたらいいと思っています。

撮影のたびに自分が知らなかった魅力を発見

井上晴美

── 中学卒業後は、芸能活動を始めるために熊本から上京されました。

 

井上さん:田舎から都会にきて、毎日緊張していましたね。当時はスマホもなかったですし、電車に乗っても目的地まで辿りつけるのが常に不安。手帳に挟めるサイズの時刻表と路線図がボロボロになるまで使ってました。

 

高校は定時制高校に進学。普段なかなか出会わないような職業の人たちといる時間は楽しかったです。 

 

── 16歳でデビュー。芸能界のお仕事をスタートしてどう感じましたか? 

 

井上さん:新人のころは、雑誌の撮影をするときも私が雑誌側の制作チームに入って撮影が進んだので、メイクさんやスタイリストさん、カメラマンさんなどいろいろな方との出会いが新鮮でした。毎回、今回はどんな方がチームに集まり、どういった作品に仕上がるのか。撮影のたびに新しい自分が発見できる楽しみもありましたね。撮影の数をこなしていくと、このカメラマンさんは綺麗に撮る人、可愛く撮る人、セクシーに撮る人だなってわかってくるんです。徐々に、「このコンセプトであれば、このチームとご一緒すると素敵になるかも」と、こちらから提案することもありました。 

 

── グラビアや水着のお仕事はいかがでしたか?

 

井上さん:清純な水着からスタートして、たまにハイレグのようなきわどい水着も用意されました。「足が長く見えるからいいよ」とかいろいろ声かけをしてもらうんですけど、そこは相談しながらでしたね(笑)。

 

── 撮り方、見せ方もありますよね。

 

井上さん:下品になりたくないって思ってました。自分が思う下品だから、人それぞれ違うと思いますよ。でも、一時期、男性がターゲットっていうだけで嫌になったこともあって、できたら女性の編集の方がいいなってリクエストした時期もありました。女性目線でカッコイイとか、セクシーな感じだといいかなって思ったんですよ。

 

でも、男性の心理を考えたらグラビアで女性にカッコよさは求めてないというか。女性がカッコいいって思うだけじゃ売れないから、やっぱり男性目線は必要だと思いますけど。

 

── 篠山紀信さんも撮影されていました。

 

井上さん:篠山紀信さん、すごくよかったです!撮られやすかった!篠山さん、すごく独特な雰囲気があるんですけど、構えて撮るっていうより遊びながら、喋りながら、寝転びながら、何々しながらって感じだからこちらも撮られていて楽しいんです。篠山さんも楽しんで撮るからこっちも楽しいし、汗だくになって撮ってくださって、私もやりきった感みたいなのもありました。

 

──  他にも、印象に残ったお仕事はありますか?

 

井上さん:俳優のお仕事は恋愛ドラマを観るのも好きだし、出演するのも好きでした。コメディも好きでしたが、同じシーンを繰り返し撮影していると、笑いに慣れてしまって、コメディのテンションを保つのはちょっと難しかったです。

 

印象に残っているドラマは『ナースのお仕事』や『お水の花道』『オンリー・ユー〜愛されて』など。当時は撮影スケジュールが過密していて、連ドラに入るとしばらく眠れなくなりました。3か月はプライベートなし。あらためて、あのころの体力ってすごいなと思いますね。

私が大事にしていること

── 仕事や人生を困難や葛藤を感じたとき、どう向き合いましたか?

 

井上さん:モデル・俳優業は単発でグッと集中して撮影して解散、の繰り返しですが、「仕事を継続する大変さ」はあると思います。でも、私自身は仕事に困難や葛藤を感じたことがあまりないんです。自分が好きなことを仕事にしているから、「イヤだ」という感情がないのかもしれません。自分が選んだ道を歩き続けたいですね。

 

── 仕事を続けるうえで、大事にしていること、軸としていることはなんですか?

 

井上さん:「出会い」と「チャンス」は大事にしたいと思っています。だから、スキンヘッドの写真にも迷わず挑戦しました。この先のお仕事も、どんなことにチャレンジできるのか楽しみです。

 

PROFILE 井上晴美さん

1974年生まれ。熊本県出身。1991年16歳で芸能界入り、ドラマ・映画・舞台など数多くの作品に出演。2005年に結婚し、現在は3児の母。家族との日常をインスタグラム(@harumi_inoue_)でも発信中。

 

取材・文/松永怜