家族である前に一個人。尊敬し合える家族が理想
── 坂本さんの「かぞくのうた」の歌詞で、「わかり合えずにいたとしても」というフレーズが出てきますよね。独特の距離感もありつつ、個としてそれぞれが存在しつつ、ベタベタしないけれどもつながり合っている。そういう坂本さんの家族観があるように感じました。
坂本さん:
そうですね。そういった距離を感じずに、本当に仲良く、チームとして成り立っている家族を見ると、素敵だな、羨ましいなと思います。
でも、私にとっては、ちょっと現実的じゃない、というか。私は個々で立っている家族しか知らないから、そのやり方できっと私もやるんだなと思うんです。自分が楽しいこととか、自分が信じることをそれぞれやる。
家族である前に、一個人であり、お互い尊敬し合ったうえで、「そうできるのはあなたのおかげだ」という感謝を伝え合うというのが、今の自分のできる理想の形かなと思っています。
── 現在、娘さんは小学1年生だそうですが、坂本さんのそういう思いを、どのように伝えていますか?
坂本さん:
言葉でも伝えていますし、できる限りライブに連れて行って、現場を見てもらっています。そこで、私がなにを信じて、何のためにこういうことをしてるのか。それがどれだけ楽しいか。いろんな人が関わって、そのひとときを作るということが、どれだけ尊いかを感じてもらいたい。
それを、とうとうと言葉で説明するときもあるんですけど、見てもらうのがいちばん早いな、と思っています。
── お子さんは理解をしてくれるようになりましたか?
坂本さん:
そうですね、いろんなことを吸収して、肌で感じていると思います。
PROFILE 坂本美雨さん
ミュージシャン。1980年生まれ。1997年父・坂本龍一プロデュースの元「Sister M」名義で歌手デビュー。音楽活動にとどまらず、ナレーション、執筆、演劇など活動の幅を広げる。2015年に長女を出産。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/坂本美雨さん