「大学時代は、友達がひとりもいませんでした」と語るのは、ハリセンボン・箕輪はるかさん。憧れのキャンパスに1浪して入学。楽しい学生生活を送るはずでしたが、なぜかフツフツとした思いを抱えることに。大学卒業後は、NSC(吉本総合芸能学院)に入学。お笑いの道に進んだことで、人生はどう変化していったのでしょうか(全4回中の1回)。

同世代の人と共有できる時間を放棄してしまった

── 大学時代は、友達が居なかったと伺っていますが、大学に入る前はいかがでしたか?

 

箕輪さん:小学生の頃は、クラスでも明るい方でした。自分から積極的にみんなに声を掛けてグランドを走ったり、大勢でワイワイ遊ぶことも多かったですね。

 

中学・高校生になると、思春期のせいか、学校でも目立たないように過ごしたり、また進学して友達ができたりと、まぁ普通にやっていたと思います。暗かったのは大学時代ですね。

 

── 大学は、早稲田大学に入られたんですね。受験勉強もかなり頑張られたとか。

 

箕輪さん:テレビでよく見ていた、大きな大学に行けるのは嬉しかったです。

 

あと、うちは母子家庭だったので、自分で学費を払わないといけなかったんです。早稲田大学なら奨学金も充実してそうだと思って、1浪して早稲田の2部(夜間)を選びました。

 

── 大学生活は、いかがでしたか?

 

箕輪さん:周りの人たちは、とてもキラキラしていて、部活やサークルが楽しそうだなって思って見てたんですけど。私は、その輪には入れませんでした。みんなと仲良くしたかったけど、なんとなくタイミングを逃してしまった。いつか友達ができるだろうって思いながら、自分から動くこともしなかったし、3年生になる頃には諦めていたような気がします。結局、大学時代はひとりも友達ができませんでした。

 

── 授業とか、隣に座った人とお話することはあったのでしょうか?

 

箕輪さん:わからないことがあったときに、まわりの子に「ここはどうやったらいいの?」と聞く程度のことはあったんですけど。でも、会話をするのは授業のときだけ。

 

ちょっと話をして、授業が終わったらバイバイする感じだったので、友達にまでならなくて。本当はもっと喋りたかったんだけど、自分から話しかける勇気もなかったんです。

 

卒業してから、「こういう講義は単位が取りやすい」とか、後から知ることもあったんですが、学生時代に知りたかったなと。

 

大学時代はひっそりと過ごしました

── では、サークルとか部活動、授業以外の活動はいかがでしたか?

 

箕輪さん:大学に入学したての頃って、サークルの勧誘がありますよね。先輩たちは積極的に声をかけてくれるんですけど、逆にあれが怖くて(笑)。「騙されるんじゃないか」って勝手に疑心暗鬼になっちゃって、どこにも入れず。

 

学校が始まるのが夕方だったので、昼間はバイトが終わったら学校に行く。学校で授業が終わったら家に帰って寝る。そんな生活の繰り返しだったので、誰かと飲みに行ったとか、どんな人が学校にいたかもあまり記憶に残ってないんです。

 

今思えば、たくさんの同世代の人たちと時間を共有できるチャンスがあったのに、それを放棄してしまったような。本当にもったいなかったなと思います。

早稲田から芸人の世界へ飛び込んだ理由

箕輪さん1歳の頃の保育園での貴重な写真。ぱっちりした目元が可愛らしい

── 大学卒業後、NSC吉本に進学されました。お笑いの世界を目指されたのはなぜでしょうか?

 

箕輪さん:大学ではずっとひとりで過ごしていたので、いつもフツフツとしていて。このままでいいのかな。もっと明るくて、生き生きとした自分になりたいなって思っていたんです。

 

それで、大学2年生のとき。就職活動とか将来を考えたときに、自分は何が好きなのか、何がしたいのかって自問自答したんです。すると、子どもの頃からお笑いが好きだったなって気づいて。小学校高学年の頃くらいから、ダウンタウンさんの番組とかよく見てたんですよ。

 

もし、お笑いを仕事にしたら、しんどいことがあっても頑張れそうな気がする。

 

それに、お笑い養成スクールに集まるような子は、明るくて楽しい子が集まってそうだから、その環境に飛び込んだら、自分も変われるんじゃないかって思ったんです。どこかリハビリみたいな感覚で決めたような部分もあるかもしれません。

  

── 芸人は立派な職業ですが、不安定になる可能性もあるかと思います。早稲田大学を卒業して芸人になることについて、周りの反応は何かありましたか?

 

箕輪さん:まわりからは、直接はなにも言われなかったですね。母も、やりたいことができて良かったねと言ってくれたので、ありがたかったですし。周りよりも、自分自身が「早稲田に行ったのに、本当にこれでいいのかな?」と迷ったほうが強いかもしれません。

 

それに、「自分が芸人なんて、絶対できないだろうな」って思ってたんです。実際、大学2年生のときに芸人になりたいと思ってからしばらく悩んで、卒業間近になってやっとNSCに出願しましたから。 

 

── 大学時代と今を比べていかがですか?

 

箕輪さん:人に興味を持つようになりました。昔に比べて、人とご飯に行くのも楽しいし、人の話を聞いている時間も好きですね。昔の友人に会うと「かなり明るくなったね」といわれます。

 

あと、芸人になって良かったなって思います。相方の(近藤)春菜にも出会えたし、お仕事も楽しい。今の状態を考えたら、あのとき、未知の世界に飛び込んだのは間違いじゃなかったなって思いますね。大学時代の鬱屈した思いも、今になれば必要な4年間だったような気がします。

 

PROFILE 箕輪はるかさん

1980年1月1日生まれ。お笑いコンビ「ハリセンボン」として、ボケを担当。相方の近藤春菜さんとともに活躍中。フジテレビ『IPPON女子グランプリ』で優勝するなど、個人でも活躍の場を広めている。

 

取材・文/間野由利子