「共感しかない」展開で登場する超シンプルメニューも
手頃な食材で、味や栄養バランスを考えるのは同じでも、「副菜の鬼」のシロさんとは対照的なレシピを披露してくれるのが、事務員の山田さんです。
「ひたすらズボラと栄養バランスの両立だけを追求…」「どれだけワンディッシュに材料ぶち込めるかみたいな料理ばっかりで」と恥じ入りますが、忙しいなかで食事を作る人にはとても参考になります。
そんな山田さんが繰り出した、究極ともいえるメニューが「夏豚汁(豚肉とトマトとニラのみそ汁)・卵かけごはん」。
いつも、ちゃんとした献立を作ろうとする夫。でもその日は、子どもの相手に疲れ果て、夕飯の準備ができていません。うなだれる姿に「すべてがくたびれて、めんどうくさくなってしまったのね…」と状況を把握した山田さんが、あっという間に仕上げた夕飯です。
楽しそうに食べた子どもたちに、安心の涙を流しながら「こ…こんなんでいいの…!?いいのか…!!」と言う夫に、「ええ…ちょいちょいこんなんでいいのよ…」と微笑みます。SNSでは、その言葉に共感する声が続出しました。
シロさんにも「こういう時は山田さん方式で乗り切ろう!」という日があります。「ちょいちょいこんなんでいい」は、毎日の料理に追われる人を励ます呪文みたいです。
ストーリーと絡む料理が『何食べ』の楽しいところ。メニュー名だけで「ケンジが仲直りのために、シロさんにリクエストしたハンバーグ」「ジルベールが文句を言いながら、めっちゃ食べてた(笑)」となるファンも多いようです。
どのレシピも物語のなかで、一緒に食べる人を思い、美味しく食べてほしいと作られる料理。その姿は自分や、ごはんを作ってくれる身近な人に重なります。手軽さだけでなく、その思いが「作りたい!」気持ちにさせてくれるのかもしれません。
取材・文/鍬田美穂 画像提供/講談社『モーニング』 (c)Fumi Yoshinaga