どんな子どもでも受験はナーバスになり、不安にもかられます。そんななかで親は子どもに何ができるのでしょう。「ただ寄り添うこと」の大切さを肌で感じた、と話す茂森あゆみさん。長男と次男の中学受験当時を振り返ります。

 

茂森あゆみ
長女とデート中に巨大なレインボー綿菓子を手にビックリした表情の茂森さん

「お出かけもお酒も控えて」受験はお母さんも総力戦

── 子どもの受験は親にとっても大きなできごと。環境を整えたり、塾の送り迎えをしたり、メンタルにも気を配るなど、多くのサポートが必要ですよね。茂森さんは、お子さんの受験期をどんなふうに乗り越えたのでしょう?

 

茂森さん:うちは長男と次男が中学受験を経験しています。もともと受験させることは考えていなかったのですが、長男が「パパと同じ学校に行きたい」と言うので、小3から大手進学塾に通わせました。

 

夏休みやゴールデンウィークには講習があって、なかなかお出かけできなかったり、夜は車で迎えに行くのでお酒を飲めないなど、サポートする側も大変でした。

 

計7年間の“受験生ママ”生活が終わったときには、ホッとしましたね。

 

茂森あゆみ
3人のお子さんとの4ショット写真

── まさに“伴走者”ですね。想定外のできごとなどはありましたか?

 

茂森さん:長男が6年生の秋、模試で思うような結果が出ず、気落ちしてしまったことがあったんです。

 

ふだんは天真爛漫で友だちが多く、生徒会や部活の主将をやるなど、明るいリーダータイプ。そのころはナーバスになり、“ちょっとこのままだとメンタルが心配だな…”と感じていたんです。

 

そうしたら夫が、「あとは復習だけだから塾は辞めさせて、家で過去問をやればいい」と。

 

塾の先生は、“いま、辞めるんですか?”とビックリされていましたが、子どもが委縮してしまうくらいなら、環境を変えたほうがいいと思って。

 

自宅学習に切り替えてからは長男も自分のペースを取り戻し、 志望校に無事合格できました。

 

いまも5時起きで子どもたちのお弁当作りをする茂森さん「急に“明日部活だから”と言われ、慌てて作った牛丼弁当」

── それは良かったですね!なんとかしてあげたいけれど、代わってあげられるわけでもない…親としてはもどかしいですよね。

 

茂森さん:最終的には神頼みでしたね(笑)。夫は毎朝、氏神様にお参りに行き、祖母も湯島天神で合格祈願の鉛筆を買ってきてくれました。

 

ただ、祖母からの大事な鉛筆を長男に渡そうとしたら、うっかり手が滑って落としてしまって…。

 

長男には、「このタイミングで、それ落とす!?」と怒られました(笑)。コロコロ転がる鉛筆を見ながら、「いやいや、神頼みはダメよ~」と焦って取り繕ったりして。

 

── 多分、それ、いちばんやっちゃいけないミスです(笑)。

 

茂森さん:ですよね(笑)。でも、滑り止めを受けさせていなかったので、ダメならしかたないと思っていました。

 

息子は行きたい学校があるから中学受験するのであって、志望校以外の私立校に行く必要はないよね、と。地元の区立中学校も素敵な学校でしたから。

「ただ、そばにいてほしい」次男がこぼした母親への願い

── ご次男の受験は、いかがでしたか?

 

茂森さん:次男も同じようなことがありました。お兄ちゃんと違って、マイペースでずっと楽しそうに塾通いをしていたのですが、模試の結果があまりよくない時期があって。

 

「どうする?大変なら受験を辞めてもいいよ」と話したことがあったんです。

 

そうしたら、「ここまで頑張ったからやり遂げたい。塾代とか、ママたちにいっぱいお金も使わせているし…」と言われてしまいました。

 

ナイスガイの18歳に育った長男と茂森さんの美しきツーショット

── 子どもって、意外と忖度しますよね。

 

茂森さん:ハッとしましたね。長男が合格しているから、次男もどうしても受からせてあげたい親心から「頑張れ~」とハッパをかけていたのが、逆に負担になってしまっていたのかなと、反省しました。

 

でも、「ママに何かしてほしいことはある?」と聞いたら、「何もしなくていいよ。ただ側にいてくれるだけでいい」と言いました。

 

それから、どんなに疲れて眠くても、次男の勉強が終わるまでは、ずっと側にいるようにしていましたね。

 

ただ、傍らで本を読んだり、じっと座っているだけでしたけれど、それで次男が安心できるなら、と。

 

── “ただ側にいてくれるだけでいい”だなんて、可愛すぎます。ちょっとトキメキました(笑)。

 

茂森さん:いまはそんなこと、全然言わなくなりましたけど(笑)。最近は、大好きなお兄ちゃんにくっついてばかり。“もう、ツンデレなのね!”と勝手に思っています(笑)。

 

ただ、考えてみると、次男は生まれたときからお兄ちゃんがいたので、私と2人だけの時間が少なかったからかもしれません。

 

なので、最近はケーキ好きな次男をカフェに誘って一緒に過ごす時間を積極的につくっているんです。

 

私はゆっくりお茶を楽しみたいのですが、次男はケーキを食べ終えると、さっさと帰ろうとして、ツレナイ態度ですけどね(笑)。

 

茂森あゆみ
“永遠のおねえさん”と思えるような素敵な笑顔をみせる茂森さん

── 子育てがようやくひと段落したことかと思います。これからやってみたいことはありますか?

 

茂森さん:ちょっと欲が出てきていて、そろそろ自分のことに時間をかけてもいいのかなという気持ちになっています。

 

もちろんまだまだ子育ても続くので、上手なバランスを探りながらやっていきたいですね。

 

PROFILE 茂森あゆみさん

1971年生まれ。武蔵野音楽大学卒業。在学中に、NHK「おかあさんといっしょ」17代目うたのおねえさんに就任。6年間務める。1999年『だんご3兄弟』が大ヒット、その年の紅白歌合戦にも出場。32歳で長男、36歳で次男、39歳で長女を出産。

 

取材・文/西尾英子 撮影/坂脇卓也 画像提供/ホリプロ