人気漫画家よしながふみさんによる『きのう何食べた?』(以下『何食べ』)。2007年より『モーニング』(講談社)で連載されて以来、多くのファンに支持されています。登場人物やストーリーに加え、物語の大きな要素のひとつがレシピの数々。普段の食卓にぴったりなメニューが多く、『公式ガイド&レシピ きのう何食べた?~シロさんの簡単レシピ~』も多数の読者を獲得しました。

 

 『きょう何作る? 食材別 登場全メニュー逆引きBOOK』掲載のイラスト集より「モーニング2019年23号表紙」のケンジとシロさん
 『きょう何作る? 食材別 登場全メニュー逆引きBOOK』掲載のイラスト集より「モーニング2019年23号表紙」のケンジとシロさん

シロさんレシピにハマる人続出の理由

『何食べ』の主人公は、同棲している男性カップル。料理が得意な弁護士、シロさんこと筧史朗と、明るくロマンティストな美容師のケンジこと矢吹賢二です。2019年4月にはシロさんを西島秀俊さん、ケンジを内野聖陽さんが演じて実写化され、2021年11月公開の劇場版もヒット。原作を知らなかった層にも、人気が拡大しました。

 

この作品の特徴は、登場人物たちが、美味しそうな食事を作るシーンがたくさん出てくるところ。たとえば、シロさんと特売品などの食材を分け合う、レパートリー豊富な主婦友達の佳代子さん。2人と仲の良いゲイカップルの小日向さん&ジルベール。シロさんが働く弁護士事務所の事務員、洋食屋の両親と夫を持つ志乃さんと、野菜が苦手で夫のほうが料理好きな山田さんなどです。

 

でもメインは、シロさんの料理。スーパーのチラシを日々チェックしている倹約家のシロさんは、脳内に底値リストがあり、価格を吟味して食材を選び、栄養バランスを考えて献立を決めています。家計をやりくりする主婦と、同じ目線を持つシロさんのレシピ。参考にしやすいうえに、顆粒出汁やめんつゆを駆使する手軽さも、再現したくなるポイントのひとつです。

 

調理シーンでは「あともう少し何か…冷凍しといたしめじも1パック分あるから、そいつも入れちまうか」「トマト缶をゆすぐついでに、トマト缶1缶分の水をフライパンに入れて…」などのモノローグ。そんな日常の料理“あるある”にも、親近感を覚えます。