ほのぼのとした双子との日常を描き、SNSで発信した育児漫画が『双子育児、ちょっぴり詰んでます!』として書籍化されたいよかんさん。思わずほっこりする作品の数々はどのようにして生まれたのでしょうか(全2回中の1回)。

デザイン会社のOLから、憧れだった漫画家に

── 漫画家になられる前はどのような仕事を?


いよかんさん:会社でOLをしていました。専門学校で『Photoshop』や『Illustrator』の使い方を学んだのを活かし、社内でデザイン関連の仕事もおこなっていました。

 

── そこから、漫画を専業にしたきっかけは何でしたか?

 

いよかんさん:もともとは会社員を続けるつもりでしたが、育休に入ってすぐにコロナ禍になってしまって。家から出られなくなり、双子の育児漫画を描き始めました。そうしたら、漫画をきっかけにお仕事の依頼をいただけるようになり。ちょうどコロナの影響で会社の経営方針が変わり、これまでの働き方ができなくなってしまう背景もあったので、結局、育休産休を経てそのまま会社を退職。現在のような形で漫画やイラストの仕事をするようになりました。

 

── 育児漫画を描く前から、漫画は描かれていたのですか?

 

いよかんさん:小さい頃から漫画を読むのが大好きで漫画家に憧れていましたが、特に漫画家になるために実際に行動にうつしたことはありませんでした。でも、学生時代から絵を描くこと自体はすごく好きだったので、その延長で描けるようになった感じです。

 

── 絵の素養はあったのですね。

 

いよかんさん:今はデジタルで漫画を描いているのですが、学生時代にデザインのソフトを使っていたので、上達が早かったのかもしれません。でも、再び漫画を描き始めたのはコロナ禍になってからなので、久しぶりで。コロナ禍のおうち時間に試し描きして練習しました。

 

── 独学で漫画を描き始めて2年で、漫画家としてデビューされたとはすごいです。

 

いよかんさん:育児漫画を描き始めたきっかけは、やっぱり双子が生まれたのが大きかったです。一人の子の育児とは違うことも多くあり、双子ならではのおもしろいエピソードがたくさんあって。育児日記をつける感覚で描き残したいと思ったんです。

 

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「双子ならではの発想かもしれません!」(いよかんさん)

 

── 育児漫画を描くにあたって、旦那さんの反応はどうでしたか?

 

いよかんさん:「将来読み返すのが楽しそうだね! 」と応援してくれていました(笑)。コロナ禍であまり外出できないときだったので、夫が「DIYでもやろうかな」というので、それなら私は漫画でも描こうって感じで、それぞれの時間を過ごしていましたね。

予期せぬ双子の妊娠も「奇跡!」と大喜び

── 双子を妊娠されたのは、いつわかりましたか。


いよかんさん:妊娠して最初の診察でわかりました。自分が妊娠する前に、知人で双子を育児中の方がいたんです。その話を聞いたときは、“双子なんてかわいいだろうな~うらましい”と単純に思っていて。私もまさかの双子の妊娠だったので、すごい奇跡!と私も夫も前向きに喜んでいました。

 

── 体調の変化など大丈夫でしたか?

 

いよかんさん:双子の場合は、通常よりもつわりが重くなると聞いたことがありますが、私もつわりがひどかったです。出勤中も気持ち悪くて、電車を途中下車して2、3時間駅のトイレにこもっていたことも…。会社も1か月ほど休職して、ずっと家のソファで座って過ごしていましたね。

 

── 妊娠中は、トラブルなどありましたか?

 

いよかんさん:双子を妊娠したママのなかには、3か月前から管理入院生活をする方もいるようなのですが、私は経過が順調だったので予定日の1週間前くらいまで普通に家で生活していました。さすがに1週間前になったときには、病院から管理入院をするよう言われました。

 

── 出産はスムーズでしたか?

 

いよかんさん:私の場合は36週目で出産しました。帝王切開で、事前入院して万全な体制で臨んだので、安心できました。最後にはおなかの膨らみ具合がすごくて、本当にパンパンでした! 

