50代のルー大柴さんは若い世代に受けて再ブレイク。始めたブログには女性を中心にルー語でコメントが寄せられることも。この先、ルー大柴はどこへ行く?(全4回中の3回)。

 

若い女性にウケた最新の「ルー語」を紹介!

売れて「いい加減になっていた」と気づいた50代

── 34歳でブレイク後、40代は低迷期を過ごしたルーさん。50歳を過ぎて新しいマネージャーと出会い、本気で変わろうと決意。どんなふうに意識が変わりました?

 

ルーさん:以前は、ちょっとタカビー(高飛車)なところもあって、仕事に対しても少しルーズだったんですよね、ルーズ大柴(笑)。それを前向きな姿勢にしなきゃと。

 

あんなに「売れたい」と願って売れて、もっとやるべきことがいっぱいあったはずなのに、いい加減になっちゃって、だんだん落ちてきたんじゃないかな。もっと人間的な幅を広げたり、新しいスキルを学んで、表現していかないといけなかったのに。

 

── 2回目のブレイクは本当に難しいですよね。

 

ルーさん:そう。でも、またブレイクしたい気持ちはマネージャーに伝えました。彼と二人三脚でやって、成功するかわからない“賭け”みたいなところはありましたが、負けるもんかって。50歳過ぎて作り直すなんて二度手間だけど、いままでのルー大柴じゃないスタイルを模索しました。

再ブレイク!ブログを始めたら若い女性から話題に

── 2006年からはじめたブログは、絵文字いっぱいのカラフルなルー語で日常が語られています。かわいい(笑)。これが2度目のブレイクにつながりました。

 

ルーさん:時代的にインターネット。「ブログやりませんか」ってマネージャーにすすめられたんですけど、私「アナログだから」と迷ってたら、「だからダメなんですよ、新しいことやんなきゃ!」って言われてはじめました。最初は「今日は誰とこんなことがあり、こんなことを考えました」と日記風に書いてたら、だんだん英語が入っちゃって。

 

そうしたらこのブログにファイヤーがついて、ルー大柴を知らなかった女子高生や女子大生が「こんな人いたんだ!」って感じで、若者たちの間で面白いと話題になりました。

 

── 2度目のブレイクでは、若い女性たちがルーさんを発見したんですね。1度目のブレイクのときとは違いましたか?

 

ルーさん:1度目の「あくが強い」ルー大柴のときは、おもに男性に受けてました。2度目は芸風自体が「くどい、押しが強い」からもう少しマイルドに変わり、若い女性に受けたんです。

 

私はその前の10年くらいは低迷期であまり表に出なかったから、私を知らない若いジェネレーションにファイヤーしたのは驚き。地方の番組や講演が増えましたね。

 

2007年に出版した『ルー炎上!恥かけ汗かけ涙しろ』のサイン会には、多数の報道陣やファンがつめかけた

── ブログのコメント欄には、ファンからのルー語を使ったコメントも多数よせられています。「バイト先で『藪からスティック』が流行ってます」、や、「マイメニーフレンズにレコメンドします」など、読者がルー語を使う様子も。

 

ルーさん:私らの若い時代にはファンとの直接のやりとりはあまりなかったんだけど、こうやってブログを通して自分を見てくれる人がいるんだ、とうれしかったです。

 

── 2007年には、歌手としてNHK「みんなのうた」の『MOTTAINAI~もったいない~』を歌いました。惜しくも紅白出場は逃しましたが、この歌でもルーさんのイメージが大きく変化したのでは?

 

ルーさん:マネージャーが企画してとってきてくれたんですが、「みんなのうた」なんてびっくり。何百もの候補の中から選ばれてラッキーでした。これをきっかけに、こどもたちにモノの大切さや環境問題を伝えたりと、自身でも活動しました。

「素を出せるように」マイペースで70代に向かう

── 2度のブレイクを経て、現在の心境は?

 

ルーさん:若いときは、売れるために演じてたというか、自分の気持ちをある程度ガードしてました。でも、2回目のブレイクでは、ブログはとくにそうだけど、気持ちを赤裸々にオープンして、みんなと一緒に楽しくやるっていうのが逆によかったんじゃないかな。

 

いまも全面的に開放しているわけではないけど、芸能人だからキャラを作ってではなく、もっと自然に。

 

── 気持ち的にも楽になりましたか?芸能人は注目を集める立場なので、ストレスを感じることが多いかと。

 

ルーさん:ムリはしてません。芸能人は、みんなに見られて愛を与える仕事だから、やっぱり疲れるときやストレスを感じることもあるんだろうけど、最近はもうマイペースでやっていこうと。ちょっと丸くなったのかな(笑)。

 

── 最後に、素のルーさんにとって、“ルー大柴”はどんな存在ですか?

 

ルーさん:この世に“ルー大柴”という人間がいたという作品を作っているようなものかな。みなさんに「こういう生き方もあるのか」と感じてもらえるよう、そんなふうに自分のライフをもっていきたいです。

 

── パワフルかつ、変化するルーさん。3度目のブレイクも夢じゃないかも。

 

ルーさん:3度目かぁ。いやーどうでしょう、来年古希ですからね。70歳でブレイクした人っていないんじゃない?わからないけどね(笑)。

 

PROFILE ルー大柴さん

1954年、東京都生まれ。高校卒業後、欧米を放浪。日本語と英語をトゥギャザーした話術を使う独特のキャラクターで活躍、役者としても舞台を中心に活動。2007年NHKみんなのうたに採用された『MOTTAINAI』をきっかけに、富士山麓の清掃や地域のゴミ拾いなど環境活動にも積極的に取り組む。2013年に遠州流茶道師範に。

 

取材・文/岡本聡子 画像・写真提供/ルー大柴、株式会社Carino