「ヒロシです」のネタでブレイクを遂げた後、紆余曲折を経て、ソロキャンプで再ブレイクした芸人のヒロシさん。「結婚願望はない」と断言しますが、昨年末に保護猫を家族として迎え入れ、生活に変化があったようです。(全4回中の4回)

 

「ひとりが結局ラク」と話すヒロシさんの哀愁が漂う背中

「ひと目見た瞬間連れて帰ると決めた」保護猫あっちゃん

── 昨年末に、保護猫を迎えたそうですね。出会いのきっかけはなんだったのでしょうか?

 

ヒロシさん:もともと「犬か猫を飼いたい」という気持ちはずっとあったんです。でも、もし自分がいなくなったり、先に死んだりしたら誰が面倒を見るんだろうと思うと、なかなか決断できなくて、2年くらいためらっていました。知り合いが、福岡で猫の保護活動をしているので、何度か猫の写真が送られてきていたのですが、「可愛いなあ」と心惹かれつつ、ちゃんと責任を負えるのか自信が持てず、スルーしていたんです。

 

そんなあるとき、たまたま熊本で仕事があって、「福岡なら見に行けるな」と立ち寄ってみたら…もうダメでしたね。ひと目見た瞬間、連れて帰ることを決めました。人懐っこくて、すごく可愛いんですよ。「あっちゃん」と名づけました。

 

ヒロシさんがひと目ぼれしたという保護猫・あっちゃん

── YouTubeでも、猫へのデレデレっぷりが微笑ましいです。「あっちゃん」を迎えてから、生活は変わりましたか?

 

ヒロシさん:変わりましたね。家に帰っても一人じゃないんですから。最初は、「なにか変なモノをかじらないだろうか」とか「もしも外に出ちゃって、車に轢かれたら…」と、先回りして考えすぎ、心配ばかりしていましたが、うちの子は賢いから悪さをしないんですよ。

 

ただ、一度だけ、うちに来たばかりのころ、家のなかで姿が見えないことがあって、かなり焦りました。「このまま見つからなかったらどうしよう」と、顔面蒼白で心臓はバクバク。夢中で名前を呼びながら、家じゅうを探し回り、冷蔵庫の裏を見たり、引き出しを開けまくったり。ようやく見つけたときはホッとして、思わず力が抜けちゃいましたね。

 

── 子猫のころは、予測がつかないことをするので心配がつきないですよね。

 

ヒロシさん:今ではずいぶん落ち着きましたね。でも、いろんな偶然やめぐり合わせでこの子が今ここにいるんだなと思うと、なんだか不思議な気がするし、胸がいっぱいになります。

 

もしも保護活動の人たちに見つけてもらえなかったら、そのまま死んでいたかもしれない。そう考えると、野良猫は厳しい現実と紙一重なんだなとか、世の中にはそういう猫がいっぱいいるんだろうなあと、複雑でせつない気持ちになりますね。

 

── わが家にも3匹、保護猫施設から来た子がいますが、「無事に生きぬいてうちに来てくれてありがとう!」という気持ちになりますよね。

 

ヒロシさん:びっくりしたのは、いろんな方から「保護猫を引き取ってくれてありがとうございます」というメッセージがたくさん来たこと。正直、僕としては、そんなたいそうな使命感があったわけではなく、たまたま縁があって可愛いから迎えただけだったので、皆さんの反応や関心の高さに驚きました。

 

保護猫の活動って、すごく大変だって聞きます。僕も、いずれは何かの力になりたいなと思ったりしますが、命がかかっていることだから、生半可な気持ちで関わるわけにはいかないし、現実的にはなかなか難しい。保護猫の活動をしている人はすごいなと尊敬します。

親の介護問題「正直まだ直視できていません」

── 50代は、親の介護問題が現実味を帯びてくる世代でもあります。実際に、何か準備をしていたりしますか?

