髪の毛の悩みは人それぞれ。直毛、多毛、薄毛、癖毛、白髪などなど…世代によっても髪質によっても、数えきれないくらいの悩みがありますよね。わが家の80代義母と40代の私の髪の毛事情をお送りします。
美容師もお手上げの癖毛
「あなた、パーマかけてないのにそんなにボリュームが出るの?いいわねぇ!」義母にこう言われた私は面食らいました。それまで、自分の髪の毛を人から羨ましがられたことなど一度もなかったからです。
私の髪の毛は、それはもう始末に負えないほどボワンと広がる癖毛。美容師さんにも「髪の癖には生かせるのと生かせないのがあって、お客様のは生かせない癖です」と匙を投げられるほどです。
ずっとコンプレックスで縮毛矯正をかけていたのですが、当然ながら根本から生えてくるのはクルクルの癖毛です。さらに、ヘアカラーを楽しみたいと思っても、ただでさえ縮毛矯正でダメージが蓄積した毛髪には負荷がかかりすぎて、希望しているような軽い色味にはできないのです。
そしてアラフォーとなり白髪も目立ち始め、白髪染めをするようになったのですが、やはり根本の白髪が気になります。縮毛と白髪に追われるような日々が続いていました。
そんな日々にフラストレーションが溜まり、「もういい、私、生まれたままの髪質で生きていく!長く伸ばしてまとめ髪にすれば広がることもないし、ヘアカラーも白髪染めもやめて、白髪をハイライトがわりにして軽い色にする!」と、ついに縮毛矯正と白髪染めを辞めることを決意し、はや数年。ずっと残っていた不自然に真っすぐな部分の髪の毛もようやく全て切り落とし、希望通りの髪色にもできるようになった私は、しばらくはとりあえず満足していました。
肩上ボブにしてみたけれど
かたや、義母はここ20年ほど、自然なグレイヘアを貫いています。きれいなストレートの髪質のところを、ショートカットにして軽くパーマをかけ、上品なマダム風の髪型です。歳を重ねてグレイより白い部分が多くなってきてはいますが、元々肌の色が白い義母によく似合っています。
昔から、髪にあれこれ手間をかけてきた私にとって、義母の自然なスタイルは憧れでもありました。義母のように白髪のほうが多くなったら、私も同じようにグレイヘアにするのに…でも私みたいな縮毛だったらあんまり綺麗には見えないかな…などと思っていました。
そうしてしばらくは過ごしていたのですが、最近の私は、どうもまとめ髪に飽きてきました。
肩上くらいのボブにしてみたい、それも縮毛矯正なしで、がっつりスタイリング剤の力を借りれば、生まれ持った髪のウェーブを活かして何とかいい感じにできるんじゃないか、という野望が生まれたのです。
こうして思いきって十数年ぶりに短く髪を切った私ですが、やはり美容師さんにも匙を投げられた癖毛は一筋縄ではいきません。
朝のうちはいい感じのウェーブになっていても、夕方になると富士山のようなフォルムにどんどん広がっていきます。スタイリング剤を持ち歩いたり、ヘアクリップでハーフアップにしたりと、苦心してつきあっています。
コンプレックス、義母にとっては
やっぱり髪を切ったのは失敗だったかな、と弱気になり始めた頃、義母から言われたのが冒頭の言葉でした。
ずっとコンプレックスだった広がる髪のボリューム感ですが、義母にとっては「羨ましい」らしいのです!これには心底驚きました。
確かに、義母世代の女性たちの髪の悩みといえば、髪が少なくなったり、コシがなくなりペタンとして、ボリュームが出ないことでしょう。
義母もそれが悩みでずっとパーマをかけているんだな、とそのとき、やっと気づきました。なるほど、この癖毛は年齢を重ねるほどアドバンテージになるかもしれない…!
最近の義母は、私の明るめの髪の色を見て「私も染めようかしら、好きな色にできるんでしょう?」などと言い出しました。元の髪色が白いのですからどんな色でも染め放題ですよ!赤でも青でもピンクでも!とお勧めすると、さすがにそれはちょっと…でも少し冒険してもいいかもしれないわね、とのこと。
これからは嫁姑二人で、それぞれの髪の悩みとつきあいながら、持って生まれた髪を楽しみたいと思っています。
思いがけず未来への希望を提示してくれた義母に、今はとても感謝しています。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