フリーアナウンサーの仕事が減っていった30代前半。体型の衰えにも危機感をもったという湯浅美和子さん。下着との出会いによって下着ソムリエの道を模索し、いまや田中みな実さんが下着選びのすべてを任せる存在に。キャリアと体型を打開した話に耳を傾けたいと思います。

 

田中みな実さんがプロデュースしたガードル撮影時のツーショット

100以上のオーディションに落ちた末に決まった仕事

—— フリーアナウンサーやナレーターとしてご活躍の湯浅さんですが、いつごろからアナウンサーを目指されたのでしょうか?

 

湯浅さん:ミーハーで恥ずかしいんですが…子どものころからテレビに出たくて。100以上のタレントオーディションを受けては落ちていました。

 

ようやく19歳で地元・北海道でお天気キャスターに合格したのをきっかけに、フリーアナウンサーとして活動しはじめました。

 

23歳で上京し、生活のためにアルバイトをしながら、次第にテレビやラジオの仕事が増えていきました。

 

「ズームイン!!朝!」のレギュラー出演も決まり、はじめは無我夢中でしたが、連日3〜4時間睡眠で体力的に大変でした。

 

もともとタレント志望だったためドラマや歌をやりたい想いが募り、30歳になったころ「ズームイン!!朝!」のレポーターをみずから辞めてしまいました。

 

アナウンサー仕事をしていた際の様子

やっとつかんだ大きな仕事でしたが、当時は自分を俯瞰してとらえることができませんでした。「辞めても仕事はある」と思い込んでいたのです。

 

その後、タレント事務所に所属しましたが現実は甘くなく、アルバイト生活に戻らざるをえなくなりました。アルバイトの帰り、駅のトイレで鏡にうつった自分の姿を見て、情けなくてこみあげた涙をいまでも覚えています。

「このままおばさん体型に」の意識が一変した出会い

—— そんなご苦労をされた時期もあったんですね。

 

湯浅さん:ときを同じくして、年齢的に体型も変わりはじめ「このまま、おばさんになっていくんだ…」と気持ちも後ろ向きになっていました。

 

そんなときに、自分のラジオ番組で下着メーカーを取材しました。番組内でメーカーの方が私の体型に合う下着を選び、正しい位置につけてくださっただけで、5分前とは見違えるよう体型になり別人になった気がしました。

 

鏡にうつる自分の目がキラキラと光り、自分で自分にときめく衝撃的な経験でした。それを機に下着選びを見直すことに。

 

下着だけでなく、もっと奥の自分の内面も見直す気持ちで取り組みました。自分自身と向き合えたことで、凝り固まった価値観も総入れ替えする発端になりました。

 

下着美容研究家として打ち合わせに参加する

それからずっと下着を正しく着用し続けています。その結果、年齢をかさね衰えていくだけだと思っていたボディラインが整い、とくにガードルをはき続けたことで数年後には2サイズもダウン。

 

特別なダイエットや運動はしていませんが、それから15年経つ現在も下着のサイズは変わっていません。

 

年齢を重ねていっても、おばさん体型になっていないのは下着のおかげです(笑)。

「中途半端なタレントが」とSNSで叩かれて

—— 下着選びを見直したころに「日本ボディファッション協会認定インティメイトアドバイザー」という下着とボディコンサルタントのプロ資格を取得されたのですか?

 

湯浅さん:そうですね。当時、所属していた事務所の人に「喋りが上手くて、経験のある人はたくさんいる。美人もいっぱいいる。もういい年なんだから、ひとつ武器がないと」と言われまして。

 

人とくらべることはあまりしませんが、今後の仕事への危惧は高まっていたので、その助言は突き刺さりました。

 

偶然にも『インティメイトアドバイザー』の資格試験が開始されたタイミングだったため、深掘りするなら健康や美容にも関連する下着の世界が良いと思いました。

 

そこで、単独でいくつもの下着メーカーに「勉強させてください」と直談判して話を聞きにいきました。

 

著書の撮影に下着のスタイリングで立ち会う

ヨーロッパやアジアなど海外で行われた下着や生地の展示会、国内外の工場にもおもむき、下着や下着作りにまつわる知識を得ました。

 

そのかいあって、難関だといわれる『インティメイトアドバイザー』の資格を取得することができました。これは下着業界以外の人間で初めてだったと聞いています。

 

下着に関する特集で雑誌などで取材していただくようになると「中途半端なタレントが下着のことを語っている」とネット上で書かれたこともありました。

 

けれども、下着業界にいないことが逆に強みだと思っています。業界にいませんから売上などは自分に関係ないので、利益のために薦めることはありません。

 

