ママたちの「心の孤立化」が進んでいる

── 馬場さんが、お客さまと接するうえで大切にしていることはありますか?

 

馬場さん:ひとつは、「弱みをさらけ出すこと」です。

 

起業当初、お客さまとお喋りしているとき、「宣伝に困っている」と弱音を吐くと、お客さまが「ママ友にお店のチラシ、配ってあげようか?」と言ってくれて。チラシをもらった人も、見ず知らずの私よりもママ友からもらったほうが「行ってみようかな」と思えますよね。

 

弱みをさらけ出すには、何でも話せる空気をつくることも大切だと思います。

 

── なるほど、たしかにママ友のおすすめなら「行ってみようかな」と思えますね!

 

馬場さん:そうなんです。二つ目は、「感謝される接客を考えること」です。さくらやでは、リユース制服だけでなく、子育て中の母親たちに必要とされる情報も提供するように心がけています。

 

さくらや
「ありがとうございます」さくらやのエプロンには感謝の気持ちが込められている

── 情報とは?

 

馬場さん:制服のサイズで迷っていたら、「他のママたちはこう言ってたよ」と伝えますし、「あそこのパン屋さん美味しいらしいよ」とか、「あそこに新しいスーパーができるんだって」とか、何てことのない町の情報も提供します。

 

今はSNS社会と言われていますが、ママたちと接しているとリアルなコミュニティを求めている方が多いと感じます。

 

働くママが年々増えていますが、彼女たちは仕事の合間を縫って学校行事に来て、他のママと喋る暇もなく仕事に戻らなきゃいけない。その場合、ママ友や知り合いをつくる機会すらありません。悩みや不安を打ち明ける人も身近におらず、似た境遇の人をSNSで見つけて安心する人が増えていると感じます。

 

さくらやとしては、店舗運営やイベントを通じてリアルコミュニティを大切にしながら、ママとの接点を作れるようSNS発信にも注力しています。これからも、時代とママに寄り添う対応をしていきたいです。

 

PROFILE 馬場加奈子さん

香川県生まれ。シングルマザーとして3人の子どもを育てるなか、制服の購入に苦慮した経験から、2010年全国初の学生服リユースショップ「さくらや」を開業。育児優先の企業姿勢が評価され、ウーマン・オブ・ザ・イヤー子育て家庭応援ビジネス賞ほか、受賞多数。知的障害のある長女の子育て経験から、マイノリティの居場所づくりにも力を注ぐ。

 

取材・文/笠井ゆかり 撮影/二瓶 彩 画像提供/馬場加奈子