羽野晶紀さんのインスタにたびたび登場する和泉元彌さん
羽野さんのインスタにたびたび登場する和泉さん

和泉元彌さん(48)と結婚してから、20年以上が過ぎた羽野晶紀さん(54)。「専業主婦」を経験したことで、家族や自分の仕事にもよい影響をもたらしたようです。 

狂言を言い訳にしない

── 二十歳になった采明(あやめ)さんと18歳の弟・元聖(もときよ)さんは、狂言のお稽古に励んでいますか?

 

羽野さん:長女は大学生で、講義が終わって夕方からは狂言の稽古をして、中学の部活から始めた和太鼓も続けているので、忙しくしています。狂言をしていることを言い訳にしたくないようで、勉強も部活も頑張ってきましたね。弟もそうですが、ごく普通に学生生活をエンジョイしつつ稽古にも打ち込んでいます。

 

私は子どもたちに、悔いの残らないようにしなさいと言っています。両親が芸能界の仕事をしているわりには、ふたりともあまり興味がないみたいですね。お父さんも狂言をしながら芸能界の仕事をやっていますが、すべて父と同じようにとはいかないでしょう。私たち夫婦は、狂言を大切に思うのと同じように、子どもたちの気持ちも大切に思っています。

 

家族4人での羽野晶紀さん(2017年)
家族4人で(2017年)

テストの点数は責めない

── 大切な家業と学校の勉強との両立はどうしてきましたか?

 

羽野さん:テストや受験前だから稽古を休むということはしないので、私はそのテストの点数を責めたことはありません。弟には稽古の合間に、この単語くらいは覚えたらと言っていたことはありますが、お姉ちゃんはひとりで頑張っていましたね。サボって悪い結果になるのはよくないですが、一生懸命の結果であれば仕方がないことだと思っています。

 

── お子さんたちは、幼少のころからの厳しい稽古をイヤになることはありませんか?

 

羽野さん:どうでしょうね。鬼がつくほど厳しい稽古ですが、幼いころから生活の一部になっているので、それがルーティンになっているようです。

 

さらには、主人が狂言の申し子というほど、狂言に対する深い愛があることを知っているので、それを否定する気にはならないと思います。

 

子どもたちもお父さんの好きなことを汚さないように、支え合いながらやっているようにみえます。お父さんも、狂言の稽古以外の場では和やかなので、バランスはとれているかもしれません。

 

家族4人で遊びに行くこともある羽野晶紀さん
家族4人で遊びに行くことも

一般の家庭と同じように

── そこに羽野さんはどう関わり、サポートしていますか?

 

羽野さん:私は狂言については素人で何もわかりませんので、見学のみです。みんなが狂言に集中できるように、そうでないときは一般の家庭と同じよう健康的に過ごせるように、料理を作ったり送迎をしたりしてきました。後は、家でおかしなことを言って笑わせて、風通しをよくしているつもりです(笑)。

 

── まさに専業主婦だったのですね?

 

羽野さん:そうです。今まで一度もベビーシッターさんや家政婦さんにお願いしたことはありませんでした。それらのサポートは高額でもありますから。ただ、母親が働くためには、誰かのサポートが必要ですよね。

 

現代は結婚した女性も、男性と同じように働いていいですよという時代なので、ある意味、大変だと思います。それぞれ家庭の事情はあると思いますが、特に小さなお子さんがいる女性の働き方については「柔軟」な社会になってほしいですね。

 

主婦時代にできたママ友たちとは今でもつき合いがあり、助け合い、それぞれの子どもたちの成長を見守っているので、とても意味のある時期だったと思います。

自分の子どもがいない卒業式で号泣

── お子さんたちが小学校時代、元彌さんはPTA活動に熱心だったそうですね?

 

羽野さん:小・中学高、高校でも学校の役員を務めていました。職業柄、挨拶がうまいので、行事や式典にはよく出席していました。小学校のころは毎朝、学校の校門で生徒たちを出迎えていたので、先生だと間違われたこともありました(笑)。自分の子どもがいない卒業式に参列して、号泣していたこともあったそうです。

 

── そこまで熱心だった理由は何だったのでしょうか?

 

羽野さん:主人は、縁があり関わった人を好きになるようです。学校での公演も多いので、ゆかりを感じていたこともあると思いますし、さまざまな職業についている親御さんたちと交流できる楽しさもあったと思います。

 

おかげで学校のPTAなどは私の負担が減り、ありがたかったです。読み聞かせのボランティアは2人で参加していました。教室で絵本を読むのですが、さまざまなお子さんたちの反応が楽しみでした。

 

采明さんと元聖さんもかわいらしい14年前の羽野晶紀さんの家族ショット
采明さんと元聖さんもかわいらしい14年前の家族ショット

ミッションがあると頑張ることが

── 結婚と同時に引退した自身の仕事はその後、増えつつありますが、どう思っていますか?

 

羽野さん:芸能の仕事は大学時代から始めました。結婚でいったん区切りをつけ、長女が小学生になるまでは休んでいましたが、改めて天職だと思っています。特にバラエティ番組は、笑ってもらえたりすると緊張しません(笑)。関西気質なのかもしれませんが、自分のことをよく思われようとは考えていないので、楽しいんです。

 

でも役者の仕事は逆に緊張感があり、作り上げていく過程が楽しいです。その役柄に求められていることを、自分自身で高めていかなくてはいけないので、簡単ではありません。でも、これは自分に与えられたミッションだと思って頑張っています。ミッションがあると、頑張ることができませんか?

 

PROFILE 羽野晶紀さん

はの・あき。1968年、京都府生まれ。大阪芸大在学中から関西のバラエティ番組や劇団で活躍。2001年に狂言師の和泉元彌さんと結婚後は、休業。復帰後は、ドラマや映画でも活躍。1女1男。

取材・文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/羽野晶紀