大人も子どももライフジャケットを

── 子どもが流されてしまった際に、周囲の大人が助けようと水に飛び込むニュースも目にします。

 

河川財団 菅原さん:水難救助行動中の約15%で助けようとした方が事故にあう「二次災害」が発生し、その多くが死亡や行方不明になっています。大人であっても川には流れや深さがあるので、安全に救助するのは非常にレベルが高い行為になってきます。

 

まずは声をかけて子どもを落ち着かせ、下流側の安全な場所を伝えることです。次に、浮き輪などを投げる。これも届けばいいのですが川の流れがあるなかではなかなか難しいです。スローロープという水に浮くロープを腰につけておいて、瞬時に投げる手法もありますが、こちらも技量が必要です。

 

まずは助ける側の大人もライフジャケットをつけること。ライフジャケットをつけていないと飛び込んだ大人も事故にあうケースが見られます。

 

── 川で遊ぶ際の注意点を教えてください。

 

河川財団 菅原さん:まずは川をよく観察して、遊ばせる前に川の構造物が近くになく、ゆるやかな流れの場所を探すことが大事です。また、子どもより大人が上流にいると流されたときに助けられないので、大人は必ず子どもより下流側にいるようにしてください。

 

大人もライフジャケットをつけるのは大げさなように思われるかもしれませんが、毎年これだけの事故が起きていますので、大人も子どもも川の近くに行く際はライフジャケットをつけることを徹底してもらえればと思っています。

 

ライフジャケットをつけることで活動の幅や遊べる範囲も広がります。生き物を探したり川の観察をしたりするなど、安全を確保したうえで楽しさも増えます。複数人で安全管理ができれば、大人も一緒に子どもと川遊びを楽しめることができます。

 

── 洋服のように細かなサイズがないのですが、子どものライフジャケットをどう選んだら良いのでしょう。

 

河川財団 菅原さん:身長よりも体重で選ぶことやフィット感があることが重要です。固定式のライフジャケットには大きく3タイプあってそれぞれ浮力が異なるのですが、主に体重15キロ以下の小さいお子さん向けのもの、15キロ〜40キロの子ども向けのもの、それよりも体重があるお子さんは大人用でいいと思います。

ライフジャケットとヘルメット
ライフジャケットや水抜きの穴があるヘルメットは体にピッタリ合ったものを

着用する際は、体にフィットさせることが大切です。ブカブカでライフジャケットから体が抜けてしまっては意味がありません。子ども用のものは股下ベルトがついているものがあるので、それをしっかりつけて頂けたらと思います。

 

頭を守るための水用のヘルメットもあるのですが、これは水抜き用の穴があるのが特徴です。水抜きの穴がないと川の流れにさらされ、水中で何かに引っかかった場合に水圧で首に大きな負担がかかります。ぴったりとフィット感があって水抜き用の穴があるヘルメットでしたら自転車と共有のものでもいいと思います。

 

── 子どもと離れないように川でハーネスをつけているのを見ました。

 

河川財団 菅原さん:それはとてもリスクが高くなります。川では流れがあるので、たとえば水中に倒木などがあって引っかかったり、絡まったりして身動きが取れなくなってしまった場合、流速が2m/秒になると160kg以上の力が水平方向からの水圧として全身にかかり、人間の力では脱出不可能になります。

 

ロープやハーネスなどで連結していた場合に、水中内の何かに絡まってしまうと危険な状況になりますので、連結はさせない、もしくは連結する場合でもクイックリリースハーネスと呼ばれるような簡単に外せる構造のものにしてください。

 

── 一歩間違えると危険性もありますが、川は子どもにとって学びが多い場所でもあります。

 

河川財団 菅原さん:川は日本全国どこにでもあって身近な場所ですし、流れがあることによって楽しさや多様な環境が生まれています。水中や陸上を含めた活用もでき、教育的な効果も高いと思います。

 

ただ、自然ですので流れや深みがあるという特性からのリスクもありますし、陸上と違って息ができずに致命的な状況になることもあります。川の特性やリスクをしっかり子どもたちに伝えたうえで、大人も子どももライフジャケットを装備して安全に楽しんでいただければと思います。


取材・文/内橋明日香 出典/河川財団「水辺の安全ハンドブック」 Illustration/山下航