大学1年生のときに「Jupiter」で歌手デビューを飾った平原綾香さん。学業と仕事の両立で多忙だった学生時代と「難しい挑戦ほどするようにしている」という仕事への姿勢についてお話を伺いました(全3回中の2回)。

「真面目に取り組んできてよかった」と思えた瞬間

── デビュー当時は、大学生でした。

 

平原さん:
高校3年生でデビューが決まって、大学1年生のときに「Jupiter」でデビューしました。今振り返ってみても忙しい日々でした。大学ではサックスを専攻していたのですが、サックスの練習もしなくちゃならないし、授業もある。単位も取らなきゃならないし、レコーディングやテレビの収録もあって。

 

ショートカットが爽やかで初々しい!デビュー当時、ステージに立つ平原さん

睡眠時間がたりなかったので、移動中に睡眠をとっていました。最初の頃は、大学まで電車を乗り継いで行っていたのですが、だんだん顔が割れてくるようになると、帽子を深く被っていても口元でわかるみたいで。

 

あとをつけてくる人がいたり、ちょっと怖い目にあったりもしたので、それ以来タクシーか自家用車で移動するようになったんです。

 

学校から初めてタクシーを呼んだとき、女性ドライバーの方が迎えにきてくれて、それ以降ずっとその方にお願いするようになりました。

 

「着くまで寝てて良いですからね」と労ってくださり、車内では母が作ってくれたお弁当を食べて、食べ終わったら寝て。ドライバーさんは「疲れているでしょ」と言ってシュークリームなどの差し入れをしてくださることもありました。とても親切な方で、いつも気をつかってくださいました。

 

それでも睡眠時間がたりなかったので、横になって寝ながらメイクしてもらっていました。実は今もそれが続いているんですけど(笑)。

 

── 本当に眠れるのですか!?

 

平原さん:
爆睡なんです。デビュー当時に担当してくださっていたメイクさんが教えてくれたのですが、これはいいアイデアだなと。コンサートツアーにはマッサージベッドを必ず持ち歩いて、今も寝ながらしています。

 

上体が起きていると、照明が暗い場合には顔に影が出るのですが、寝ていると光が均等に当たるからメイクもしやすいみたいなんです。こうやってみなさんの力を借りて、睡眠時間を確保しています。

 

── いかに忙しいかが伝わってきます。

 

平原さん:
テレビの収録は夕方や夜に入ることが多かったので、なんとか単位を取らなきゃと思って、授業はできるだけ朝から昼にかけて取っていました。

 

大学時代の友達もたくさん支えてくれました。「この日は補講があるから忘れないできてね」とか、「ここは休講だから来ないでね」とみんなが教えてくれました。学校にもマネージャーがいてくれたような気持ちで心強かったです。

 

1限目のクラシックを聞く授業で、偶然聞いたのがグスターヴ・ホルストの「木星」でした。これを聞いてぜひデビュー曲にしたいと思ったので、この授業を取っていなかったら今はなかったと思います。

 

デビュー当時、リハーサル中の平原さん。思慮深い視線にドキッとします

── 朝起きるのがつらいからと、1限目の授業を避ける学生もいますが、見事に功を奏しましたね。

 

平原さん:
なんでも真面目に取り組んでしまう性格なので、たまに自分が嫌になってしまうこともあります。でももし1限目の授業に出ていなければ「Jupiter」は生まれていないので、なんでも真面目に取り組んできてよかったなと思いました。

 

真面目に生きていると、必ず素敵なことが起こりますし、遠回りしなくて良いように思うんです。これからも真面目に生きていこうと思えた瞬間でした。

 

私の周りの友人も同じようなタイプで、みんなでいちばん前の席に座って先生の話を聞いていたんです。すごく合いました。