自分が作る商品は「100%の確信を持てたら販売する」と話す、ダレノガレ明美さん。テレビでは見られない社長としての顔は、真摯で思いのこもったものでした。
「10円でも安くしたいから」工場で直談判
── 2017年の起業当初はアパレル、その後はパックなどスキンケア商品を開発し、メイクアップ商品もプロデュースしていますね。
ダレノガレさん:アパレルのときはこだわりすぎて、自分自身がキャパオーバーに。購入された方の反応は良かったので、継続できずに残念でした。
現在のスキンケア商品もこだわって作っています。スタッフが「これでいいのでは?」と言っても、私が100%確信できないと販売しません。私のこだわりで販売開始を遅らせたこともあります。成分、テクスチャー、価格、どれも譲れません。
── 立ち上げたスキンケアブランド「CAROME.Skin(カロミースキン)」で品質以外にもマーケティングなどでこころがけていることは?
ダレノガレさん:高くて良いものは他にもありますが、私に共感してくれる人たちが買いやすい価格を目指しています。
「CAROME.Skin」のパックは、5枚で3960円と決して高いものではありません。でも、時給850円の高校生が母親にプレゼントしたいと思っても、5時間働かないと買えません。それだけの思いをしっかり受けとめる商品を作らないと。韓国で開発・製造していますが、工場での価格交渉も私が現地で行っています。多くの人たちに買ってほしいから、10円でも原価が安くなればって。
「これだけの量を必ず売りきるから、原価を下げてほしい」とシビアに交渉します。あんまり安くしてくれっていうものだから、私が行くと嫌がられますけど(笑)。「ここは市場じゃないんだぞ!」と、怒鳴られたことも。最近は、原料や賃金が上がって、なおさら難しい部分がありますね。商品を多くの人に使ってほしいから、店舗を持たずホームページだけで販売する、広告にお金をかけない、など低予算で販売する努力は欠かせません。
買ってくれた人の意見はすべて目を通す
── 高校時代、バイトをしまくったダレノガレさんならではの工夫です。顧客の反応はどうですか?
ダレノガレさん:「CAROME.Skin」に寄せられる顧客の声は私が全部目を通して、DMにもできる限り返信しています。男の子から相談を受けたこともありますよ。「彼女がニキビに悩んでいるから買ってあげたい」って。娘さんがお母さんにプレゼントしたという連絡も。使用前後の写真を送ってくださる方もいます。そうしたお客様からの声は許可を得て、SNSで紹介しています。
── 口コミほど頼りになるものはないですよね。なるべくお金をかけず良いものを届けたい気持ちが伝わってきます。
ダレノガレさん:嬉しいことに、リピート率は8割以上に。業界平均が5~6割なのでありがたいです。
人が多いのは苦手「つい先回りして考えちゃう」
── 高校の自習時間に「女社長になりたい」と、ノートに人生設計を書きこんだと聞きましたが、想像どおりになっていますか?
ダレノガレさん:想像以上です!こんなに多くのお客さんに支持してもらえるなんて。ただ、予想よりもスタッフは少なめですね。高校のときの想像では、まわりにもっとたくさん人がいてワイワイ働いてる感じでした。実際は人件費を下げるために、外部委託している業務も多いんです。
── 大人数でワイワイすることを目指していたのでしょうか?
ダレノガレさん:いえ、人が多いのは苦手で(笑)。高校時代に半年くらい女の子の集団からいじめにあったことがあって、集団はあんまり。つい先まわりして考えちゃって、“信頼するスタッフに辞められたらどうしよう”と、考えちゃうタイプです。
自分の目の届く範囲で、等身大の自分でやっていくキャパが快適だと思います。だから、スキンケアやコスメで成功したからといって次々プロデュースする訳ではありません。「なんでもやる子」だと思われたくないし、性格的にそうじゃない。いまは自分が作った商品をもっと多くの人に使ってもらえるよう広げたり、本当に作りたいと思ったものや自信が持てるものだけに限定しています。
── ご自分の特性を心得てらっしゃいますね。現在のダレノガレさんのビジネスには、高校時代のバイトで培ったスキルや考え方が随所に活きているのですね。
ダレノガレさん:本当にそう思います。いま自分の会社で撮影をするときも、撮影内容の構築をして、みんなのお弁当や飲み物も買い出ししながら、モデルもやる。「雑用」だなんて思わないし、自分の「役割」であり、やりたくてやっています。昔から裏方のほうが好きななので(笑)。
PROFILE ダレノガレ明美さん
ブラジル人と日本人のハーフの父と、イタリア人の母を持つ三世。2012年5月にモデルデビュー。テレビ番組では、読売テレビ「ダウンタウンDX」等数々のテレビ番組に出演。イベントやプロデュース業をはじめ、さまざまな分野で活躍中。2017年に起業し、CAROME. Skin(カロミースキン)を経営。
取材・文/岡本聡子 写真提供/ダレノガレ明美