本当に描くのが大好きだから

── 闘病中に漫画家として念願のデビューを果たされました。入退院を繰り返す生活で、入院中も病室で漫画を描いていたそうですね。

 

島袋さん:
22歳のときに『蛙のおっさん』というギャグ漫画でデビューしました。締め切りもありましたし、病室でも常に漫画を描く生活でしたね。

 

とはいえ、私の場合、いまだに「趣味は漫画を描くこと」というほど本当に描くのが大好きなんです。

 

だから、「描かないでいいよ」と言われても、つい描いちゃう。特に入院中は暇ですし、なんにも生みだしていない自分に後ろめたい気持ちもありました。落書きみたいな漫画もたくさん描いていましたね。

 

── 漫画を描くことが、心の支えにもなっていたのでしょうか。

 

島袋さん:
それはすごくあります。術後、数日経たないうちに、すでに4コマ漫画をガンガン描いてました。

 

もちろん体じゅう痛いんですけど、描くことで現実逃避というか、楽しい気分になれるから、気が紛れるんですよ。

 

でも、手に全然力が入らないものだから、後日描いたものを見返してみると、線がヘロヘロ(笑)。ただ、そういうものに限って、内容はすごく面白かったりするんです。

 

── 当初は、担当編集者にも入院を隠していたとか。

 

島袋さん:
デビューしたばかりの頃は、“体の弱い漫画家には連載なんて任せられないと思われたらどうしよう”と不安で、入院中に描いていることを伏せていたこともありました。

 

初めて報告するときはすごく緊張したのですが、実はその方が担当している作家さんに、闘病しながら描いている方がいらして。私だけじゃないんだと勇気づけられましたし、それからは、正直に言うようになりましたね。

 

PLOFILE 島袋全優さん

1991年沖縄県生まれ。漫画家を目指していた専門学校の在学中に潰瘍性大腸炎を発症。入退院を繰り返しながら、2013年に『蛙のおっさん』で漫画家デビュー。闘病体験をつづったギャグ漫画『腸よ鼻よ』が注目を集め、「次にくるマンガ大賞 2019 webマンガ部門」では第3位を受賞。
 

取材・文/西尾英子