2019年に離婚後、2人の娘の育児に奮闘する西山茉希さん。理想の母親像は、距離感を保ちながら見守り、安心感を与えられる「キャッチャー」のような存在だと語ります。
育児はきれいごとばかりじゃないから
── エッセイ『だいじょうぶじゃなくてもだいじょうぶ』の中で、理想の母親像について「なんでもストライクにできるキャッチャーでありたい」と語っていますね。同じ母親として、なんでも受け止めるのは難しいときもあるなと感じます…。
西山さん:子育てで何が正解だったのかって、大人になった子どもたちが自分たちの幼少期をどのように親に話すかがすべてだと思うんですよ。子育てに関する資料を見たり、検索したりして答えが見つかることでもない。
だとしたら、たとえば今日いっぱいいっぱいで、キツくあたってしまうことがあっても、当たり前だからしょうがない。でも、1週間で見たときに「今日はキツくあたってしまったから、今週末はなにかうれしいことをプラスしてあげようかな」とか。「『ごめんね』の気持ちを伝える時間をつくろうかな」と考えるようにしています。
── 1日ではなく、もう少し長いスパンで考えてみる、と。
西山さん:そうそう。1日でできないことは1週間で見て、1週間でできないことは1か月で見て。最終的には彼女たちの人生を通じて考えてほしいことなので。
きれいごとばかりではいられない毎日だからこそ、そういう考えになったほうが心穏やかにいられるんじゃないかなって思います。
── そうですね。
西山さん:わが子だとしても、無償で愛すということは、とても難しいことをやってると思うんですよ。毎日100点を求めるのは難しいことですからね。
私が「キャッチャーでいたい」と思うのは、グラウンドのいちばん後ろにいて、「バッチこい!」って言えるような距離感でいいってことなんです。
真ん中に一緒にいなくていい。人生で彼女たちが出会う友人とか、いろんなメンバーとグラウンドに立ってプレーしてもらって、私は「ママは、あそこにいるからね」っていう安心感が与えられればいいかなって。
── 一歩引いたところで見守る、というか。
西山さん:そうですね。あとは、プールの監視員さんのように。一緒にプールに入らなくてもいいけど、危険なときには絶対に見逃さない。そういう場所にいたいなって思うんですよね。
「離婚前と家事も育児もやっていることは同じ」
── もしかしたらシングルマザーへの偏見に満ちた質問かもしれませんが、子どものことって決めなきゃいけないことや、考えなきゃいけないことがけっこう多いじゃないですか。スマホをいつ持たせる、学童をどうする、とか…。
西山さん:たしかに。旦那さんがいると悩みもシェアできますよね。
── そういうのをおひとりで決めるのって、しんどくないですか?
西山さん:誰かと何かを決めるって、なにか問題が起きたときに人のせいにしやすくなってしまうことがある。
そう考えると、ひとりで決めたほうが自己責任と思えるから、私はそんなに大変と思うことがないかもしれません。
── たしかに。「あのときこう言ったじゃない」みたいに言ってしまいそうなときはあります。
西山さん:私がシングルマザーと言われるようになって、いちばん違和感だったのが、私にとっては育児も家事も、離婚しても日々のやることは変わらなかったんですよね。
── なるほど…。
西山さん:シングルで大変だなというのは、同じ屋根の下に大人がもう一人いてくれるだけで、すごく助かっていたんだなというのは感じました。
── たしかに。大人の目があるというだけで違いますよね。
西山さん:「ちょっと子どもを見てもらえるかな?」ができるじゃないですか。「ちょっとスーパー行ってくる」「1時間だけ仕事してくる」ができたのに、それが難しくなって、子どもと常に一緒に動くスケジュールに切り替わったことが大変だったかなと思いますね。
PROFILE 西山茉希さん
モデル・タレント。1985年生まれ。2005年より雑誌『CanCam』の専属モデルを務め人気を博す。13年に結婚し、2人の娘を出産。19年離婚。23年エッセイ『だいじょうぶじゃなくてもだいじょうぶ』を上梓。
取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美