デビュー早々にお仕事をすぐにいただいたと語る友近さん。一方でイヤな空気を感じたこともあるといいます。 (全4回中の2回)

変な奴がおる!

── 26歳でNSCに入りましたが、当時意識していたことはありますか?

 

友近さん:バイトをする時間があるならネタ作りたいと思っていたので、お金を貯めて大阪に行きました。毎日ひたすらネタを作ってました。学校で毎日披露するくらいのつもりでやってましたね。

 

── ネタ出しの頻度は決まっていたんですか?

 

友近さん:特に決まりもなくて自由でした。当日、ネタをしたい人がクラスのホワイトボードに自分の名前を書くんですけど。1か月に1回とか、2か月に1回名前を書く人もいれば、まったくネタを作らないで見ているだけの人もいます。1クラス30人くらいのなかで、毎回ネタを出す人が5、6人くらいだったんですけど、みんなプレッシャーやったと思いますよ。「またあの人ネタやるんだ!」ってわかるから。

 

なかには、ネタを見ても「絶対笑わんぞ…!」って思ってた人もいたと思いますよ。やっぱりみんなライバルやし、プライドもあっただろうし。私は26歳で入ったこともあって、歳が結構みんなと離れてましたし、ピンっていうのも珍しかったんで「どうやってネタ作ってるの?」って聞いてきてくれたり、すぐみんなと仲良くなりました。そこは素直に嬉しかったですね。

 

社員のなかでも「なんか変なやつおる!」と噂になっていたらしく、先輩の芸人さんがネタを見にくることもありました。

 

baseネタでのオーディション

── 当時から頭角を現していたようですが、ネタ作りに行き詰まったり、途中で芸人の道を諦めたくなるようなことも、特になかったでしょうか…?

 

友近さん:やめようと思ったことはまったくないですね。前しか見てなかったので。とにかく早く、私が今まで面白いと思ってきた人たちと仕事がしたい。その人たちの目に触れるような舞台に立ちたいっていうことだけを考えてネタを作ってました。

この人に面白いって思われたい

── NSCを卒業すると、デビュー1年目から活躍されました。

 

友近さん:はっきり言って飛び級に近いものはあったと思います。もちろんオーディションが受からないとか、うまくペースに乗れない日もありましたが、早い段階でテレビにも出させてもらいましたね。

 

── 何かきっかけがあったのでしょうか。

 

友近さん:やっぱりバッファロー吾郎さんとの出会いですね。ある日、バッファローさんの前でネタをやる機会があって、竹井みどりさんという、Vシネマのミナミの帝王に出ている女優さんのモノマネをしたら、バッファローさんがメチャクチャ笑ってくれたんです。「そこのモノマネするやつ初めて見た!」って。主役の竹内力さんじゃなく竹井みどりさんをチョイスしたのがよかったみたいで(笑)。そこからバッファローさんが私を先輩方の仲間に入れてくださり、ライブ出演させてくださったんです。

 

── 元々バッファローさんのこともテレビでよく見ていたとか。

 

友近さん:この人に面白い…!って思われたら最高やろうなって。バッファローさんとはたぶん気が合うし、価値観とかくだらないことも共感できるだろうなって会う前から勝手に思ってました。元々、嗅覚みたいなのもあって、バッファローさん以外でもこの人に出会ったら面白がってくれるかも、などと思ってました。

 

── ただ、早くに売れたことで、周りから嫉妬されるようなことはありましたか?

 

友近さん:あんまり感じてはなかったですね…、ハッキリあんたキライやわとか。あんたなんやねん!って言うてくる人はいないですけど、何となく空気で感じることはありました。私も新人の頃からやりたいこと、やりたくないことはっきりしてるタイプだったんで、頑固なヤツって思われることはあったと思います。

 

でも、私のなかではあのときバッファローさんが笑ってくれて。私が面白いと思っていた人が私のことも面白いって言ってくれた。たった一個のモノマネで私を引っ張ってくれたことで、自信がついたというか、答え合わせができたんです。だから、ネタがうけなくてもバッファローさんが笑ってくれると思ったら気にならなかったですね。だからといってお客さんを無視してるわけではなくて、笑いの価値観は人によって違いますからここのお客様や、芸人、スタッフさんとは合わなかったんやなと思ってやってきました。

 

あと、私が面白いって思ってる芸人さんは、誰かに嫉妬するとか誰が早く売れたとか、売れないとかそんな次元の話はしないですね。面白いことしている人が勝ち!!それがすべてです。

 

MCバッファロー吾郎さんにて、劇場オーディション

── バッファローさんとの出会いは大きかったのですね。

 

友近さん:本当にそう思います。1人の理解者を見つけることってすごく大事やなって思いますね。デビューして20年以上経ちますが、今でもバッファローさんへの感謝は強いですし、ネタに対するこだわりも変わってないです。頑固だと思われても、自分がどこに向かっているのか。何を大切にしたいのか。自分の軸はブラさずにやってこられたと思っています。

 

PROFILE 友近さん

愛媛県出身。2000年デビュー。お笑い芸人として活動しながら、女優として舞台やドラマ、映画にも多数出演。2023年6月に明治座、7月から博多座で3度目となる水谷千重子50周年記念公演が決定。

 

取材・文/松永怜