2011年、なでしこジャパンの優勝で女子サッカーが注目を集め、解説者として連日テレビに出ていた大竹七未さん。美人解説者と話題になるなか、本人の胸中は?(全4回中の3回)。

 

変わらない美しさ!いまや小学生の母親になった大竹さんと息子さんのツーショット

引退後は解説者になったけれど「仕事がなくて…」

── 1998年にプロ契約を結び、W杯で得点を決めるなどエースストライカーとして活躍した大竹さん。余力があるように思える、27歳の若さで引退しました。

 

大竹さん:自分でも早いとは思います。双子の妹の看病をきっかけに半年間サッカーから完全に離れた後、監督に「代表に戻す」と言われるまでコンディションを整えたのですが、気持ちが切れてしまいました。先に引退した妹が、楽しそうに過ごすのを見て「ふつうの女の子に戻りたい」と、思ってしまって。

 

── 引退後、女子サッカーを外側から盛り上げる立場に。

 

大竹さん:1999年のアメリカW杯に出場したとき、メディアの力を実感したので女子サッカーの「伝える側」になりたいと、声をかけていただいた事務所に所属しました。でも、女子サッカー中継や解説の場がそもそもなかったんです。

 

ピッチレポートなどもしてみたのですが、放送事故になりそうなほど、さんざんなできで…。結局、その後はいろんなところでサッカーを教えたりしていました。

W杯の優勝で美人解説者としてブレイクするが

── そこへ2011年7月、女子サッカー日本代表チーム「なでしこジャパン」が強豪国アメリカに勝って、W杯で優勝。日本はこの歴史的な偉業に沸き、大竹さんはサッカー解説者としてひっぱりだこ、60番組以上に出演したそうですね。

 

大竹さん:30時間以上ブッとおしでテレビに出ずっぱりで出演させていただき、マネジャーに「ギネスブックに申請しようか」と言われたくらい。しかも、放送中だけでなく、その前に入念な打ち合わせもありますから、相当働いた記憶があります。

 

当時、女子サッカーについて語れる人がほとんどいなかったんです。テレビの情報番組で、女子サッカーのプレーや選手の特徴について解説できる人を探していると言われ、声をかけてもらって出演したのがきっかけです。

 

2022-2023WEリーグの生中継で。テレビ神奈川のアナウンサーおふたりと試合前にパチリ

── 大竹さんをテレビで見ない日がないくらい、たくさん出演されていましたが、突然の変化をご自身はどう受け止めましたか?

 

大竹さん:ようやく女子サッカーを扱ってもらえる!みんなのよさを伝えたい!と必死だったので、まったく大変だとは感じませんでした。

 

いまは時代の変化もあり、女性らしさにとくに言及することはありませんが、当時は女子サッカー自体が知られてなかったので、ピッチを離れたらふつうの女性としてのこんな一面を持っています、と多角的に選手たちの魅力を伝えました。

 

── 大竹さんご自身も、美人解説者として有名になりましたね。

 

大竹さん:いまの感覚からすると時代錯誤と受け取られるかもしれませんが、私自身、サッカー選手でもかわいいものが好きなタイプ。当時は、メイクや衣装も気合をいれてメディアに出演していました。でも、そんなふうに扱われていたとはまったく気づかず…。

 

あるラジオ番組に出演したとき、「美人解説者」とメールをいただいて、「なにこれ?」って感じでした。その後ひさしぶりに電車に乗ったら、雑誌の中吊り広告に自分が掲載されているのを見て、「うわっ、どうしよう」とびっくりしました。

 

逆に、これまでの先輩方や代表選手たちが頑張った結果で、私が解説をできているのに、解説者の自分が注目を浴びて申し訳ない気持ちを感じたくらいです。

女子サッカーや選手の魅力を伝えるためにしたこと

── 大竹さんが、女子サッカー解説で伝えるポイントとは?

 

大竹さん:なでしこブームのとき、いくつかのテレビ局から「サッカー自体より、選手のパーソナルを伝えてほしい」と依頼されました。もちろん、テレビ局によって何にスポットをあてるか、スタイルは異なります。当時から女子サッカーを伝える際、テレビで望まれるポイントは、「視聴者は女子サッカーをあまり知らない前提。サッカー全体のシステムや試合運びも大切だけど、その選手を応援したいと思えること」。

 

私は、試合の見どころも伝えたいですね。たとえば、当時の学生の試合はパス3本もつながらないけれど、プロは違います。チームのレベルが異なれば、解説のポイントも異なるんです。そして、わかりやすい言葉で伝えることを意識しています。

 

女子サッカー元日本代表の大竹七未さん

── 解説者としては、今後どんなふうに歩みたいですか?

 

大竹さん:解説の仕事はいまもさせていただいていますが、なでしこジャパンのメンバーが引退して解説者に転身する方もいて、世代交代の時期かと思います。引退当時に自分が目指した、女子サッカーを広める役割はある程度できたんじゃないかなって。解説の仕事は好きですが、時代やキャリアに応じて、自分の立場や役割は変わっていくものだと考えています。

 

PROFILE 大竹七未さん

サッカー解説者・指導者。全日本選手権4連覇、日本女子リーグ3連覇など、フォワードとして活躍。Lリーグ(現WEリーグ)では最速で100得点を達成。日本代表のエースとして、五輪やW杯など、国際Aマッチに46試合に出場して30得点。2015年長男を出産。2022年、株式会社ティアラ・7を設立し、日焼け止め商品「N SHOOT」の開発や販売をてがける。

 

取材・文/岡本聡子 画像提供/大竹七未