所属する事務所の取締役を務めながらアナウンサーとしての仕事をこなす望月理恵さん。就任の経緯や後輩たちからの「ランチの誘いが絶えない」という人気ぶりを伺いました。(全3回中の2回)
表の仕事もしながら裏の仕事も
── 2年前からご自身が所属する事務所、セント・フォースの取締役を務められています。
望月さん:数年ほど前から、社長に「中の仕事もしない?」とは言われていたんです。自分の仕事以外にも、「この会社とコラボするのはどうかな」というような提案をよくしていてそれが叶っていたので。「でも、これ普通に裏方の仕事だから、こっち側に入ってもいいよね」って。
── 具体的には取締役としてどんな仕事をされているんでしょう。
望月さん:企業との打ち合わせに参加したり、所属の女の子たちの話を受けて、会社としてここを改善していこうと提案したりしています。でも、取締役になったからといって特にプラスで何かしているというのはなくて、今までしてきたことをそのまましている感じです。
── アイデアマンなんですね。
望月さん:そういうのがすごく好きなんです。でも正直、提案して本当に実現するのは10個中、2個くらいですけどね(笑)。
生花店とコラボして、音声で花言葉を伝えるのはどうですか、とか。女の子たちが花を生ける動画も撮って。イメージを広げながらつくり上げていくのが大好きです。
── 出演も続けながら、自然な流れで会社の仕事もされている、と。
望月さん:でも正直、私にできることはないと思っていました。その頃は、仕事を辞めようか悩んでいた時期でもあったんです。もし裏の仕事をするなら表の仕事を辞めようと。でも、社長は「表も続けるからいいんだよ」って。
私、ランチおばさんなんですけど(笑)。ランチに誘われて会社の女の子たちとよく行っていて。きっと60人くらいと行っていると思います。それを社長が知っていて「みんなの話を聞いてくれてありがとね」って。
今までは聞いているだけだったけど、取締役になってそれを会社に反映させてほしいと言われました。みんなの意見を伝えるだけでいいからって。取締役としてこうあるべき!というわけではなく、今まで通りでいいということだったので「じゃあ…」と引き受けて。決して「自分からなりたいです」というわけではなかったですよ。
「先週も10人とランチを」
── ランチへのお誘いが多いそうですね。
望月さん:事務所に入ったばかりの子だといろいろと質問されるんです。私はもう入ってかれこれ26年になるので。ここはどういう事務所でどういうふうにやっていくのがいいのかと聞かれますが、一番はお金の話をよく聞かれるんですけどね(笑)。先週も10人くらいとランチしてます。
── 10人ですか!?
望月さん:何回ランチ食べんねんって話ですよね(笑)。でも1回で5人とかが集まることもあるので。自分から誘うことはないんですけど。でも「誘ってもらってます」っていうのも、なんか違いますよね。
── 1週間7日ですけど、と突っ込もうとしました。かなりの人気者ですね!
望月さん:真面目な子が多いんです。事務所のこともそうですし、30代、40代、50代と年齢を重ねてどう仕事をしていくのか。うちはフリーアナウンサーの事務所ですが、みんなやっぱりフリーって不安なんです。どんな気持ちで仕事をしていたか教えてほしいと言われることが多いです。女性特有かもしれないのですが年齢で悩む子が多いですね。
── アナウンサーは時代によって求められている要素が変わっているようにも感じます。
望月さん:私が入ったときは16人くらいしかいなかったのですが、当時は何をしたいと聞かれたら、リポーターや、司会をしたいという人が多かったんです。でも今は、バラエティに出たいとかカレンダーや写真集を出したいとか、きちんと話す仕事もしつつそういったことをしたいという子もいます。
それに、フリーアナウンサーって何だろうって。私も「タレントでしょ」と言われることもありました。今、話す仕事はお笑いの方や、声優、スポーツ選手などもされていますよね。もう、カテゴリーがなくなってきているんじゃないかなと感じています。個人の時代だなと。自分たちのポジションに誰が来るかわからないので、ライバルは増えましたよね。
── 素人の方もSNSを通じて自分から発信することもできます。
望月さん:今の子たちはカメラに慣れているので、緊張しないのがすごいなと思います。私は20代の生放送なんてドキドキだったのに、撮られることや話すことに慣れているのはすごいなと思いますね。
── どんな事務所でありたいと思いますか。
望月さん:したい仕事はたくさんあったとしても、喋ることときちんと伝えることがベースであって、そこから好きなことをしてほしいなと思います。きっと本人の心の持ちようも違ってくると思います。
原稿をきちんと読めるとか、食レポができるとか、自分に得意なことがあるほうが、どんな仕事をしても安定すると思います。あとは喋ることを中心に考えたときに、自分の言葉を持っておいたほうがいいよということも話しますね。
たとえば、映画を見て「面白かった」だけではなく、なんで面白いのかを考える。連想ゲームのようにずっと言葉を探していくのも楽しいよって。
── ランチのお誘いが絶えない理由がわかりました(笑)。
望月さん:あははは、ありがとうございます。どの仕事にも通じることだと思いますが、自分の強みを持つだけで変わるんじゃないかなと思っています。
PROFILE 望月理恵さん
1972年生まれ、兵庫県出身。「日立 世界・ふしぎ発見!」ミステリーハンターでデビューし、ラジオ番組のほかテレビでは「土曜LIVEワッツ!?ニッポン」、「ズームイン!!サタデー」等でレギュラーとして活躍。2021年6月よりセント・フォース取締役に就任。
取材・文/内橋明日香 写真提供/望月理恵