「衝撃でした!」伊調馨さんの競技との向き合い方

── これまでいろんなスポーツ選手にインタビューをされていますが、とくに印象に残っている方はいますか?

 

寺川さん:いちばん衝撃を受けたのは、レスリングの伊調馨さんですね。

 

取材したのは、2016年のリオデジャネイロオリンピックの前で、4連覇がかかっていた時期。

 

伊調さんは、勝ち負けをまったく気にしていらっしゃらず、まるで仙人のようでした。

 

私は選手時代に勝ち負けや数字にすごくこだわっていたので、てっきり伊調さんもアスリートとして4連覇に執着されているのだろうと、勝手に思っていたんです。

 

子どもたちに水泳の楽しさなどを伝える活動も行っている寺川さん

ところが、取材で出てきた話は、“どうしたら、もっとレスリングがうまくなるか”ということばかり。

 

もはや“勝ち負け”の次元ではないところに、意識がいっているんだなと感じました。

 

メダルを取るのがゴールではなく、“もっとうまくなりたい”と純粋な気持ちでレスリングと向き合い、その過程で結果がついてきている。“ああ、すごいな。こんなアスリートいるんだ”と驚きました。

 

── もはや自分自身との戦いなんですね。

 

寺川さん:わが道を極める方という印象でしたね。あの衝撃は、いまでも忘れられないです。

 

PROFILE 寺川綾さん

1984年生まれ、大阪府出身。3歳で水泳を始める。近畿大学卒業後、ミズノに入社。2012年、ロンドン五輪100メートル背泳ぎで日本新記録を出し、銅メダルを獲得。2013年に現役を卒業。現在はスポーツキャスターをはじめ、多方面で活躍。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/スポーツビズ