 

── 入院中は、母子同室で双子の育児をされていたのですか?

 

いよかん:出産した病院は、双子の場合は時間ごとに交代でママとは1人ずつ過ごす形だったんです。でも双子のひとりが2000g以下の低出生体重児だったのでNICU(新生児集中治療室)に入ることになって。

 

── 双子が揃ったのは、退院後だったのですね。

 

いよかん:そうなんです。入院中は、1人と同室だったのでひとりっ子みたいな感じでしたね。あまり双子という感覚がないまま退院したので、家に帰ってからが大変でしたね。

新生児の頃は見分けがつかなくて

── 新生児の区別は難しいと思うのですが、一卵性双生児の場合はどのように見分けていましたか?


いよかんさん:最初は、赤ちゃんの足首に巻かれていたリストバンドで区別していました(笑)。退院後も、しばらくリストバンドを付けたままにしていて。生後1、2か月経ったころから、泣き声が違ってきてそれぞれの個性が出てくるようになりました。

 

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「正反対の性格で、見ていておもしろいんです」(いよかんさん)

 

── 2歳になられた現在は、双子を間違えたりはされなくなりましたか?

 

いよかんさん:だいたいは区別できるのですが…。たまに夜や部屋が薄暗いときに声をかけられると、とっさに「えっ、どっちだっけ?」ってなります(笑)。

 

── 一卵性双生児でも、性格の違いはありますか?

 

いよかんさん:お姉ちゃんと妹では性格がまるで違いますね。お姉ちゃんは男まさりでお喋り。でも妹は女の子らしくておとなしい性格で。二人とも本当に真逆でそれぞれ反応が違うので、見ていておもしろいです。

 

── 新生児の頃の双子育児は特に大変だと思いますが、どのように乗り越えましたか?

 

いよかんさん:里帰りはせずに、すぐに夫と二人で育児を始めました。夫が育児休暇を長く取ってくれたので、すごく助かりましたね。夜中も一緒に起きて、2人で1人ずつおむつを替えたり、ミルクを飲ませたり。

 

── 今は育児の分担はどのように?

 

いよかんさん:普段は夫が残業で遅いので、夕飯やお風呂、寝かしつけは私がひとりでやっています。一時保育も週1回の利用なので、その時にガーッと漫画を描く感じですね。普段は、双子と一緒に家で過ごしたり、公園に行って一緒の時間を過ごしています。

 

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「この二人の会話の内容が気になりました(笑)」(いよかんさん)

 

── 日中は、いよかんさんがワンオペなんですね。

 

いよかんさん:そうですね。4月から保育園に入る予定なので、今は一時保育に預けている間や、双子が眠ったあとに仕事をしています。

 

── 検診など、子連れで病院に行かなければならない機会も多くて大変ですよね。

 

いよかんさん:私ひとりで双子を遠くの病院に連れていくのは難しいので、検診などのときは夫に有休をとってもらっています。家の近くの病院で予防接種を打つくらいならひとりでもなんとかなるのですが、家から離れた大きな病院で検診など時間がかかるときは何かあったときに大変なので。

 

── 双子育児は特に、旦那さんの協力が必要不可欠ですね。

 

いよかんさん:本当に夫の協力がなければ、難しいと思いますね。双子育児だと、自分のご飯をゆっくり食べる時間もなかったりするので。夫が子ども好きで、新生児のころから育児に協力してくれたのは良かったなって思います。休みの日も、だいたい家族みんなで出かけています。子どもたちも、ママっこって感じでもなくパパにも抱っこしてもらったりどちらとも仲良しですね。

 

PROFILE いよかんさん

漫画家。Instagram やブログなどで育児漫画を発表。2019年に双子を出産したのを機に、双子育児に関するイラストや4コマ漫画の執筆を始める。『双子育児、ちょっぴり詰んでます!』(KADOKAWA)が発売中。

 

取材・文/池守りぜね