ストリートピアノで、アニソンやJ-POPにとどまらないジャンルを弾きこなすけいちゃん。公開中の映画『美男ペコパンと悪魔』では主題歌を担当。ママたちにも人気の“ヒミツ”をイヤミなく語ってくれました。
年上女性の心をくすぐる“何か”
── ストリートピアノの演奏では、何歳ぐらいのファンが多いですか?
けいちゃん:30、40代くらいの子連れのママさんが多いですね。「かわい~」と言ってもらえます(笑)。子どもたちからは「かっこい~」という声が多いですね。
── 30〜40代女性からの人気が高い理由はなぜでしょうか。
けいちゃん:ピアノというコンテンツがその世代の人たちにウケているのと、僕にお姉さま心をくすぐる“何か”があるからだと思います。
── 昔から年上の女性にモテたのですか?
けいちゃん:そうですね(笑)。大学1年のときに、髪を染めてきただけなのに「キャー」「染めてるー」と騒がれました。音大で男子が少ないこともあってか、ちやほやされてきましたね。
今までないものを引き出せた
── 新曲の『シンフォニア』は『レ・ミゼラブル』のヴィクトル・ユーゴー原作の映画の主題歌ということで、どう意識して作曲しましたか?
けいちゃん:映画が、愛や愛のために闘うことをテーマにしているので、愛のイメージや疾走感を意識しながら、アイデアはポンポン浮かんできました。曲作りに苦労はありませんでしたが、今回の曲はボーカルが入っているので、歌のレコーディングを何テイクも行ったのは、大変といえば大変でしたね。
── 映画のための書き下ろしということで、やりやすさ、やりにくさはありましたか?
けいちゃん:今回のようなテーマに沿う曲作りは初めてでしたが、やりづらさというのはありませんでした。むしろ、今まで引き出せなかったものを、引き出せたのではないかと思います。
ひたすら練習をしていました
── けいちゃんがピアノを始めたきっかけを教えてください。
けいちゃん:小さいころからピアノのおもちゃで遊んでいたので、母親の勧めで3歳からピアノを始めました。最初の発表会の曲は「たこたこあがれ」の『たこの歌』だったそうです。
成長するに従って、ピアノがうまくなっていくことに喜びを感じて、ひたすら弾いていました。練習が大好きというわけではありませんでしたが、うまくなりたい、発表会やコンクールで上位をとりたいという気持ちから、ひたすら練習していました。家族も1日中、僕のピアノを聴いてくれていました(笑)。
── ピアノをやめようと思ったことや挫折はありましたか?
けいちゃん:やめたいと思ったことはありませんね。コンクールで上位をとれなかったことはありますが、挫折というよりは、もっとうまくなりたいというバネにしてきました。
── ストリートピアノを始めたきっかけは?
けいちゃん:高校の修学旅行でロンドンに行ったときに、駅にピアノが置いてあったので、友達に勧められ弾いてみたら、すごく盛り上がりました。コンクールでの拍手だけではない、歓声を浴びたのがすごく気持ちがよく、今までにないものとして記憶に残りました。
大学時代はすっかり忘れていて
── 大学に入って本格的にストリートでの活動を始めたのですか?
けいちゃん:いいえ。大学時代はそのことをすっかり忘れて、バンド活動でピアノを弾いていました。当時、日本にはストリートピアノがあまりないようだったので、記憶からなくなっていましたね。
その後、YouTubeでストリートピアノの演奏を見かけて、日本にもあることを知り、当時の記憶が思い出され、ストリートで弾くことになりました。
── ストリートピアノの魅力はどういうものですか?
けいちゃん:学校の音楽室の延長だと思っています。休み時間中で、演奏を聴いている人もいれば聞き流している人もいるような、ラフで自由な空間だと思っています。
── ストリートピアノで今まで印象に残っていることは?
けいちゃん:(東京都庁にある)都庁ピアノですね。外国人観光客も多くて、歓声が大きくて気持ちいいんですよね。だから、いずれイタリアのストリートピアノで演奏したいと思っています。芸術を愛するイタリア人だったら、盛り上がってくれるのではと思っています。
初めての作曲は4歳
──『シンフォニア』は、けいちゃんが作詞作曲を担当していますが、昔から曲作りもしていたのですか?
けいちゃん:初めての作曲は4歳のときの『正真正銘の日曜日』という曲です(笑)。
── 4歳とは早熟ですね!それから量産が始まったのですか?
けいちゃん:いいえ。実は高校を卒業するまでは2曲しか作っていなくて、後の1曲は中学のときに書いたピアノのソロ曲で、練習ばかりでした。
8時間練習しても疲れない
── これからの目標や夢があれば教えてください。
けいちゃん:もちろんステージを大きくしていって、より多くの人に僕の演奏を聴いてほしいというのはありますが、明確な目標は作らないで、無邪気に演奏していけたらなと思っています。
今は6月11日のワンマンライブの練習をしているのですが、1日に8時間以上弾いても疲れない感覚です。お腹が空いたときとトイレに行きたくなるとき以外は、無限に弾いていられるような状態で、どんどん上手になっていくことが楽しいですね。
── 最後に映画『美男ペコパンと悪魔』と主題歌『シンフォニア』の注目ポイントを教えてください。
けいちゃん:今回の映画をみて、ダークだけど希望があふれる曲にしたいと思いました。
シンフォニアというタイトルの意味ですが、バッハの作品に『シンフォニア』という3つの声部からなる曲があります。
なので、映画の主人公たちがいる世界、主人公たちが読んでいる小説の世界、そして映画をみる僕たちの世界の3つが交錯してひとつの物語になればという思いを込めました。曲中に実際にバッハが作った『シンフォニア』の旋律も散りばめられています。それらを探しながら楽しんでいただければと思います!
●映画『美男ペコパンと悪魔』 シネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国で公開中。監督:松田圭太、出演:阿久津 仁愛、下尾みう 他、主題歌:『シンフォニア』(けいちゃん) 原作:ヴィクトル=マリー・ユゴー
PROFILE けいちゃん
フリースタイルピアニスト。2019年から本格的に音楽活動を開始。’21年『殻落箱(ガララバコ)』でCDデビュー。’22年にセカンドアルバム『聴十戯画』を。6月2日に映画『美男ペコパンと悪魔』の主題歌『シンフォニア』を配信リリース。11日に「Club eX」でワンマンライブ。TBS系朝の情報番組『THE TIME,』にレギュラー出演中。
取材・文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/けいちゃん