本当に良いと思った下着しかおすすめしないので、嘘は言いません。「ズームイン!!朝!」で「情報発信するときに嘘は絶対ダメ」「嘘をつくならボツにする」と徹底的に教育されたことが今も活きています。

有名タレントから下着の悩みを相談される存在に

—— アナウンサーのご経験が、下着美容研究家にもつながっているわけですね。

 

湯浅さん:はい、アナウンサーは情報を正しく伝えるのがミッションですから。主役は情報。真実の情報をねじ曲げることなく届けるアナウンスのスタンスが、下着美容の発信のときも自分のルールになっています。

 

良い情報を得ると人に伝えたくなる性格で、それを続けてきた結果、いまがあります。

 

下着のおかげでボディが整った喜びを多くの人に知ってもらうため『40代の下着のレシピ』というYouTubeを配信したりしています。

 

すると、下着の悩みをもつ多くの有名人などからフィッティングを依頼されるようになり、いつしか「湯浅メソッド」などと呼んでもらうように。

 

田中みな実さんのラジオ番組に出演後、みな実さんと“ブラジャーパトロール”と銘打った下着の買い物ツアーに出かけたり、からだに合う下着のチェックをおこなう”美ボディ会議”を定期的にみな実さん宅でおこなっています。

 

毎回ビューティー情報の交換をし合い、みな実さんと交流が深まりました。みな実さんがガードルをプロデュースする際も相談してくださって、100枚近く私のガードルをお貸ししました。ときにはみな実さんのお部屋で何枚もガードルを試着して、機能や生地の質感を研究したり…。

 

2人とも下着姿で、鏡の前で何度も着替えるのですから、側から見たらなかなかユニークな光景だったと思います。けれども、徹底的に勉強してから取り組むみな実さんの姿勢は本当に素晴らしかったです。

 

結果、ガードルブームを巻き起こすほどの人気商品となり、みな実さんのアイデアはいまでも継続して商品に採用されています。

 

私にとっても光栄な出会いだったのですが、多くの女性に支持されているビューティーアイコンのみな実さんに「湯浅さんと出会えて良かったです」と言ってもらえたときは、ものすごく嬉しく、ひとつのことを探求し続けた先にあった人生のご褒美のように感じました。

商品開発にもかかわり念願の「下着本」出版も!

—— SNSでの情報発信も手伝って「下着美容研究家」という肩書がさらに広がったのでしょうか?

 

湯浅さん:そうですね…下着の専門家としての出演依頼や、商品の開発や監修の相談を受ける機会も増えました。

 

下着メーカーの方々が、からだを思いやって真摯に「ものづくり」をしていることを知り、学校の授業に「下着学」があったら、もっと正しい下着選びを誰もができるようになるのに、とも考えています。今冬には一生の下着の教科書になるような念願の本の出版もかないました。

 

下着美容をひとつのツールとして、綺麗になりたいと願う女性のお手伝いができれば嬉しいです。主役は女性たちのピュアな心、それをねじ曲げることなく叶えたい、やはりアナウンスのスタンスが根本にあります。

 

また、下着美容研究家の経験によってアナウンサーとしても表現する幅が広がったと、周囲の方々が言ってくださいます。

 

寄り道のおかげで居心地の良い場所が見つかり、40代で独立しました。「声屋 五感動」という看板を掲げ、五感のストレッチをコンセプトに「心の声を響かせたい」という願いをこめて活動しています。

 

他分野を学ぶことで出会えた人や経験の尊さを知っているので、物怖じせずにやってみたいと思うことはすべて挑戦しています。

 

朗読やナレーションによるボイスオファーをはじめ、女性の心の声に共鳴する下着美容、「できたらいいな」の声を叶える企画、制作、商品開発、デザイン考案、若手お笑い芸人が出演するYouTubeチャンネルのプロデューサーまでしています。

 

つねにコーヒーフィルターのような存在になりたいと思っています。コーヒーを飲むときにフィルターのことは誰も考えませんが、コーヒーという主役をカップというお客さまに届ける際、フィルターが健全でないといけない…そんな一流のフィルターのような人になりたいです。

 

PROFILE 湯浅美和子さん

フリーアナウンサー、ナレーター。下着とボディメイクのプロ資格「日本ボディファッション協会認定インティメイトアドバイザー」をもつ下着美容研究家。「声屋 五感動」主宰。著書に「Beauty Body Protocol 大人のための下着の教科書」(ブックマン社)。

 

取材・文/清宮あやこ 写真提供/声屋 五感動(湯浅美和子SNSより)