不妊治療を経て3人の子どもを出産した東尾理子さん。2011年に不妊治療を公表しましたが、2023年になった今でも、大きな声では言いにくいような雰囲気も感じると言います。(全5回の4回)

実は私も不妊治療をしています

── 妊娠中の人たちに向けたオンラインコミュニティ「妊活研究会」を主催されています。活動されてみていかがでしたか?

 

東尾さん:私も不妊治療を経験しましたが、改めて気づくことがたくさんありました。昔ほどではないかもしれませんが、結婚すると「子どもは何人欲しいの」とか、「子どもはまだ?」といった会話もあるかと思います。でも、フラットに話をしているようでとてもデリケートな話。聞いている方は悪意がないかもしれませんが、聞かれた人の気持ちが不快にならないよう、あらためて配慮が必要だなと思いました。

 

── 東尾さんは不妊治療でお子さんを3人出産されましたが、不妊治療を始めた当初は、世間には公表されていなかったそうですね。

 

東尾さん:私が不妊治療を始めた2010年頃は、「不妊治療=不健康」というイメージがあったように思います。そのため不妊治療を始めた当初は公表していませんでした。

 

石田純一さんとすみれさん、子どもたちとお誕生日会での一枚

── なぜ、2011年にブログで公表しようと思ったのでしょうか?

 

東尾さん:きっかけのひとつとして、芸能レポーターの方から「お子さんはまだですか?」と聞かれることがたびたびあったんです。最初は「まだです」と答えていたものの、だんだんと嘘をつきたくないと思うようになっていきました。また、不妊治療は赤ちゃんを授かるために病院に行っているので、ネガティブにとらえる必要はないと思ったんです。

 

── 世間の反応はいかがでしたか?

 

東尾さん:ブログのコメントや、面識のある人たちから「実は、私も治療をしています」という声をたくさんいただきました。その後、ブログで「不妊治療についてお茶会をやりましょう」と呼びかけたところ、その日のうちに100人近くの人が集まり、反響の大きさに驚きました。事務所にもたくさんの問い合わせがきて、大変なことになりました。当時は、不妊治療について話をする機会も聞く機会も少なく、みんな情報を求めていたのかもしれません。

不妊治療を言いづらい雰囲気も

講演会で話をする東尾理子さん

── 世間では、2023年になった今もどこか不妊治療について言いにくい雰囲気がある気がしますが、なぜだと思いますか?

 

東尾さん:お仕事をしている人は、会社に言いづらいかもしれません。不妊治療のために会社を休んだり、妊娠したら産休、育休に入るかもしれないし、人によって不妊治療と伝えずに会社を退職する人もいます。

 

もうひとつは、自然妊娠で子どもを授かりたいと思う人も多いでしょう。わざわざ病院で授かったことを公にして言いたくない気持ちもあるかと思います。不妊治療をすることで人工的だと思われるのをいやがる人もいる。男性不妊の人も自分が原因と伝えられてショックを受ける人もいるでしょう。

 

── 不妊治療に関して後ろめたい感じがあるんですかね。

 

東尾さん:決して明るい感じじゃないですよね。不妊ではなく妊娠治療って言えばいいのにと、私はいつも思いますね。

 

── 東尾さんが「妊活研究会」の活動を始めてもうすぐ2年になります。東尾さんが妊活をしていたころと比べて、変わったことはありますか?

 

東尾さん:不妊治療についていろんな人が声をかけてくれたり関心を持ってくれる人が増えてきました。また、不妊治療の助成金なども始まり、治療への次の一歩を踏み出しやすくなってきていると思います。治療も進化しています。

 

反面、病院に通えばすぐに妊娠できると思っていたものの、いざ蓋を開けてみるとなかなかうまくいかないと感じている人は、まだまだたくさんいると思います。病院選びだったり、治療法だったり、不妊治療での悩みは13年たった今も変わらないと思います。それもあって、自分の経験を活かしながら赤ちゃんを授かりたい人のサポートをできたらいいなと思って活動しています。

 

PROFILE 東尾理子さん

福岡県出身。2009年12月、俳優・石田純一氏と結婚。現在3人の子どもの母として、育児と仕事に奮闘。日々の暮らしを綴ったブログ「Route-R」が人気。

 

取材・文/間野由利子