 

ヒロシさん:頭をよぎりはしますけど、正直、どうしていいかわからないというのが本音です。幸い両親ともまだ元気ですが、本当は、いろいろ考えて話し合ったり、準備しておくべきなんでしょうね。ただ、そういう話はなかなか切り出しにくくて…。

お笑い芸人のヒロシさんと実父
若き日のお父さんとの貴重なツーショット

── たしかに、切り出しにくい話題ではありますよね。

 

ヒロシさん:もちろん、いずれはそういうときが来るんでしょうけれど、親が死ぬとか、病気になるとか想像するだけでつらくなってしまうし、やっぱり怖い。だから、なるべく考えないようにしているのかもしれない。

 

でも、そもそも人間って何のために生まれてくるんでしょうねえ。まあ、答えなんてないんでしょうけれど…。ただ、こういう話をメディアですると、どこで調べたのか、スピリチュアルな勧誘がたくさんきたりするんですよ。別に、救いを求めているわけじゃないんだけどな。

 

── 迷える子羊ではない、と。ちなみに、自分の老後については考えたりしますか?

 

ヒロシさん:まだ実感はないですね。自分としては、年齢うんぬんよりも、体の自由がきかなくなってからが老後かなと思っています。独身なので、そのときが来たら、老人ホームや介護施設にお世話になるんでしょうね。でも、あんまりコミュニケーションをとりたくないから、みんなの集まる場所に行ったり、レクリエーションには参加しないで、部屋にこもって食事だけ受け取るつもりです。

 

「人とはつかず離れずの今の生き方が心地いい」と話す

── せっかくだから参加しましょうよ…。

 

ヒロシさん:いや、集団やグループ行動が苦手だから、きっとムリでしょう。みんなと一緒に楽しく童謡を歌える自信もないし、できれば積み木や折り紙もやりたくない。

 

老後のことを考えると、生前の僕のばあちゃんの姿を思い出すんです。ばあちゃんは、自分で小屋を建てたり車庫を作ったりと、とにかく元気な人で。よく小さな僕を自転車のカゴに乗せて、市役所の食堂に連れていってくれたんですよ。

 

── 自転車のカゴに!? パワフルですね。

 

ヒロシさん:そうなんです。でも、そんなパワフルだったばあちゃんが、だんだん元気がなくなって、最後には僕のことも忘れちゃった。施設に会いにいっても、いつも積み木を積んでいて、全然こっちを見てくれなくて。トンカチ片手に小屋を建てていた、あのばあちゃんが、ボーっとして積み木を積んでいる姿は、子どもながらにショックでしたし、せつない気持ちになったのを覚えています。

 

だからもし、自分が老人ホームに入ったら、もっと僕好みの遊びをしたり、自由な感じで好きに過ごせたらいいなあと思って。

 

── いっそのこと、自分で理想の老人ホームを作る、というのはどうでしょう?

 

ヒロシさん:それも面白そうですよね。実は、ちょっと考えたこともあります。芸人仲間で入れるような老人ホームがあればいいなと。

 

積み木や折り紙は禁止。庭でちょっとしたキャンプができたり、それぞれの趣味が楽しめる場所があって、ギャンブルも自由にできる。しかも、キャバクラとか、ちょっぴりセクシーなお店もあったりして、料金も割引がきいてリーズナブルで…。最近では、パチスロや麻雀、バカラとか、ギャンブルができる老人ホームもあると聞きますしね。そういう場所なら、刺激があっていいかもしれないな。金への執着から、ちょっとだけ長生きするかもしれない。

 

── 欲にまみれてますね…。

 

ヒロシさん:でも、まだまだやりたいことがたくさんあるので、それを全部やってから考えようかな。だから、終活を考えるのは、当分先のことになるでしょうね。

 

PROFILE ヒロシさん

1972年生まれ。熊本県出身。2004年頃「ヒロシです」のネタでブレイク。2015年「ヒロシちゃんねる」を開設し、YouTuberとしての活動も開始。BS-TBS『ヒロシのぼっちキャンプSeason7』(毎週水曜よる10:00)、熊本朝日放送『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』(毎週金曜よる0:15)などのレギュラーがある。6月30日には自身のアウトドアブランド『NO.164』より『 NO.164 野外洋袴』(やがいようばかま)〜ヒロシ特別モデル〜を発売!

 

取材・文/西尾英子 写真提供/ヒロシ