バセドウ病になった夫の実体験漫画が話題の桜木きぬさん(@kinumanga)。当時9歳の息子はパパと遊びたい盛りでしたが、病気によりかなわないため、桜木さんは夫にかわり外遊びも体を張ってこなしたと言います。桜木さんに、当時の様子やパートナーの病気との関わり方について聞きました。

 

バセドウ病を理解するにつれ夫の変貌ぶりが腑におちた桜木さん

「話をかぶせる」「信号が待てない」変貌する夫

── バセドウ病は、甲状腺ホルモンが活発になりすぎることで、常に感情がたかぶって神経が過敏になり、精神的な症状が現れることでも知られています。夫さんの場合、具体的にはどんな症状がありましたか?

 

桜木さん:とにかく食い気味に話すようになりました。話をかぶせられるのって誰でもあまりいい気はしないですよね。だから、そのことを夫に指摘するんですけど、本人はまったく自覚がないので喧嘩になってしまうんです。

 

あと信号も待てなくなっていたので、もし赤信号のときに渡って事故にでもあってしまったらと思うと心配でした。

 

漫画では私の感情は出さず事実のみをフラットに描いていますが、実際はもちろん葛藤もあって、「このままでは家族として一生添い遂げるのは無理かもしれない…」という思いが脳裏をよぎることもありました。

 

でも幸い薬が効いて甲状腺ホルモンの数値が元に戻れば、性格も元に戻ることがわかったので、今は薬があれば大丈夫と思うようになりました。

夫と息子の関係悪化で板挟みに

── 他に大変なことはありましたか?

 

桜木さん:病気で攻撃的な性格になったからといって、私に怒声を浴びせるような人ではないのですが、息子に対して小言を言うことが多かったように思います。

 

「部屋が汚い」とか、そういうちょっとしたことを理由にグチグチお説教をしたりするので一時、夫と息子の関係が最悪になってしまったんです。息子が夫を嫌いになってしまい、私が仲介しないと二人にさせられないというような時期も…。

 

── 病気がわかって息子さんが歩み寄った形ですか?

 

桜木さん:夫の病気がわかってからは、もちろん息子も理解して寄り添おうとしてくれてはいたと思いますが、それでもまだ当時はたったの9歳。

 

外で思いきり遊びたい盛りでもあったので、「パパとお外でキャッチボールしたい!」「家族でアウトドアに行きたい!」と言ってもわが家ではそれを叶えてあげられなくて、息子には我慢をたくさんさせてしまったと思います。

 

「どうせお父さんは病気だから、これもダメなんでしょ…」と逆にすねてしまうようなこともあったので、夫の病気がわかってからは私がやるしかないと腹を括り、夫の分まで息子とたくさん外遊びをした思い出があります。

 

夫にかわり息子との外遊びの思い出は独り占め状態に

「ホルモンがやってきたらお手上げ(笑)」

── 桜木さんが夫さんと息子さんの間を取り持ち、家族のバランスをうまくとっていた様子が伝わります。桜木さん自身、ストレスが溜まってしまうようなことはなかったのですか?

 

桜木さん:もちろん葛藤はたくさんありましたが、結局のところ夫が変わってしまっていたのはホルモンの影響なんですよね。

 

私はPMS(生理前症候群)がかなりひどくて、生理前になるとやや攻撃的になっていると思うんですが、そのときは夫が私に配慮してくれています。息子は現在思春期真っただ中ですが、彼のとがった言動も、きっと成長ホルモンが関係しているはず。

 

夫が家族に負担をかけるときもあれば私が負担をかけるときもあるし、息子もまた然り。なのでわが家では、「ホルモンがやってきたらもうお手上げだね〜」と話しています(笑)。

 

誰かが変に被害者意識を持ってしまうと、家族の関係もこじれてしまうのかなと思うので、ホルモンのせいかなというときは「しょうがない!」と割りきっています。持ちつ持たれつお互いさまと思って暮らしていますね。

先祖の病気を知っておく意味

── 漫画のラストでは、桜木さんが、バセドウ病と反対に甲状腺ホルモンの分泌が低下する「橋本病」だという驚きの真実が明かされました。

 

桜木さん:そうなんです。実は10代のころからなんとなく首が腫れていて、健康診断で指摘されたこともあるのですが、特に困ることもないので20年あまり放置してしまっていたんです。

 

夫がバセドウ病になったことをきっかけに検査を受けたところ、橋本病だということが発覚して…。バセドウ病の父と橋本病の母を持つ息子には、何か体調の異変があればまず甲状腺を疑えと言っています(笑)。

 

── それを受けて息子さんの反応はいかがでしたか?

 

桜木さん:「もう、かんべん!」って感じでした(笑)。

 

でも真面目な話、甲状腺の病気は発見されるのがなかなか難しいので、もし将来息子が不調を感じたとき、自分は甲状腺が悪くなりやすい家系だと知っていれば、誰に気づいてもらえなくても自分で気づくことができるかもしれないと思って。

 

不必要に怖がらせることはないけれど、大事なことだから伝えることにしました。

 

自分の親族や先祖代々の病気を知り、自分がなりやすい病気を想定しておくことは、備えにもなると思います。

 

PROFILE 桜木きぬさん

イラストレーター兼漫画家。会社員の夫と中学生の息子との3人家族。Twitterに投稿している自身や家族の実体験を描いた漫画、「夫がバセドウ病にかかったら」「内臓破裂メモリー」などが反響を呼び、エッセイ漫画家としても活躍中。

 

取材・文/上野真依 イラスト提供/桜木きぬ