3歳のときに、養子縁組として施設から川嶋家に引き取られた川嶋あいさん。19歳で出生について世間に公表しましたが、それから10年以上たち、川嶋さんが今思うことは。また、今度は自分が養子縁組の母として子どもを育てるとしたら── 。
心は解放されたのか
── 川嶋さんが、ご自身が養子縁組の子どもだと知ったのは12歳のとき。19歳になるまで、ごくわずかの人にしか事実を打ち明けていなかったそうですが、世間に事実を公表されたきっかけなどあったのでしょうか？
川嶋さん：私が19歳のときに、自伝本を出す機会があったんです。そのタイミングで、世間にも公表することにしました。
── 世間に公表したことで、気持ちに変化はありましたか？
川嶋さん：産みの母とは会えず、育ての母も私が16歳のときに亡くなったりと、稀な運命を辿ってきたんですけど…。皆さんからいただいたメッセージは、本当にありがたかったです。少しでも、誰かの生きる力になれているんだったら、それだけでもこの運命に感謝しないとなっていう気持ちは、今はあります。
──「今は」ということは、本を出してしばらくは、まだすべて受け入れていたわけではなかったのでしょうか…？
川嶋さん：そんな全開には、心が開けてなかったなぁって思う自分もいますね。
本当に自分の環境を受け入れられるようになったのは、たぶん自叙伝を出してから、10年以上かかったかもしれないです。けっこう最近…30過ぎてからですね。
自伝本を出した当時から、いただいたメッセージは嬉しかったし、ありがたかったです。いっぽうで、改めて自分の事実をいろいろ聞かれたときに、まだ言葉にならない自分がいたのも確かで。会話をすることによって、母を思い出し、穏やかだった気持ちが不安定になって、また落ち着いてっていうのを繰り返してましたね。
── 19歳になるまで、ごくわずかの人にしか事実を伝えていなかったそうですが、今だから思うことはありますか？
川嶋さん：本当に信頼できる人、ひとりでもいいんですよ。友達じゃなくても、目上の方でもいいですし。そういった人に話ができたら、少しは気持ちが軽くなる。感情が開かれるっていうんですかね。ずっと閉じていた扉が開かれていって、だんだんと気にしなくなるような気がします。
「こういう自分たちでいいんだよね」って、自分はもちろん、周りの人もそうやって接してくれる。打ち明けることで変わることって、すごくあるなぁって思いますね。それは、親御さんも、子どもの立場からもそうですね。
