相方にお金を貸していた時期もあったと語る、相席スタートの山﨑ケイさん。なぜ大金を貸していたのか。お金のトラブルで不安になったことはないのか。(全4回のうち3回目)
お金を借りても弱気にならない
── 相方の山添さんにお金を貸していた時期もあったそうですが、お金の貸し借りで、コンビの関係性が悪くなるようなことはなかったですか?
山﨑さん:まったくないですね。むしろ、前より仲良くなりました。
── そう思えるような、きっかけがあったのでしょうか?
山﨑さん:前に一度、相方から解散したいって言われたことがあったんです。私は、自分の正論を押しつけるところがあって、相方の嫌な部分を見つけると怒ったり、イライラした態度を出すこともあったんです。
ただ、この人なら何を言っても大丈夫、絶対解散はないだろうという前提のもと、感情をぶつけていましたが、そうじゃなかった。ある日突然、相方から「解散したい」って言われたんです。そこで、初めて自分が間違ってたのかな、と気づきました。
結局、どうにか相手を説得して、解散危機は乗り越えましたが、自分を反省しつつも、コンビの絆って何…?コンビの意味って何だろう?って考えてるようになって。そんなときに、相方から借金のオファーがあったんです。
私も「お金で繋がれるんだったら…」って、変な期待というか、ちょっと距離が詰められたらっていう感覚はちょっとあったと思います。
── 解散危機の後に、山添さんから借金のオファーがあったのですね。
山﨑さん:そういうところがすごいなって思うんですけど。解散危機は逃れたとはいえ、「あなたとはやっていけません」って伝えた相手に、よく「お金貸して」って言えるなって。
しかも、相方は私にお金を借りてるからと言って、いっさい弱気になることもないし「この人、本当に私にお金借りてる人だよね?」っていうくらい、強気な態度のときもあります。私は、何かあれば、過去も全部ひっくるめて繋げがちで、「あのときもあぁだった。このときもそうだった」って、過去と今を繋げてしまうんですけど、山添は違うんです。「それはそれ。これはこれ」みたいな感じで、お金を借りてるからといって、媚びへつらったりもしないんですよ。
借りた金は返す人だと思っていたら
── 初めて借金をお願いされたときは、なんと言われたのでしょうか?
山﨑さん:そのへんが姑息なんですけど…。私はもともと、別の同期にお金を貸してたんです。それを相方がどこかから嗅ぎつけて、「ケイさん、あの人にお金貸してるんですよね。いくら貸してるんですか?」って言ってきて。「40万貸してる」と答えると、「じゃあ、40はいけるんですね」って、意味がわからない…!
コンビだから、なんとなく向こうの収入もわかるじゃないですか。そんなにお金がない時期じゃなかったし、どういう意味で言ってるのか聞いたら「僕も40いけますか?」って探ってきたんですよ。私の限度額を。「マジで言ってる?給料あるじゃん」って言うと、「や、ちょっと使っちゃって…」って。
── 借金は、そこからどんどん増えていったのでしょうか?
山﨑さん:どんどんどんどん。しかも、1回の借金が1万とかじゃないんですよ。1回50万とか。彼の場合、生活費じゃなくてギャンブルなんです。最初は「5万いけます?」から始まって、「10万いけます?」「50いけます?」ってどんどん増えて。私も、相方ならまぁいいかーみたいな感じだったんですけど、さすがに借金が200万になったタイミングで、ちょっとやりすぎだから、ここで止めようかって伝えました。
相方は、「そう言ってくれて、僕もよかったです!ありがとうございます」って言ったと思ったら、「まだ20いけますか?」って。結局220万貸しました。その後、1回50万まで返してきて、このまま借金なくなるぞって思ったら、また貸してくださいとか。貸したり、返済したりで、総額で390万貸していたと思います。
── 途中で、お金のトラブルとか不安もなく…?
山﨑さん:そういう心配は、特になかったですね。山添って、すごいまっすぐな人なんですよ。「金借りといて」って話にはなるんですけど(笑)。借りた金は、返す人だって思ってたし、困ってる人がいたら助けるような男気みたいなのもある。いわゆるクズ…、金借りて、逃げられたらラッキーみたいな人ではないっていうか。あと、お母さんの連絡先も知ってましたし。
── 今も、借金は残っていますか?
山﨑さん:すべて返済が終わりました。私たちの場合は、お金関係でむしろ仲良くなったような気がします。解散を告げられてからも、言いたいことは言ってますが、以前ほど感情的に言うこともないですし。今は、解散危機も借金返済も終わって、コンビの関係性も穏やかになったと思います。
PROFILE 山﨑ケイさん
千葉県出身。2013年山添寛と相席スタートを結成。趣味は旅行、食べ歩き、料理、他人の恋愛の悩みを解決すること。
取材・文/松永怜 撮影/長谷川裕之