44歳で養子縁組にて子どもを迎えた、タレントで女優の武内由紀子さん。現在4歳になる男の子と2歳の女の子の子育てに専念しています。初めて子どもに会ったときに何を感じたのか。そして、いざ子どもとの生活が始まってからは、夫婦でどんなことを思いながら生活をしてきたのでしょうか(全5回中の3回)。

いよいよ親になる…!

── 特別養子縁組により赤ちゃんを迎えました。あっせん団体の方から電話で知らされたそうですね。

 

武内さん:「(名前)ちゃんが生まれましたよ」って、こちらで、あらかじめ決めていた子どもの名前で連絡を受けました。特別養子縁組に本登録してから半年間、待ち続けた瞬間だったので、本当に嬉しかったです。

 

── お子さんの名前は、どうやって決めたのでしょうか?

 

武内さん:私がお願いしたあっせん団体は、男女それぞれ希望の名前を先に提出しておくんですよ。名前は、赤ちゃんを産んだお母さんがつける場合もあるし、提出した名前になるかもしれない。ケースごとに異なるようです。

 

私たち夫婦の場合は、あらかじめ用意しておいた名前になりました。

 

待望のわが子が家にやってきましたと、当時を語る武内さん

── 長男と長女、それぞれの赤ちゃんの産みのお母さんとは対面されましたか?

 

武内さん:長男のお母さんとは、一度お会いしてお話することができました。下の子は、直接はお会いできなかったです。産みの親に会う、会わないも、そのときどきによって違うようです。

 

── 赤ちゃんと初めて対面して、どんな感情が沸きましたか? 

 

武内さん:赤ちゃんを見た瞬間から、もっと言えば「赤ちゃんが生まれました」と、特別養子縁組のあっせん団体のスタッフの方から電話をいただいた瞬間から、愛情があふれ出てきました。0から100になるくらいの速さで「親になるんだ…!」って思えて。自分でも、親としての自覚が芽生えるスピードが速すぎてびっくりしたほどです。

 

わが家にやってきたこの子を、全力で守らなきゃいけないって強く思ったことは覚えています。

1歳までは子育ては割と順調だった

武内さんの長男が長女のミルクをお手伝い中。家族の微笑ましい時間

── 子育てがスタートされていかがでしたか?

 

武内さん:自分自身が出産をしていないから、産前・産後で体がツラいといったことはなかったです。その分、体力はあったと思います。

 

長男を迎え入れた当初は、夫がパン屋を開業したばかりでお店が忙しくて、大変な時期ではありました。ただ、夫が外で働いてくれているおかげで私はずっと家にいて、安心して長男のお世話に専念することができました。

 

また、夫もお店が忙しいながらも、積極的に息子のおむつを替えてくれたり、ミルクをあげたりと、お世話してくれましたね。

 

長男は、新生児の頃からずっとよく寝てくれて、とてもラクだったように思います。夜泣きに悩まされたこともほとんどなく、睡眠不足にならなかったですね。 

 

── それはかなり助かりますね!

 

武内さん:子どもが体調を崩すようなこともほとんどなく。生後6か月で初めてかかった病気がインフルエンザだったんですけど、私と同時にかかって。高熱は出ましたけど、2人とも安静にしていたらすぐに回復しました。

 

1歳過ぎるまで、特に大きな悩みもなくて、わりと順調にいっていたと思います。

 

── そうはいっても仕事と子育ての両立は大変だったのでは?

 

武内さん:仕事は最小限にして、子どもを一緒につれていけるところには連れて行ってました。現場でマネージャーさんが見てくれることもありましたが、1歳過ぎて動き出してからは大変で。でも、赤ちゃんを迎えたら仕事よりも育児を優先させようと決めていたので、仕事の量はかなり減らしました。

子どもとの接し方がわからなかった夫も父になり

武内さんと広場で遊ぶ長男。何かを発見した様子

── 家事、育児の分担は?

 

武内さん:全般的には、私がやっていることが多いです。ただ、どちらか手が空いたほうがやる感じで、とくに分担も決めてないですね。

 

夫は外で一生懸命働いて、お休みの日は全力で子どもと遊ぶ。私が仕事のときは夫が家事や子どもたちをみてくれています。

 

── 旦那さんは、もともと子ども好きだったんですか?

 

武内さん:子どもは好きなんですけど、どういうふうに接したらいいか、よくわかってなかったと思います。

 

特別養子縁組のプログラムで「保育園に行く」という研修があったんです。そこで夫が子どもと関わる様子を見ていて、ちょっと緊張というか、とまどいながら接しているなということがわかったんです。

 

今は、夫は長男とも公園でサッカーをやるなどして楽しく遊べるようになってきました。

 

ちょっと前までは、いつも「これでいいのかな?」「長男は自分と一緒にいて楽しめているのかな?」という感じでした。

 

── 子育てで大変だったことは?

 

武内さん:子どもがちょっと熱を出したら心配する。子どもが泣き止まないとき「なんで泣いてるの?」「こういうときどうしたらいいの?」っていうことはありましたけど。特別養子縁組だったから大変、ということはまったくなかったです。

 

本当に、それはもう血の繋がりなんかいっさい関係なく。子育てをする大変な道のりというのは、どこの家庭も同じだなと。

 

私達の手の中に入った瞬間から、子育ての悩みも大変さも喜びも、すべてが本当に一緒だったと思います。うんちして嬉しいとか。全部、ほかのご家庭と何にも変わらないです。

  

PROFILE 武内由紀子さん

タレント、女優。「大阪パフォーマンスドール」としてデビュー。2013年にパン職人の夫と結婚。特別養子縁組を経て、現在男の子と女の子2人のママ。

 

取材・文/間野由利子  撮影/坂脇卓也