どれだけ一緒に遊んでも「怒られた記憶」が子どもに残る

── 振り返ると、私たちの世代って、親や大人によく叱られてきましたよね。

 

池田さん:そうですよね。我々はその姿を見て育っているから、親が子どもに対して怒るのは当たり前だと思ってきたけれど、よく考えると怒ることって決して最善ではないのでは?と感じています。

 

これまでしつけの常識とされていたことがいろいろと覆されているいま、「怒る」ことについても、「それって必要?」とそのつど問い直してみることが大事なのかなと。

 

それに、子どもって怒られた経験をずっと覚えているもの。いま21歳になる姪っ子がいるのですが、小さいころからよく一緒に遊んだり、すごく可愛がったりしてきました。

 

ただ、過去に一度だけ強めに叱ったことがあって。姪っ子が小学生のころ、iPodが欲しいというのでプレゼントしたら、「メガバイト数が違う!」と言われ、思わず「小学生でiPodを持つことって、ぜいたくなんだぞ!」と言ったんです。

 

大声を出したのはその1回だけなのに、「てっちゃんには怒られた記憶しかない」と言われ、ショックを受けました。大人に怒られた記憶は、それだけ子どもの心に傷として残るんだなと痛感しましたね。

 

── ふだん怒らない人に怒られたことで、記憶に刻み込まれたのでしょうね。

 

池田さん:そうかもしれません。以前わが家でも、子どもが食事中にウロウロと歩き回り、妻が注意しても聞かなかったので、「ここは父親として雷を落とさなければ」と強く怒ったことがあります。

 

大声をあげない私が怒ったものだから、娘はびっくりして泣き出したのですが、なぜか妻まで「娘がかわいそうだ」と一緒に泣いてしまい、収拾がつかない状態に…。

 

私としては、妻の援護射撃をしたつもりでしたが、これは逆効果だったと気づきました。

 

── 逆効果というのは?

 

池田さん:夫婦で一緒に叱ってしまうと、娘にとって逃げ場がなくなってしまい、心の傷になる。そこはうまくバランスをとっていかないといけないなと感じました。