暑い季節、6人家族のわが家で不足しがちなものといえば、冷たい麦茶にアイスクリーム、そして何より「氷」です。今回は、わが家の製氷係を請け負う義父の奮闘?を綴ります。
氷の具合に気を揉む義父
わが家に限った話ではないと思うのですが、夏の暑い盛りになるととにかく冷凍室の氷が不足します。
わが家の氷は冷蔵庫の自動製氷機能で作っているのですが、夏以外の季節はいつもほぼ満タンの製氷ブースが、気温の上昇につれてどんどん底をつきがちになっていくのです。当然といえば当然です。家族が揃って冷たい飲み物を飲むので、氷の消費量が単純に何倍にもなるのですから。氷がなければ次に製氷機から出てくるのを待つか、我慢してそのまま飲めばいいのです。
しかし、わが家の製氷大臣(今、名づけました)である義父は、じっとしていられません。しきりに冷蔵庫の氷用の水タンクの残量を確認し、氷のでき上がり具合を見ては「まだできてない!遅い!前はもっと早く氷ができていたのに!」と気を揉むことしきりです。
氷がないならないで我慢すればいいのですから…そもそも冷蔵庫にあるものなら結構ちゃんと冷えてますし…となだめるのですが、義父の気持ちはおさまりません。
冷蔵庫が壊れた?
そもそもがせっかちで几帳面な性格の義父のこと。自分の思ったようなペースで物事が進まないとストレスが溜まって仕方ないのです。
ひとりでストレスを溜める分にはいいのですが(いいのか?)、周りの家族に当たり散らすようになるから困りものです。
「まだできない!2時間も前に水を入れたのに!冷蔵庫が壊れてるんじゃない?」(そりゃ、氷ができるまではもっと時間がかかるでしょうに…)
「さっきできたはずの氷がもうない!」(暑いから誰かしら使ってしまうんですよ…というかしょっちゅう冷蔵庫の氷用ブースを開けるから温度が上がって余計に時間がかかるのでは…)
この調子で毎日毎日愚痴られては、訴えられる側の家族はたまりません。
わが家の冷蔵庫には「製氷優先モード」という機能がついているのですが、それは1回分の氷が完成すると解除されてしまうのです。
それを何度説明しても、毎年忘れた頃に「製氷モードが勝手に解除される!壊れてる!」と言い立てる義父。
一時期は本気で、義父の愚痴対策のためだけに家庭用の製氷専用機を買おうかと思い悩んだほどでした。
しかし、どう考えても製氷専用機が必要なのは夏のごく暑い時期のみ。そのためだけに…というか、別に他の家族はさほど困っていないのに義父の精神安定のためだけに、製品代と電気代を負担するのか…置き場所もないし…と購入に踏みきれないでいます。
節約には反するけれど心は安らか
そんなわけでここ数年は、妥協案として、暑い季節はロックアイスを冷凍室に常備しておくことにしました。
正直言って、家計にとっては痛手です。しかも氷があると思うとどんどん使ってしまうのが人間のサガというもの。6人家族が遠慮なく使う氷の消費量はとんでもないのです。さらに、そんな消費の激しいロックアイスを常備するとなると、買い物の負担もまた辛いものです。
諸々の事情を勘案した結果、わが家では、業務用スーパーで売っているロックアイスの一番大きい袋(5kg)を買ってきて、夏場は冷凍室の半分ほどのスペースをロックアイスに占拠させるという非常に効率の悪い方法に落ち着きました。
おかげでこのところは氷が切れることも、それによって義父が愚痴ることもなくなり、節約には反するものの、とりあえずの平穏が訪れています。
そういう私自身、製氷機の氷があるときでも、つい、より美味しくて見た目の良いロックアイスを使ってアイスコーヒーを淹れてしまったりします。
夏はやっぱりこれですね…飲みすぎによるお腹の冷えにだけは気をつけて、この夏も美味しく冷たいものを、心安らかに味わいたいと思っています。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